4 / 27
1章
4話 私達、薄暗い個室に二人っきりじゃないかっ!
しおりを挟む
「とりあえず、カンパーイ!」
まずは、ビールで乾杯だ。
くーーーーーーっ!
やっぱり、週末に飲むビールは最高!
あ、料理はメニューを見ても全然何を頼んだらいいのか分からなかったのでおすすめコースにしてみました。
サラダにトムヤムクン、鶏肉と野菜のカシューナッツ炒め、ガパオライス、など美味しそうな料理を前にしてテンションが上がる。
私たちはお互いに近くの料理を取り分けながらしばらくは夢中で箸を動かした。
だって、美味しくって止まらないの。
色気がなくてごめん、まずは食欲を満たしたい!
「葵先生は、本当に美味しそうに食べるね」
佐藤先生はそういってほほ笑んだ。少し頬が赤らんで瞳も潤んでいる。
も、もしかして佐藤先生お酒弱いの……?
真正面からそんなにかわいく見つめられるとこまっちゃうよ!
しかも、今自覚したけど私達、薄暗い個室に二人っきりじゃないかっ!
「そ、そういえば小川君のお母さんの話は何だったんですか?」
「ああ、それはね……」
私の唐突な質問に佐藤先生は急に仕事モードになって姿勢を正した。
よ、良かった~。さっきのままの雰囲気だったらもう私の心は持たない。
本当にやばかった。佐藤先生にドキドキしかけていたもん。
今井先生の事が好きすぎる残念なイケメンを好きになったって、どうしようもないって分かっているのに……。
「小川のお母さんは南から怪我をさせられたって息子から聞いてカッとなって電話してきたんだけど……色々、話をしているうちに冷静になってね……。最終的には息子から先にちょっかいを出しているから息子も南に悪いことをしたって納得してくれたよ」
「そうだったんですね……小川君のお母さんから、そういう抗議の電話は結構かかってくるんですか?」
「まぁ、多い方かな……。難しい子を育てているんだ。お母さんの苦労は並大抵のものじゃないよ。ただ、葵先生も保護者からの電話を抗議だと受け取らずに一番子供の近くにいるお母さんから指導のヒントを貰えるチャンスだと考えられるようになれたらいいね」
指導のヒントを貰えるチャンス……?
「僕が新米だった頃に受け持ったクラスにとても反抗的な男の子がいてね、なかなかうまく指導できずに困っていたんだ。当時は経験も浅くてどうしたらいいか分からなかった。ある日、体育の授業中にあんまり遅く走るから『そんなにやる気がないのなら走らなくていい』って言っちゃったんだ。そしたら本当に走るのをやめてしまって……。走るならもっときちんと走れ、という意味で言ったのになんて生意気なんだってカチンと来ちゃった。それで『もう、走らないなら教室に帰りなさい』って叱ったんだ。そしたらその子本当に教室に帰ってしまったんだよ。こっちとしては、ごめんなさい、ちゃんと走りますって謝ってくるのを期待して指導しているのになんて反抗的なんだろうって思ってた」
佐藤先生にもそんな日があったなんて……。今の先生からは想像もつかない。先生は少しビールを飲んで喉を潤してからまた話を続けた。
「その日の夕方その子のお母さんから電話を貰ってね。『息子は先生の発言の真意や言外の意図をくみ取ることが難しいので直接行動を指示して貰えませんか?』って言われたんだ。早く走らせたければ、早く走りなさいって言って欲しいって。息子は先生に反抗する気は全くなくて『走らなくていいと言われたから走るのをやめた、教室に帰りなさいと言われたから教室に帰った、なのに反抗的だって言われる意味が分からない』って言っているって。確かにその子は全部僕のいう事を聞いていたんだよ。配慮のいる子は一人一人、個性が違う。その子に合わせた指導法を一番よく知っているのは、おうちの人だよ。だからしっかり話を聞くことで力になれるなら出来るだけの事はしたいと思ってる」
佐藤先生は本当に誠実な人だ。子供たちや保護者に対するそのまっすぐな姿勢が好ましいと思う。
……私もそんな先生を見習いたいと思う。
「葵先生は? 南の家に電話したの?」
私の事まで気にかけてくれてとても嬉しい。
……しかし、南君のお母さんとの電話はとても不思議な感じだった。
「南君の家に夕方電話をかけて、お母さんに今日の事をお話ししたんです。小川君とは家が近所で知り合いなのですぐに怪我をさせてしまったお詫びの電話をされるっておっしゃってました。ただ、南君は小さい頃から気が弱くて、そのせいで小川君から随分からかわれていたらしいんです。だから今回、初めて南君が抵抗したのは彼の成長だから小川君には悪いけど親としては嬉しいって……。私は今まで何があっても手をあげるのはいけないことだって思ってたんすけど……。先生はどう思われますか?」
「うーん、そうだね……」
佐藤先生は考え込んでしまった。
「……結局、それぞれの家庭の考え方があるっていう事じゃないかな?葵先生が言っていることはもちろん間違っていないよ。でも、もし僕が男の子の父親だったらやっぱり『嫌なことをされたらちゃんと抵抗しなさい』って言ったかも知れないね」
「え? 佐藤先生もですか……?」
「ま、男の子の世界はなんだかんだいっても力が強い奴が偉いっていう単純なもんなんだよ」
男の子の世界……。難しい……。
まずは、ビールで乾杯だ。
くーーーーーーっ!
やっぱり、週末に飲むビールは最高!
