月給422,800クレジットの仮面花嫁、契約終了したら溺愛されました

しおしお

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4章

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4-1:422,800クレジット以上の価値

春の光が窓辺を柔らかく照らす朝、私は久々に朝寝坊を許された。公爵アレクシスは昨日の再プロポーズとその後の祝宴で疲れた私を気遣い、朝の書簡配達も散歩の誘いも見送り、「今日はゆっくり休め」とだけ書き残して書斎に籠っていた。眠りから覚めてぼんやりと天井を見上げると、淡い陽光が木漏れ日のようにカーテンの隙間から差し込んでいる。心地よい温かさに誘われ、私はそっとベッドから起き上がった。

胸にはまだ、あの金の契約書を灰に変えた夜の記憶が温かく残っている。あれから数ヶ月、公爵と夫婦として歩んできた日々は、契約という枠を超えた“真実の愛”で満たされていた。だが、今日は何もかも忘れ、そっと一人で過ごす日。私は寝間着のまま寝室を抜け出し、かつて“契約妻”として初任給を手にしたときに自分へのご褒美に買った小さなティーセットが置かれているティーコーナーへ向かった。

カップとソーサー、ミルクピッチャーに角砂糖皿。すべて白磁に銀細工が施された小ぶりのセットは、一人分の朝の紅茶を優雅に楽しむには十分すぎるほど華奢だ。初任給――月額422,800クレジットを受け取ったあの日、孤独と不安を抱えながら、私はこのティーセットを買うために公国の宝飾店へ足を運んだ。品定めする間中、まるでこの小さな器が私の未来を明るく照らしてくれるかのような錯覚を抱いた。

「これで、明日も頑張ろう」

不安定だった心を、そのティーセットだけがかろうじて支えてくれるように感じたのだ。契約婚の果てに手にした初任給を、自分への励ましとして形に残したかった。家族のために借金を返し、邸の復興計画を進める日々の中で、私は何度もそのティーセットに救われた。

今は、その給料という名の重みは跡形もない。金銭で測れない価値を知った私は、ティーセットを取り出してひとつずつ指先でなでる。銀の縁に刻まれた模様が、手のひらにひんやりと伝わる。

「こんな小さな器でも、私にとっては希望の象徴だったのよね」

私はそっと笑みを浮かべ、カップに熱い紅茶を注いだ。湯気が立ち上り、優しい香りが鼻腔をくすぐる。公爵邸の紅茶は、契約時代からずっと、最高級の茶葉を使った特注品だ。私の贅沢は“許すだけの価値がある”とアレクシスが選んでくれたもの。今の私には、給料では買えない、確かな安心と愛情がある。

ひと口含むと、紅茶の深いコクとほのかな甘みが心に染み渡る。カップの縁に唇を寄せると、初任給で買ったときの緊張と期待が胸に蘇り、私はそっと目を閉じた。

「422,800クレジット……あのときは、これが全てだと思っていたのに」

過去の私は、契約で得た報酬だけを見つめ、その数字の中に未来を託していた。だが今は違う。私はアレクシスと手を取り合い、契約も給料も超えた価値を手に入れた。信頼、尊敬、愛情、そして家族――それらは数字では量れないものだ。それを私に教えてくれたのは、公爵の変わらぬ優しさと守り続ける覚悟だった。

「あなたがくれたものは、金銭以上の価値がある」

心の中で、私はそっとつぶやく。残された紅茶をゆっくり味わいながら、私はこのティーセットをこれからも大切に使うと誓った。あの頃の私の全ての希望は、今では二人で築いた未来の一コマに変わりつつあるのだから。

カップをテーブルに静かに戻すと、私は立ち上がり、まだ寝ているアレクシスの寝室へ向かった。薄手のガウンを羽織り、足音を立てないように廊下を進む。扉を開けると、彼はまだ横たわっていた。長い睫毛の下で睚眦(がし)が緩み、柔らかな寝顔がそこにある。

「おはよう……公爵様」

私はそっとささやき、彼の頬に軽くキスした。彼は眠りながらも口許を緩め、小さく微笑む。その瞬間、私の胸はじんわりと温かくなる。

――給料では買えない、真実の愛がここにある。

優しい朝の光が二人を包み込む中、私は改めて誓った。どんなに豪華な報酬があろうとも、それ以上の幸福は数えきれないほど多い。この小さなティーセットを手にした日の私に、今の私の幸せをそっと教えてあげたい――という思いを胸に抱きしめ、私は夫の腕の中へと身を沈めた。

4-2:再プロポーズ

王都の空に夕焼けが広がる頃、公爵邸の最上階テラスに私とアレクシスは揃って立っていた。春の風が頬をくすぐり、遠くには街路樹の若葉が淡い緑色の絨毯を描いている。下界の喧噪は遥か下にあり、この場所だけが時の流れを忘れたように静かに息づいていた。

