見捨てられ王女……兄の代わりに異国の地で花婿となる☆彡

高牧 まき

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黒宮へのお引越し

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 ドリモア女王との謁見の翌日。

 私たちは黒宮へとお引越しをした。

「……うわぁ……想像以上……」

 黒宮へとやってきた私たちは、呆然と立ち尽くした。

 部屋は埃まみれ。

 すきま風もひどい。

 調度品も使い古したボロボロのものばかりで、修理しないと使えない感じ。

「本当に、ひどいですね?」

 さすがのレンタールも、呆然としてる。

 昨日部屋に戻ってから黒宮っていうところに行くことになったって話したら、少しばかり情報収集してまいりますわっっ!! て、ドレスの裾をまくって出て行ったレンタールが持ち帰った情報は、びっくりする内容だった。

 黒宮は、女王に嫌われた貴族の男性たちや小国から人質としてやってきた者たちが集められ、押し込められている場所なんだそう。

 宮殿とは名ばかりのぼろ屋敷で、女人禁制。

 レンタールからその話を聞いたとき、私はショックで固まってしまった。

 え?

 女人禁制?

 ってことは……。

「ええ?!
 じゃあ、レンタール、一緒に行けないの??」

 レンタールがいなかったら兄さんに変装するの無理だし、すぐに女だってばれちゃう!!

 そそそそそ、そしたら、少女趣味?!

 かかかかか、体中舐められて!!

 あああああ、穴という穴を!!!!

 そそそそそ、それに、騙してたこととかバレタラ……。

 しょしょしょ、処刑かも……???

「やぁぁぁぁ!!!!
 やだぁぁぁぁ!!!
 レンタール!!!
 もぉ、ブーデリアに帰るぅぅぅぅぅ!!」

 なんて感じでパニックになっちゃた私だけど、レンタールは優しく、「ふふふ……アルメリア様。御心配には及びませんわ。レンタール、ちゃーんとついてまいりますわよ?」と微笑んだ。

 一体どうするつもりなのかな???

 って疑問に思ったけど、レンタールは教えてくれなかった。

「カルディア様。
 朝でございます」

 翌朝、声をかけられて目を開けると、見知らぬ青年の従僕が立っていた。

 全然知らない人が寝室にいるって、ものすごくコワイ。

「ひきゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
 誰ぇぇぇぇぇぇ!!!!!
 こわいぃぃぃいぃぃ!!!!
 ユユユユ、ユーノス!!!!
 ユーノス!!
 ユーノス!!
 ユーノス!!!」

 私はびっくりして、悲鳴を上げて寝台の隅っこに逃げた。

「殿下!?」

 扉が大きな音を立てて開かれると、剣を抜いたユーノスが寝室に駆け込んできた。

 素早い動きで青年と私の間に立って、かばってくれる。

「何者だ!!
 カルディア様と知っての狼藉か!!」

 青年に剣を突き付けたユーノスの鋭い声が響く。

 ふわわわわ!!

 ユーノス!!

 かっこいいいいいい!!!!

 だけど青年は、全くおびえる気配もなく、フフフフ……と不敵に笑い始めた。

 その声は私もよく知ってる声で……。

「え!? レンタール??
 レンタールなの??」

「レ……レンタール、殿!?
 本当ですか?」

 ユーノスも、びっくりしてる。

 だって、目の前の青年、ぜんぜんレンタールに似ていない。

 レンタールは長い金髪にくりくりお目目の美人さんだけど、この青年は茶色の短髪で、目が開いてるか分からないくらい細い。

 さっき私に声をかけた時は、低い声で、ほんとの男の人みたいだったし。

 でもレンタール、長年私を本物のカルディア兄さんに仕立て上げているくらい、変装上手だったな……。

 そういうわけで私、レンタール、ユーノスの3人は無事、黒宮の門をくぐった。

 黒宮の門のところには熊みたいに大きい男の人がいて、すっごく怖かった。

「ふわわ!!
 コワイ!!」

 思わずユーノスに抱き着くと、ユーノスは「大丈夫ですよ、カルディア様。私がお守りします」って言ってくれた。

 ユーノスは門番さんより少し小さいけど、なんたって護衛騎士だもん!! 強いよね。

 けど、レンタールは「あら……怖いですか?? ……とっ……ても愛らしくてかわいい方じゃありませんか?」って笑ってた。

 ………レンタールの目はちょっとおかしいと思う。

 それから案内されて通された部屋がものすごく粗末な部屋だった。

 なんていうか、懐かしい!!

 カルディア兄さんの影武者する前は、王宮の物置小屋、まさにこういうとこに住んでたからちょっぴりその時のことを思い出した。 

 だけどレンタールとユーノスは、かなり呆然としてた。

 そっか!