あ、料理はメニューを見ても全然何を頼んだらいいのか分からなかったのでおすすめコースにしてみました。
サラダにトムヤムクン、鶏肉と野菜のカシューナッツ炒め、ガパオライス、など美味しそうな料理を前にしてテンションが上がる。
私たちはお互いに近くの料理を取り分けながらしばらくは夢中で箸を動かした。
だって、美味しくって止まらないの。
色気がなくてごめん、まずは食欲を満たしたい!
「葵先生は、本当に美味しそうに食べるね」
佐藤先生はそういってほほ笑んだ。少し頬が赤らんで瞳も潤んでいる。
も、もしかして佐藤先生お酒弱いの……?
真正面からそんなにかわいく見つめられるとこまっちゃうよ!
しかも、今自覚したけど私達、薄暗い個室に二人っきりじゃないかっ!
「そ、そういえば小川君のお母さんの話は何だったんですか?」
「ああ、それはね……」
私の唐突な質問に佐藤先生は急に仕事モードになって姿勢を正した。
よ、良かった~。さっきのままの雰囲気だったらもう私の心は持たない。
本当にやばかった。佐藤先生にドキドキしかけていたもん。
今井先生の事が好きすぎる残念なイケメンを好きになったって、どうしようもないって分かっているのに……。
「小川のお母さんは南から怪我をさせられたって息子から聞いてカッとなって電話してきたんだけど……色々、話をしているうちに冷静になってね……。最終的には息子から先にちょっかいを出しているから息子も南に悪いことをしたって納得してくれたよ」
「そうだったんですね……小川君のお母さんから、そういう抗議の電話は結構かかってくるんですか?」
「まぁ、多い方かな……。難しい子を育てているんだ。お母さんの苦労は並大抵のものじゃないよ。ただ、葵先生も保護者からの電話を抗議だと受け取らずに一番子供の近くにいるお母さんから指導のヒントを貰えるチャンスだと考えられるようになれたらいいね」
指導のヒントを貰えるチャンス……?
「僕が新米だった頃に受け持ったクラスにとても反抗的な男の子がいてね、なかなかうまく指導できずに困っていたんだ。当時は経験も浅くてどうしたらいいか分からなかった。ある日、体育の授業中にあんまり遅く走るから『そんなにやる気がないのなら走らなくていい』って言っちゃったんだ。そしたら本当に走るのをやめてしまって……。走るならもっときちんと走れ、という意味で言ったのになんて生意気なんだってカチンと来ちゃった。それで『もう、走らないなら教室に帰りなさい』って叱ったんだ。そしたらその子本当に教室に帰ってしまったんだよ。こっちとしては、ごめんなさい、ちゃんと走りますって謝ってくるのを期待して指導しているのになんて反抗的なんだろうって思ってた」
佐藤先生にもそんな日があったなんて……。今の先生からは想像もつかない。先生は少しビールを飲んで喉を潤してからまた話を続けた。
「その日の夕方その子のお母さんから電話を貰ってね。『息子は先生の発言の真意や言外の意図をくみ取ることが難しいので直接行動を指示して貰えませんか?』って言われたんだ。早く走らせたければ、早く走りなさいって言って欲しいって。息子は先生に反抗する気は全くなくて『走らなくていいと言われたから走るのをやめた、教室に帰りなさいと言われたから教室に帰った、なのに反抗的だって言われる意味が分からない』って言っているって。確かにその子は全部僕のいう事を聞いていたんだよ。配慮のいる子は一人一人、個性が違う。その子に合わせた指導法を一番よく知っているのは、おうちの人だよ。だからしっかり話を聞くことで力になれるなら出来るだけの事はしたいと思ってる」
佐藤先生は本当に誠実な人だ。子供たちや保護者に対するそのまっすぐな姿勢が好ましいと思う。
……私もそんな先生を見習いたいと思う。
「葵先生は? 南の家に電話したの?」
私の事まで気にかけてくれてとても嬉しい。
……しかし、南君のお母さんとの電話はとても不思議な感じだった。
「南君の家に夕方電話をかけて、お母さんに今日の事をお話ししたんです。小川君とは家が近所で知り合いなのですぐに怪我をさせてしまったお詫びの電話をされるっておっしゃってました。ただ、南君は小さい頃から気が弱くて、そのせいで小川君から随分からかわれていたらしいんです。だから今回、初めて南君が抵抗したのは彼の成長だから小川君には悪いけど親としては嬉しいって……。私は今まで何があっても手をあげるのはいけないことだって思ってたんすけど……。先生はどう思われますか?」
「うーん、そうだね……」
佐藤先生は考え込んでしまった。
「……結局、それぞれの家庭の考え方があるっていう事じゃないかな?葵先生が言っていることはもちろん間違っていないよ。でも、もし僕が男の子の父親だったらやっぱり『嫌なことをされたらちゃんと抵抗しなさい』って言ったかも知れないね」
「え? 佐藤先生もですか……?」
「ま、男の子の世界はなんだかんだいっても力が強い奴が偉いっていう単純なもんなんだよ」
男の子の世界……。難しい……。
0
あなたにおすすめの小説
優しい雨が降る夜は
葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン
無自覚にモテる地味子に
余裕もなく翻弄されるイケメン
二人の恋は一筋縄ではいかなくて……
雨降る夜に心に届いた
優しい恋の物語
⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡
風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格
雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン
猫なので、もう働きません。
具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。
やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!?
しかもここは女性が極端に少ない世界。
イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。
「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。
これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。
※表紙はAI画像です
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる