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暴かれた真相
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鈴ヶ宮に手を引かれながら、忍は真咲を探した。
手をつなく必要なんてない。
そう頭ではわかっているのに、どうにもその手を振りほどくことができなかった。
駆け足で校舎を巡りながら、一つ、また一つと空き教室を確認していく。
そして、鈴ヶ宮の所持している教室のマスターキーのおかげで、施錠されていた科学準備室のドアを開錠することができた。
……鈴ヶ宮がいなければ、助けられなかった。
ドアを開けた瞬間、鈴ヶ宮と忍の視界に飛び込んできたのは、真咲の首を絞める泊崎の姿だった。
「……っに、してんだよっ。
その手を離せっ!!」
二人ほとんど同時に部屋の中へと飛び込んだが、体格の差か、泊崎に殴りかかったのは鈴ヶ宮だった。
だからごほごほと苦しい咳をする真咲に駆け寄ったのは、忍だ。
「……大丈夫か?」
泊崎をボコボコに殴りつける鈴ヶ宮を横目に、真咲の崩れそうな体を忍はしっかりと抱きとめた。
「……しー兄?」
「! 香月……?」
「しー兄、ごめんね?」
真咲はうつろな表情で忍を見上げていた。
だけどその口調は、生前の香月そのままで。
泣きそうになるのをこらえながら、忍は真咲に……いや香月へと語りかけた。
「……香月……謝るな!
そんな必要なんてない、むしろ。
お前を一人にするんじゃなかった。
俺がお前を置いて行ったから……」
「だって、僕が……僕がしー兄のこと、好きになって、困らせた。
だから、一人でアメリカに行っちゃったんでしょ?」
「……俺の存在が、お前を歪めたのかと、怖くなった……。
お前が悪いんじゃない……。
俺が弱かっただけだ。
……お前のこと……すごく、大事に思っていたのに……」
出会ったころは幼児だった香月は、小さい頃から「しー兄のお嫁さんになりたい」と言っていた。
最初は「よしよし、可愛い奴め」と頭を撫でていた忍だが、それが大きくなるまで……中学受験を控えた小学6年まで続くとなると、さすがに焦りが出た。
高校から大学へと進学し、学生生活を送るうちに、童顔で小柄で母親似の女顔の自分が、ある種の同性に異常に好かれることには気付いていた。
もしやそんな俺が側にいたから香月の性癖を歪んだんじゃないのか?
十も年下の可愛い従兄弟は、愛くるしくて可愛らしい顔立ちで、嵯峨那の一族皆に可愛がられる特別な存在だ。
結局忍は、すべてを投げ出し、アメリカに逃げた。
忍の得意分野であるソフトウェアの開発事業を手掛けている嵯峨那のサテライト企業に、就職するという名目で。
そんな忍のもとに、香月の訃報が届けられた。
当初は自殺と聞かされ、自分の所為かと胸がかきむしられるような後悔と懺悔の日々を過ごした。
そんなとき、法月の伯父に頼まれた。
それは……半月のうちに5キロも体重を落としていた忍のためでもあったのだが。
「しー兄、今までありが……と、ね」
真咲の眦から、涙が一粒こぼれ、そのままだらんと体から力が抜ける。
「香月! ……香月ぃぃぃぃ!」
忍はパニックになって、真咲の体を抱きしめながら香月の名を呼んだ。
そんな忍の肩ごしに、いつの間にかすべて終えて近づいてきた鈴ヶ宮の手が伸びてきて、真咲の首元に触れその脈を確かめる。
そして。
「なあ………遠野を、病院に連れて行ってやろう」
そんな鈴ヶ宮の、穏やかで諭すような声が、すとんと忍の胸に響いた。
病院……。
生きてる。
生きてるんだ……。
その瞬間、香月の心臓の鼓動の音を、聞いた気がした。
「……分かった……」
泊崎は、自らの着用していたスーツのジャケットで、動けないように拘束されているようだ。
……顔がメコメコに腫れ上がっているが、自業自得というものだろう。