 レンタールもユーノスも、もともと貴族だから、こういうところに住んでたことないのかも。

 私もカルディア兄さんの影武者して初めてベットで眠ったから、かなりびっくりしたもん。

 同じように、レンタールもユーノスもびっくりしちゃってるみたい。

 じゃあ、私が頑張らなくちゃ!!

「それじゃ……お掃除、しようか!!
 ユーノス! バケツにお水をもらってきて。
 レンタールはほうきを借りてきて!!」

 私は手を叩きながら元気よく二人に話しかけた。

 少なくとも屋根はあって、小さいけれどベットもある。

 物置小屋よりずっとまし!!

 お掃除したら、ちゃんと住めるようになる!!

 私の命令に、二人は金縛りが解けたようにはっとして動き出した。

 私は二人の準備が整う間、私たちにあてがわれた部屋の中を見て回った。

 大きめの部屋と小さめの部屋、ベットがそれぞれひとつづつ、大きな部屋に足が一本外れたソファも一つある。

 ………誰か一人はソファで眠ることになりそう。

 本当は私が一番ちっちゃいから、ソファには私が眠るのが一番なんだろうけど……。

 ……まぁこれはあとから決めよう。

 それから狭いけど一応お風呂とトイレがあって、小さいけどキッチンもある。

 ……ふーん。

 古いだけで、結構設備が整っている感じ。

 それにバスタブにはヒビが入ってるけどかわいい飾りがついていて、決して悪いつくりじゃない。

 意匠は二百年くらい前に流行ったウィルザー朝の感じがする。

 もしかしたら昔は女官たちの宿舎だったのかも。

 そんなことを考えてたら、二人が戻ってきて私たちは本格的に掃除を始めた。

 ほうきで部屋の埃を払ってから、ごしごしとたわしで床を磨く。

 窓もドアも全部開け放ち、空気を入れ換える。

 長く人が住んでなかったみたいで、変な匂いもするから綺麗にしておかないと!!

 私が床磨きをしている間、レンタールは水回りの掃除、ユーノスはベットのマットとソファをベランダから出して天日干ししてくれている。

 埃がすごかったら、よく干しとかないと病気になっちゃうしね!

 それにしてもソファを軽々持ち上げるユーノス、本当に力持ち!

 関心しながら見つめていると、ユーノスは顔を真っ赤にして「殿下……そんなに見つめないでください」と小さな声で呟いてた。

 その様子がなんともおかしくて、思わず笑ってしまった。

 レンタールが体の大きい人をカワイイっていう気持ちがちょっぴり分かった気がする。

 だって、真っ赤になって恥ずかしがってるユーノス、ほんとにかわいいもん!!

 天日干しを待つ間、ユーノスは床磨きを手伝いに来てくれた。

 私が10回くらいこすってやっときれいになる汚れを、ユーノスは3回くらいできれいに磨く。

 やっぱり鍛えてるだけあって、力がすごい。

 私も頑張って鍛えてるつもりだけど、ユーノスみたいに力がつくまでどれくらいかかるんだろう???

 袖をまくりあげている腕に力を入れてユーノスみたいに力こぶを作ろうとするけど、全然できない。

 ぷにぷにしてる。

 するとその様子を見ていたユーノスに、「殿下が強くなられますと、私の仕事がなくなります。……ですから殿下におきましてはそのままでいていただけると助かります」と言われた。 

 え??

 そうなの???

 ユーノスいなくなるの??

 ユーノスがいなくなると困っちゃう!!

 じゃあ、鍛えない方がいいのかな? そう思ったけど、ふと我に返る。

 ……でも私。

 ………ほんとはカルディア兄さんじゃない。

 ブーデリアに戻ったら、アルメリアに戻らなきゃいけないし……そうなったらユーノスは兄さんの護衛騎士に戻るんだ……。

 そう思ったら、なんだかすごく哀しくなった。

 黙り込んだ私の顔を、ユーノスが覗き込んだ。

「殿下……?」

 優しい茶色い瞳が私を見つめている。

 ………ユーノスは優しくて、全然私に怒ったことはないけれど。

 兄さんじゃないって知ったら、やっぱり怒るよね??

 騙されてたって、私のこと嫌いになる??

「……ユーノス居なくなったら、ヤダよ?
 居なくならないでね……」

 ……本当のことは言えないから、私はごまかすようにユーノスの胸に縋りついた。

「……ずっと、お側にいます。
 カルディア様・・・・・・……」

 いつもは優しくてほんわか聞こえるその言葉が、なぜだかすごく辛い。

 ちくりと胸の奥が痛んだ気がした。  

 
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