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第7章
第34話 結局、不定休が正解だった
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第34話 結局、不定休が正解だった
――それから数日後。
「雪の庭」の前には、いつものように看板が下がっていた。
> OPEN
※気が向いたら
弥生はその看板を見上げ、静かに息を吐いた。
「……結局、この表記に戻りましたね」
「ええ」 忍は淡々と答える。 「最も正確ですから」
店内では、雪乃がカウンターに頬杖をつき、紅茶を飲んでいた。
「ふぅ……やっぱり、この時間が一番落ち着くわ」
「お嬢様」 弥生が慎重に声をかける。
「今日は……営業日ではなかったはずですが?」
「ええ、そうね」
雪乃はあっさり認めた。
「でも、朝起きたらね。
なんだか、ケーキが焼きたくなったの」
「……営業する気は?」
「三時間だけ」
忍と弥生は顔を見合わせた。
◆
結果。
その日は、三時間だけ営業した。
偶然通りかかった常連が数人入り、
雪乃は機嫌よく紅茶を淹れ、
弥生と忍は慣れた手つきで店を回した。
「今日、開いててよかった」 「不定期だけど、来る価値はあるよな」
そんな声が、自然に聞こえてくる。
営業が終わると、雪乃は満足そうに椅子に深く座った。
「……やっぱり、やりたい時にやるのが一番ね」
弥生は、もう反論しなかった。
「週休二日制は……どうなったんですか?」
「失敗ね」
即答だった。
「理論は完璧だったのよ?」
「……はい」
「でもね」
雪乃は紅茶を見つめながら続ける。
「七日も休んだら、暇になるし」
「はい」
「暇になると、やりたくなるし」
「……はい」
「やりたくなったら、やらない理由がないのよ」
忍が静かに言った。
「つまり」
「そう」
雪乃は小さく笑った。
「私は、計画的な休みが向いてないの」
弥生は苦笑する。
「それ、最初から分かっていました」
「ひどい」
「事実です」
◆
こうして。
「雪の庭」は正式に――
定休日なし
営業日未定
営業時間:だいたい三時間
という、
どこにも真似できない運営方針に落ち着いた。
雪乃はそれを、堂々と宣言した。
「不定休こそ、私の正解よ」
「開くかどうかは、その日の気分」
「閉まっていても、悪意はありません」
「ただ、気が向かなかっただけ」
忍が看板を書き直しながら呟く。
「……ある意味、最も誠実ですね」
「でしょう?」
雪乃は満足そうに微笑んだ。
◆
その日の夕方。
看板は CLOSE に戻っている。
雪乃は紅茶を飲みながら、ぽつりと言った。
「でもね」
「はい?」
「明日は……もしかしたら、開けるかもしれないわ」
弥生と忍は、同時にため息をついた。
「“かもしれない”が一番困るんです」 「予定が立ちません」
雪乃は楽しそうに笑う。
「それでいいのよ」
こうして今日も。
喫茶店「雪の庭」は、
店主の気分と紅茶の香りに支配されながら、
平和に、自由に、営業している。
――不定休こそが、
雪乃にとっての“最適解”だったのだから。
――それから数日後。
「雪の庭」の前には、いつものように看板が下がっていた。
> OPEN
※気が向いたら
弥生はその看板を見上げ、静かに息を吐いた。
「……結局、この表記に戻りましたね」
「ええ」 忍は淡々と答える。 「最も正確ですから」
店内では、雪乃がカウンターに頬杖をつき、紅茶を飲んでいた。
「ふぅ……やっぱり、この時間が一番落ち着くわ」
「お嬢様」 弥生が慎重に声をかける。
「今日は……営業日ではなかったはずですが?」
「ええ、そうね」
雪乃はあっさり認めた。
「でも、朝起きたらね。
なんだか、ケーキが焼きたくなったの」
「……営業する気は?」
「三時間だけ」
忍と弥生は顔を見合わせた。
◆
結果。
その日は、三時間だけ営業した。
偶然通りかかった常連が数人入り、
雪乃は機嫌よく紅茶を淹れ、
弥生と忍は慣れた手つきで店を回した。
「今日、開いててよかった」 「不定期だけど、来る価値はあるよな」
そんな声が、自然に聞こえてくる。
営業が終わると、雪乃は満足そうに椅子に深く座った。
「……やっぱり、やりたい時にやるのが一番ね」
弥生は、もう反論しなかった。
「週休二日制は……どうなったんですか?」
「失敗ね」
即答だった。
「理論は完璧だったのよ?」
「……はい」
「でもね」
雪乃は紅茶を見つめながら続ける。
「七日も休んだら、暇になるし」
「はい」
「暇になると、やりたくなるし」
「……はい」
「やりたくなったら、やらない理由がないのよ」
忍が静かに言った。
「つまり」
「そう」
雪乃は小さく笑った。
「私は、計画的な休みが向いてないの」
弥生は苦笑する。
「それ、最初から分かっていました」
「ひどい」
「事実です」
◆
こうして。
「雪の庭」は正式に――
定休日なし
営業日未定
営業時間:だいたい三時間
という、
どこにも真似できない運営方針に落ち着いた。
雪乃はそれを、堂々と宣言した。
「不定休こそ、私の正解よ」
「開くかどうかは、その日の気分」
「閉まっていても、悪意はありません」
「ただ、気が向かなかっただけ」
忍が看板を書き直しながら呟く。
「……ある意味、最も誠実ですね」
「でしょう?」
雪乃は満足そうに微笑んだ。
◆
その日の夕方。
看板は CLOSE に戻っている。
雪乃は紅茶を飲みながら、ぽつりと言った。
「でもね」
「はい?」
「明日は……もしかしたら、開けるかもしれないわ」
弥生と忍は、同時にため息をついた。
「“かもしれない”が一番困るんです」 「予定が立ちません」
雪乃は楽しそうに笑う。
「それでいいのよ」
こうして今日も。
喫茶店「雪の庭」は、
店主の気分と紅茶の香りに支配されながら、
平和に、自由に、営業している。
――不定休こそが、
雪乃にとっての“最適解”だったのだから。
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