それから救急車の手配、警察の事情聴収、そんなもろもろを、鈴ヶ宮が一手に引き受けて済ませてくれた。
その間忍がしていたことと言えば、ただ眠り続ける真咲の側に付いていただけだ。
それも、真咲の両親が駆け付けたところで、バトンタッチ。
だが病室を出たところで力が抜けて。
廊下の椅子に座り込んだら一歩も動けなくなった。
「ここに居たか……」
そう言って、忍の横にどかりと座り込んだのは鈴ヶ宮だった。
「……どうしてっ」
「……お前が、そんな顔して一人でいるからだろ?」
思わず言葉を失った忍の肩を、鈴ヶ宮は抱き寄せた。
「……俺の前で……泣くのを我慢するな……」
そう言いながら、忍の顔を隠すようにその胸に閉じ込める。
温かい鈴ヶ宮の体温に包まれながら、子供をあやすように背中を撫でられると、我慢していた自覚もないのに忍の両眼からはぶわりと涙がせり上がってきた。
「……っく……ひっく」
嗚咽とともに忍は泣き続け、いつしか鈴ヶ宮の胸の中で眠っていた。
忍が事件のあらましを聞いたのは、鈴ヶ宮の寮の部屋で目覚めてからのことだった。
泊崎……中等部、高等部両方の養護教諭であった彼は、幼児性愛と弑逆趣味の持ち主だった。
未成年の頃は前科もあったが事件として発覚しなかった。
おそらくは被害者が小さい子供だったからだ。
そうして何ぬかわぬ顔で教員となり、赴任したこの学園で毬里楓に出会った。
楓は、少々歳が過ぎているということ以外は、良くも悪くも泊崎の好みに沿った容姿をしていた。
小柄で、14歳になるのにまだ第二次成長期を迎えておらず変声期も来ていない、美少年。
そんな楓に目を付けたのは、まだ入学したての頃だったという。
しかし中学1年、2年の間は、楓の側には鈴ヶ宮とその親衛隊のメンバーが近くにいた。
しかし3年になり一人になることが多かった楓に、ある日転機が訪れた。
成長が遅い自分の体に、不安を漏らすようになったのだ。
それは他のものと比べて少し遅い、という程度のモノだったが、本人は真剣に悩んでおり、それに泊崎は付け入るスキを見つけた。
泊崎は養護教諭という立場を利用し、用意周到に楓に近づき、そしてある日、彼を襲iいかかった。
むろん予定した行動であり、泊崎はその一部始終を録画していた。
そしてその録画データを材料に、楓に何度も体の関係を迫ったのだ。
そのことを誰にも言えずに耐えられなくなった楓は、とうとう自らの命を絶ったのだ。
楓の死に、泊崎はある意味失望した。
だが同時に、少しづつ大人の体になりつつある楓の体に物足りなさを感じ始めてもいたころで。
泊崎はほとぼりが冷めるのを待ち、次なるターゲットへとその食指を伸ばし始めていた。
準備を整え、次なるターゲットである一年の生徒を呼び出したのは、中高共通で使われている科学準備室だった。
中等部の生徒会役員、嵯峨那香月の名前で呼び出された生徒は、ゆっくりと泊崎の手の中に落ちようとしていた、しかし。
その生徒は一人ではなかった。
慎重を期して準備室の隣でカメラ越しに様子を窺っていたために難を逃れた。
何事もないようにその場を去り、そして彼についてきた生徒で名前を借りたその本人である……嵯峨那香月に注視するようになったのは、それがきっかけだった。
彼は、楓の事件の真相を探っていた。
それから間もなく、泊崎は鈴ヶ宮の名で香月を屋上へと呼び出した。
楓の事件の真相が分かったから話がしたい……そんな誘いの言葉に、香月は疑いを持たなかったようだ。
そして。
背後から突き落とされた香月は、何が起きたかもわからなかっただろう。
もしかしたら、鈴ヶ宮に落とされたと思ったのかもしれない……。
もっとも、泊崎が逮捕されたあの日、真咲が狙われたは忍の所為とも言えなくもない。
嵯峨那の関係者と噂を立てられたことで、泊崎は香月を殺したのが自分だと気付かれないうちに口封じをしようとしたらしい。
退院した真咲は、今は学園に戻り、元気に過ごしている、というのが調査部の報告だったが、真咲にとっては、とんだとばっちりだったな……。
そんなことを思いながら、忍は手慣れた作業をこなしていく。
6か月も職場を離れていると戻るのが不安だったが、戻ってみるといつもの毎日だ。
バリバリと以前にも増して働く忍は、以前と少し変わっていた。
一人部屋に籠って作業することが減り、笑うことが増え、表情が柔らかになった。
そうしていると、自然に忍の周りに人が集まるようになった。
経営者の親族で近寄りがたい……そんな色眼鏡で見ていた者たちも、新しい忍を受け入れ始めていた。
だがそんな充実している毎日だというのに、忍は不意に、泣きたくなることがある。
それはいつも優しい声と温もりを思い出す瞬間で……。
………いやいやいやいや。
終わったことだ……。
そんな風に、忍は記憶を振り払う。
あの日……泣いた忍をあやすように自室に連れ帰った鈴ヶ宮。
忍が目覚めたのに気づくと、「おはよう」とキスを落とした。
それはほんの少し触れ合うだけのキスだったのに、いつしか深いものになり、そして愛撫に代わっていた。
イヤとか、気持ち悪い、なんて、微塵も感じなかった。
愛おしくて、嬉しかった。
触れられるのが心地よくて身を任せ……鈴ヶ宮と一つになれたことに喜びしか感じなかった。
生まれて初めての行為で、体がつらくなかった言えば嘘になる。
授業もそっちのけで睦み合い、クスクスと「生徒会長が、さぼっていいのか?」と聞くと、「たまにはいいさ」と忍の肌にキスを落とす。
……そんな、幸せな一日だった。
翌日、何も言わず去った俺のこと怒ってるだろうか……。
でも仕方ない。
あの数か月の出来事は、夢のようなものだ。
本当の、忍の居場所ではないのだから。
手をつなく必要なんてない。
そう頭ではわかっているのに、どうにもその手を振りほどくことができなかった。
駆け足で校舎を巡りながら、一つ、また一つと空き教室を確認していく。
そして、鈴ヶ宮の所持している教室のマスターキーのおかげで、施錠されていた科学準備室のドアを開錠することができた。
……鈴ヶ宮がいなければ、助けられなかった。
ドアを開けた瞬間、鈴ヶ宮と忍の視界に飛び込んできたのは、真咲の首を絞める泊崎の姿だった。
「……っに、してんだよっ。
その手を離せっ!!」
二人ほとんど同時に部屋の中へと飛び込んだが、体格の差か、泊崎に殴りかかったのは鈴ヶ宮だった。
だからごほごほと苦しい咳をする真咲に駆け寄ったのは、忍だ。
「……大丈夫か?」
泊崎をボコボコに殴りつける鈴ヶ宮を横目に、真咲の崩れそうな体を忍はしっかりと抱きとめた。
「……しー兄?」
「! 香月……?」
「しー兄、ごめんね?」
真咲はうつろな表情で忍を見上げていた。
だけどその口調は、生前の香月そのままで。
泣きそうになるのをこらえながら、忍は真咲に……いや香月へと語りかけた。
「……香月……謝るな!
そんな必要なんてない、むしろ。
お前を一人にするんじゃなかった。
俺がお前を置いて行ったから……」
「だって、僕が……僕がしー兄のこと、好きになって、困らせた。
だから、一人でアメリカに行っちゃったんでしょ?」
「……俺の存在が、お前を歪めたのかと、怖くなった……。
お前が悪いんじゃない……。
俺が弱かっただけだ。
……お前のこと……すごく、大事に思っていたのに……」
出会ったころは幼児だった香月は、小さい頃から「しー兄のお嫁さんになりたい」と言っていた。
最初は「よしよし、可愛い奴め」と頭を撫でていた忍だが、それが大きくなるまで……中学受験を控えた小学6年まで続くとなると、さすがに焦りが出た。
高校から大学へと進学し、学生生活を送るうちに、童顔で小柄で母親似の女顔の自分が、ある種の同性に異常に好かれることには気付いていた。
もしやそんな俺が側にいたから香月の性癖を歪んだんじゃないのか?