「ジャアナアリー」

アレクシスは、いつもよりも少しだけ緊張した面持ちで私を見つめていた。白い朝の光の中の彼はいつも凛々しく、そして情熱的だが、夕暮れに照らされた彼の横顔は深い琥珀に溶け込むようで、その眼差しに私は思わず心を奪われた。

「今日は特別に……君に伝えたいことがある」

彼はそう言って、ゆっくりと膝を折り、石畳に片膝をついた。昼間の公の場での厳格さはどこにもなく、ただ一人の女性としての私に向き合う彼の姿に、胸が高鳴る。

「ジャアナアリー・ミラシオン――君は以前、僕の妻として“報酬”を受け取る存在だった。しかし今夜、この場で、改めて君にプロポーズしたい」

彼は黒い革の小箱をそっと取り出し、開いた。中には光を宿した小さなリングがあった。細身の地金には月光色のブルーサファイアがはめ込まれ、その周囲には白いダイヤが星屑のように瞬いている。

「君が最初の給料で選んだティーセットと同じように――僕は、君が心から喜んでくれるものを選びたかった」

私は息を詰め、箱の中の指輪を見つめる。ブルーサファイアはまるで私の瞳と同じ色で、淡い優しさと深い誠実さを象徴するかのようだった。

「この指輪は、契約のための贈り物ではない。金銭の価値では測れない、僕の心そのものだ。君への愛と尊敬、そしてこれから共に刻む未来への誓いを、形にした」

その言葉が夕暮れの空気に溶け込み、私の胸に温かな震えを残す。彼が続けて言葉を紡ぐ。

「ジャアナアリー、どうかもう一度、僕の妻として、恋人として、選んでほしい。金ではなく、心を贈るこのプロポーズを、受け取ってもらえますか?」

私は喉が渇いたように一度息を吐き、ゆっくりと視線を上げた。目の前の彼は、あの日契約書を燃やした夜とは違う。あの夜は契約の終焉を告げるものであり、今日ここでのプロポーズは、真実の愛の始まりを告げるものだった。

手が震え、言葉を探す。頬に浮かぶ紅潮は止めようがなく、瞳に涙が溜まる。

「アレクシス……あなた」

声がかすれてしまった。彼は小箱を私の手の中にそっと滑り込ませ、そのまま手を取り上げた。

「僕は、君を求めるあまり、かつて契約でしか君を縛れなかった。それを悔いている」
「でも今夜は違う。君のすべてを知り、君にすべてを捧げたい。どうか、この心のプロポーズを僕に許してほしい」

私は胸がいっぱいで、唇をかむことしかできない。指輪の重みが私の手の中でかすかに揺れる。それは数字ではなく、温度を伴った確かな存在だった。

「はい……」

どうにか絞り出したその言葉に、アレクシスの顔がぱっと輝いた。弾むように立ち上がり、私の片手の指にそっと指輪をはめる。その瞬間、彼の指先が触れるたびに小さな稲妻のような喜びが走った。

「ジャアナアリー、ありがとう」

彼はそっと私を抱き寄せる。夕暮れの柔らかな光が二人を包み込み、景色を金色に染めた。私は頬を彼の胸に押し当て、号泣した。

「ううん……ありがとうは私のほうよ……!」

頬伝いの涙が彼の胸元に零れ、彼は優しく背中を撫でる。その手のあたたかさが、契約という冷たい枷を完全に溶かし去ったのだと実感させる。

「君の涙は、僕の誇りだ」

彼は微笑みながら、私の瞳を見つめた。私はその視線の中に、自らが選ばれたことの喜びと、揺るぎない絆を確かに見た。

「これからは……お金じゃない。僕の心を、君のために使います」

その言葉が、私の胸に深く刻まれた。契約の数字を超えた価値を手に入れた瞬間だった。二人だけの世界で響く言葉は、何よりも幸福で満ち足りている。

夕暮れから夜へと移り変わる中、私たちは緩やかなキスを交わした。報酬でも権力でもない、互いの心そのものを確かめ合う、最高のプロポーズだった。

4-3:王都最大の祝宴

王都迎賓館の大広間は、その名に恥じない豪華さで知られていたが、今日ばかりは例えようのないほど華麗に彩られていた。天井からは世界各地から集められたクリスタルシャンデリアが無数に吊り下がり、眩い光のシャワーを降り注いでいる。壁面には王国の歴史を描いた巨大なタペストリーが掛けられ、床には深紅の絨毯が敷き詰められている。大理石の柱には純金の飾り金具がはめ込まれ、窓ごしに差し込む月光と相まって、まるで星屑が踊る夜空を切り取ったかのような幻想的な風景が広がっていた。

今日は――私たちジャアナアリーとアレクシス公爵の正式な再婚パーティー。王太子夫妻をはじめ、王侯貴族、外国の使節団、さらに市井の名士までが招かれ、総勢三百名を超える華やかな顔ぶれが集結していた。かつてこの大広間で私が“傀儡花嫁”と嘲笑されたことなど、もはや遠い過去の戯言のように感じられる。

