『公爵令嬢には、見えざるものが見える。話せる。殴れる。 話が通じないなら、へなへなぱーんち!』

しおしお

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第37話 失敗の連鎖

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第37話 失敗の連鎖

最初は、
偶然だと片づけられた。

地方貴族の屋敷での悪魔祓い。
祈祷は滞りなく行われ、
神官たちは胸を張って引き上げた。

――翌日。

「……何も、
変わっていない?」

依頼主の声が、
震えた。

夜になると、
物音は増え。
使用人は倒れ。
家畜が怯え出す。

教会へ、
苦情が届いた。

「……次は、
別の神官を派遣しよう」

ヴィオスは、
そう判断した。

だが。

次も。
その次も。

結果は、
同じだった。

祈りは、
響くだけ。

聖水は、
床を濡らすだけ。

悪意あるものは、
一歩も退かない。

「……おかしい」

若い神官が、
額の汗を拭う。

「以前は、
もっと……」

言葉を濁す。

“以前”――
それが、
何を指すのか。

誰も、
口にしなかった。

別の屋敷。
別の村。
別の依頼。

失敗。
失敗。
失敗。

「祈りが、
足りないのでは?」

「信仰心が、
試されているのだ」

そんな言葉が、
会議室を飛び交う。

だが。

結果だけは、
誤魔化せない。

貴族たちは、
気づき始める。

「……最近の教会、
力が弱くなっていないか?」

「昔は、
もっと“効いた”」

その“昔”に――
誰がいたのか。

ヴィオスは、
夜遅くまで
帳簿をめくっていた。

依頼記録。
同行者欄。

そこに、
何度も現れる名前。

――アヴァンシア。

彼女が同行していた案件は、
すべて
“成功”扱いになっている。

(……まさか)

否定した。

偶然だ。
記録の綾だ。

そう、
思いたかった。

だが――
次の報告が、
それを砕く。

「ヴィオス様」

「王都近郊の屋敷で、
再度依頼が……」

「前回と、
同じ場所です」

「……結果は?」

沈黙。

「……失敗です」

ヴィオスは、
目を閉じた。

祈りは、
届いていない。

いや――
届く相手がいない。

(……彼女がいた時だけ)

その考えが、
頭から離れない。

だが、
認めれば――
教会の在り方そのものが
揺らぐ。

「……祈祷の形式を
見直す」

「神官の配置を変える」

「信仰教育を、
徹底する」

指示は出した。

だが、
どれも
核心には触れない。

結果は、
変わらない。

失敗は、
連鎖する。

そして――
噂は、
連鎖よりも
速かった。

「最近、
教会の悪魔祓いは
効かない」

「別の手を
考えた方がいい」

そんな囁きが、
貴族社会を巡る。

ヴィオスは、
一人、
椅子に沈み込んだ。

(……失ったのか)

(私は――
何を、
追い出した?)

だが、
この時点では
まだ。

彼は、
謝りに行く決断を
していない。

それは――
もう少し先。

教会の“聖域”が、
完全に
揺らぐ瞬間を
待つことになる。


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