十も年下の可愛い従兄弟は、愛くるしくて可愛らしい顔立ちで、嵯峨那の一族皆に可愛がられる特別な存在だ。
結局忍は、すべてを投げ出し、アメリカに逃げた。
忍の得意分野であるソフトウェアの開発事業を手掛けている嵯峨那のサテライト企業に、就職するという名目で。
そんな忍のもとに、香月の訃報が届けられた。
当初は自殺と聞かされ、自分の所為かと胸がかきむしられるような後悔と懺悔の日々を過ごした。
そんなとき、法月の伯父に頼まれた。
それは……半月のうちに5キロも体重を落としていた忍のためでもあったのだが。
「しー兄、今までありが……と、ね」
真咲の眦から、涙が一粒こぼれ、そのままだらんと体から力が抜ける。
「香月! ……香月ぃぃぃぃ!」
忍はパニックになって、真咲の体を抱きしめながら香月の名を呼んだ。
そんな忍の肩ごしに、いつの間にかすべて終えて近づいてきた鈴ヶ宮の手が伸びてきて、真咲の首元に触れその脈を確かめる。
そして。
「なあ………遠野を、病院に連れて行ってやろう」
そんな鈴ヶ宮の、穏やかで諭すような声が、すとんと忍の胸に響いた。
病院……。
生きてる。
生きてるんだ……。
その瞬間、香月の心臓の鼓動の音を、聞いた気がした。
「……分かった……」
泊崎は、自らの着用していたスーツのジャケットで、動けないように拘束されているようだ。
……顔がメコメコに腫れ上がっているが、自業自得というものだろう。
それから救急車の手配、警察の事情聴収、そんなもろもろを、鈴ヶ宮が一手に引き受けて済ませてくれた。
その間忍がしていたことと言えば、ただ眠り続ける真咲の側に付いていただけだ。
それも、真咲の両親が駆け付けたところで、バトンタッチ。
だが病室を出たところで力が抜けて。
廊下の椅子に座り込んだら一歩も動けなくなった。
「ここに居たか……」
そう言って、忍の横にどかりと座り込んだのは鈴ヶ宮だった。
「……どうしてっ」
「……お前が、そんな顔して一人でいるからだろ?」
思わず言葉を失った忍の肩を、鈴ヶ宮は抱き寄せた。
「……俺の前で……泣くのを我慢するな……」
そう言いながら、忍の顔を隠すようにその胸に閉じ込める。
温かい鈴ヶ宮の体温に包まれながら、子供をあやすように背中を撫でられると、我慢していた自覚もないのに忍の両眼からはぶわりと涙がせり上がってきた。
「……っく……ひっく」
嗚咽とともに忍は泣き続け、いつしか鈴ヶ宮の胸の中で眠っていた。
忍が事件のあらましを聞いたのは、鈴ヶ宮の寮の部屋で目覚めてからのことだった。
泊崎……中等部、高等部両方の養護教諭であった彼は、幼児性愛と弑逆趣味の持ち主だった。
未成年の頃は前科もあったが事件として発覚しなかった。
おそらくは被害者が小さい子供だったからだ。
そうして何ぬかわぬ顔で教員となり、赴任したこの学園で毬里楓に出会った。
楓は、少々歳が過ぎているということ以外は、良くも悪くも泊崎の好みに沿った容姿をしていた。
小柄で、14歳になるのにまだ第二次成長期を迎えておらず変声期も来ていない、美少年。
そんな楓に目を付けたのは、まだ入学したての頃だったという。
しかし中学1年、2年の間は、楓の側には鈴ヶ宮とその親衛隊のメンバーが近くにいた。
しかし3年になり一人になることが多かった楓に、ある日転機が訪れた。
成長が遅い自分の体に、不安を漏らすようになったのだ。
それは他のものと比べて少し遅い、という程度のモノだったが、本人は真剣に悩んでおり、それに泊崎は付け入るスキを見つけた。
泊崎は養護教諭という立場を利用し、用意周到に楓に近づき、そしてある日、彼を襲iいかかった。
