Heartbeat 【BL】

高牧 まき

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冷たい汗が流れる

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 ゆっくりと意識を取り戻した真咲が最初に目にしたのは、白い天井だった。

 まさか、病院??

 あわてて体を起こすと、「あ、目が覚めた?」と、白衣の男性が姿を現した。

 誰だろうと思う暇なく「養護教諭の泊崎だよ」と自己紹介してくれた。

 男性の養護教諭が珍しく、真咲は目を大きく見開いて泊崎を見た。

 髪が長くて、整った容姿をしている泊崎は、本当に先生なのか疑いたくなる外見の持ち主だった。

「あの、僕?」

「入学式で倒れっちゃったの覚えてる?

 まぁさ、かっこいいとは思うけど、まさか生徒会長に見つめられて倒れちゃうなんて、君よっぽど免疫がないんだね?」

 うぅ!!

 と、泊崎の言葉に、真咲は黙り込んだ。

 まさかそんな風に思われていたなんて。

 さっきの歓声を考えたら、そういうこともあるんだろうか?

 でも、僕は違う……。

 真咲はぎゅっと制服の胸のあたりを握りしめた。

 ドキドキはしたけど、僕の感じたドキドキは、そういうことじゃなかった。

 確かにすごくきれいな人だと思う。

 男女とか関係なく人気があるのも分かる。

 だけど僕は、生徒会長に見つめられた瞬間、僕は恐怖に包まれた。

 怖くて、怖くて、たまらなかった。

 初めて会う人なのに、そんな風に思うのはおかしいんだろうけど……。

「あー。

 ごめんごめん。

 揶揄いすぎた。

 君の体のことは知ってるから……。

 冗談だから、そんな顔しないで?」

 泊崎はぽんぽんと真咲の頭を軽く手を置いて、真咲の顔を覗き込んだ。

「同室の子が迎えに来てるから、今日はもう帰っていいよ?」

「え? 津田君が?」

 真咲が衝立の向こうに姿を現すと、確かに津田が迎えに来ている。

 しかも教室においてあったカバンまで持ってきてくれている。

 ……クラス違うのに……津田君、すっごく、優しいな。

 真咲はにっこりと微笑んだ。






 入学式で真咲が派手に倒れた時は驚いた。

 体が小さくて弱そうだと思っていたが、これほどまでとは思わなかった。

 しかも鈴ヶ宮と見つめあった後に……なんて注釈がつけば、真咲は瞬く間に全校生徒の知る人物となった。

 ひょっとして、知り合いだったのか?

 忍は鈴ヶ宮との関係が知りたくて、入学式とその後の教室でのホームルームが終わるとともに、真咲の様子をうかがいに隣のクラスに足を伸ばした。

 すると、まだ医務室にいるというので、荷物を引き取ってこうして出向いたのである。 

「君の体のことは知ってるから……」

 迎えに行くと、養護教諭だという泊崎は、まだベッドで眠っているという真咲の様子を見に行った。

 ちょうど起きたらしい真咲と泊崎の会話は、簡単な衝立だけではもちろん防ぎようがなく、すべてが聞こえてしまった。

 君の体のこと?

 いったいどういう意味だ?

 貧血を起こしたのだと思っていたが、別の理由があるのだろうか?

「あのさ、鈴ヶ宮会長と、何かあったの?」

 わずかな寮までの道のり、忍は状況確認に努めていた。

「え?

 まさか! 

 そんなのあるわけないよ!

 今日初めて見たんだけど……きれいな人でびっくりしたよ?」

 とても真咲は嘘をついているようには見えない……。

 忍は真咲の本心を探るように、真咲の表情に集中した。

「ふーん……?」

 真咲はきょろきょろとあたりを見渡す。

「あのね?

 僕、ほんというと、怖かったんだ?」

「怖いって何が?」

「うん……カイチョーさん? のこと……。

 なんか、怖くない?」

 忍は真咲の話した意味を考え、自然と無言となった。

 そして口を開くころには寮の近くになっていた。

「……真咲がそういうなら、そうかもな?」

 ようやく口にできたのは、そんな言葉で。

 しかし強面でない鈴ヶ宮の何が怖いのか、忍にはよく分からなかった。









 真咲は真咲で、思い切って告白したことを後悔した。

 やっぱりわからないのかな?

 目が合ったとき、ぞっとして感じたんだ。

 わかんないけど……あの人に、殺されるって心臓がきゅっとしちゃったんだよね。

 しかしなんの根拠もなくさすがにそんなことまで真咲は打ち明けることができなかった。

 そう思った理由も何もない。

 強いて言えば直感しかないから。

「そういえば、体弱いんだな?」

 寮の部屋に入るなり忍に問われ、真咲は仕方なく口を開く。

 できたら話したくなかったんだけど、しかし生徒会長の話題よりずっと話すのは楽なことだ。

 もしかしたらまた迷惑かけるかもしれないし、黙っておくの、やっぱりダメだよね?

「あ、うん。

 僕……もともと心臓が悪くて……」

「……大丈夫なのか?」

 ああ、同情してる顔してる……と、真咲は切なくなった。

「うん。

 もう大丈夫なんだ。

 半年前……去年の10月に心臓移植受けられて……今は新しい心臓だから」

「そっか……よかったな?」

「そうだね?

 でもまあ、僕に心臓くれた人、同い年の男の子だったから、ちょっと複雑なんだけどね?」

「……同い年?

 それは……なぁ、それって、10月何日か聞いていいか?」

「う……ん。

 いいけど?

 2日だよ。

 昨年の10月2日に、僕は手術を受けたんだ」

 忍は真咲の告白に、息をのんで口を手で塞いだ。

 まさかと思った。

 そんな偶然あるわけないと。

 しかし話を聞いて、忍は確信した。

 口を塞がなければ思わず言ってしまっていただろう。

 それは従兄弟の……香月の心臓だと。

 
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