むろん予定した行動であり、泊崎はその一部始終を録画していた。
そしてその録画データを材料に、楓に何度も体の関係を迫ったのだ。
そのことを誰にも言えずに耐えられなくなった楓は、とうとう自らの命を絶ったのだ。
楓の死に、泊崎はある意味失望した。
だが同時に、少しづつ大人の体になりつつある楓の体に物足りなさを感じ始めてもいたころで。
泊崎はほとぼりが冷めるのを待ち、次なるターゲットへとその食指を伸ばし始めていた。
準備を整え、次なるターゲットである一年の生徒を呼び出したのは、中高共通で使われている科学準備室だった。
中等部の生徒会役員、嵯峨那香月の名前で呼び出された生徒は、ゆっくりと泊崎の手の中に落ちようとしていた、しかし。
その生徒は一人ではなかった。
慎重を期して準備室の隣でカメラ越しに様子を窺っていたために難を逃れた。
何事もないようにその場を去り、そして彼についてきた生徒で名前を借りたその本人である……嵯峨那香月に注視するようになったのは、それがきっかけだった。
彼は、楓の事件の真相を探っていた。
それから間もなく、泊崎は鈴ヶ宮の名で香月を屋上へと呼び出した。
楓の事件の真相が分かったから話がしたい……そんな誘いの言葉に、香月は疑いを持たなかったようだ。
そして。
背後から突き落とされた香月は、何が起きたかもわからなかっただろう。
もしかしたら、鈴ヶ宮に落とされたと思ったのかもしれない……。
もっとも、泊崎が逮捕されたあの日、真咲が狙われたは忍の所為とも言えなくもない。
嵯峨那の関係者と噂を立てられたことで、泊崎は香月を殺したのが自分だと気付かれないうちに口封じをしようとしたらしい。
退院した真咲は、今は学園に戻り、元気に過ごしている、というのが調査部の報告だったが、真咲にとっては、とんだとばっちりだったな……。
そんなことを思いながら、忍は手慣れた作業をこなしていく。
6か月も職場を離れていると戻るのが不安だったが、戻ってみるといつもの毎日だ。
バリバリと以前にも増して働く忍は、以前と少し変わっていた。
一人部屋に籠って作業することが減り、笑うことが増え、表情が柔らかになった。
そうしていると、自然に忍の周りに人が集まるようになった。
経営者の親族で近寄りがたい……そんな色眼鏡で見ていた者たちも、新しい忍を受け入れ始めていた。
だがそんな充実している毎日だというのに、忍は不意に、泣きたくなることがある。
それはいつも優しい声と温もりを思い出す瞬間で……。
………いやいやいやいや。
終わったことだ……。
そんな風に、忍は記憶を振り払う。
あの日……泣いた忍をあやすように自室に連れ帰った鈴ヶ宮。
忍が目覚めたのに気づくと、「おはよう」とキスを落とした。
それはほんの少し触れ合うだけのキスだったのに、いつしか深いものになり、そして愛撫に代わっていた。
イヤとか、気持ち悪い、なんて、微塵も感じなかった。
愛おしくて、嬉しかった。
触れられるのが心地よくて身を任せ……鈴ヶ宮と一つになれたことに喜びしか感じなかった。
生まれて初めての行為で、体がつらくなかった言えば嘘になる。
授業もそっちのけで睦み合い、クスクスと「生徒会長が、さぼっていいのか?」と聞くと、「たまにはいいさ」と忍の肌にキスを落とす。
……そんな、幸せな一日だった。
翌日、何も言わず去った俺のこと怒ってるだろうか……。
でも仕方ない。
あの数か月の出来事は、夢のようなものだ。
本当の、忍の居場所ではないのだから。
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