「ジャアナアリー、君は本当に美しい」
私の腕を取り、隣に立つアレクシスはそっと囁いた。彼の礼服は漆黒のベルベットに銀糸の刺繍が施され、その端正なプロポーションを一層引き立てている。私のドレスは淡い月光色のシルク製で、胸元から裾にかけて散りばめられたクリスタルビーズが、歩を進めるたびにきらめいていた。

場内に向けて足を踏み出すと、まず迎賓館の執事長が花束を差し出し、「公爵夫妻、ご結婚おめでとうございます」と丁寧に祝辞を述べた。続いて、王太子殿下が笑顔で近づき、「公爵殿、ジャアナアリー殿、今日は本当におめでとう」と高らかに祝杯を挙げる。グラスのシャンパンが踊る音が重なり、会場は祝賀の雰囲気で一気に熱気を帯びた。

しかし、その華やぎの片隅では、かつて私を糾弾し貶めた令嬢たちが苦々しい表情で見ているのがわかった。かつて「金で買われた傀儡妻」などと囃し立てた面々は、今やただ見ているしかない。視線を向ければ、複雑な嫉妬と後悔が混じった苦い顔が集まっている。彼女たちの口元はわずかに震え、何か言い訳を探しているかのようだったが、アレクシスの揺るぎない威厳がまるで氷のバリアのように彼女たちを押し留めている。

会場中央に用意された長テーブルには、国王と王妃、王太子夫妻、そして私たち夫妻が並んで座った。総勢十名に及ぶ特別席だ。ナイフとフォークの音、グラスが触れ合う微かな音色が、社交界の噂話以上にかき消されないように絶妙な賑わいを醸し出している。

「乾杯!」

一斉にテーブルが上げられ、シャンパンが波打つようにグラスから輝きを放った。私たちは見つめ合い、余裕の笑みを交わしながら杯を傾けた。甘く芳醇なシャンパンの泡が喉を通り過ぎると、祝いの宴の始まりを心から実感する。

会話と笑い声が飛び交う中、私の隣に座るアレクシスは低く呟いた。
「君とこうして再び、人前で祝われるなんて、想像もできなかったよ」
私はそっと彼の手を握り返す。
「私も、公爵様のおかげで、今こうして幸せの渦の中心にいられる」

その瞬間、舞踏会が始まり、大広間の奥のステージでハープとヴァイオリンの優雅な旋律が奏でられた。王宮楽団による演奏は恍惚とした調べを紡ぎ出し、招かれた貴族たちは次々と立ち上がり、豪華な舞踏へと誘われていく。一歩踏み出すたび、私のドレスは水面の波紋のように揺れ、まるで舞踏場の花のようだった。

「お誘い、ありがとうございます」
私はアレクシスを見上げ、微笑みながら言った。彼は軽く頭を下げて私をエスコートし、二人は舞踏の円環に入っていく。貴族たちが優雅な礼を尽くす中、私たちはリズムに乗って軽やかに踊った。王都の中心で華麗な回転を重ねると、まるで時間の流れが二人だけを祝福しているかのように錯覚した。

やがて、舞踏が一区切りつくと、部屋の中央に設えられた大きなケーキが運ばれてきた。三段重ねのウェディングケーキには、白いクリームが繊細なレース模様を描き、トップには公爵夫妻を模したミニチュアのフィギュアが寄り添っていた。会場中の注目を集め、皆がスマートフォンやカメラを向ける。その祝福の視線は、かつて私を嘲笑した者たちにも向けられている。

「ジャアナアリー、公爵殿下、お待ちください」
宮廷医師がそっとやってきて、ケーキ入刀用の銀の小剣を差し出す。アレクシスは再び膝を折り、私の手を取った。

「一緒に――」
「はい」

二人で小剣を握り、ケーキのトップ部分に刃を入れる。切れ目を入れると、歓声と拍手が巻き起こった。その瞬間、私たちはただの貴族のカップルではない、“真実の絆”を結んだ夫婦として新たに認められたのだと痛感した。

宴が深まるにつれ、笑い声はより艶めかしく、会場は一層の熱気を帯びていく。フルートやチェンバロが加わる小編成オーケストラが賑やかに鳴り響き、招かれた者たちは次々と祝いのダンスに興じている。遠くでかつての敵対者たちが苦々しい表情でそれを眺め、何かを呟いているのが見えた。しかし彼らにはもはや何の力もない。私たちはただ、歓びの中心で互いを見つめ合っていた。

そして、宴のクライマックス。会場の中央が一瞬暗転し、再び明るく照らされると、アレクシスが私を抱き寄せ、深く見つめた。会場の雑音が遠のき、二人だけの静寂が訪れる。

「ジャアナアリー、愛している」
彼は低く囁き、唇をそっと重ねた。それは、数々の政治戦略を超えた、純粋で揺るぎない愛の印。誰もが息を呑み、祝福の拍手が轟いた。

――これが、契約を超えた“真実の愛”の結実。

華やかな祝宴の中、私たちのキスはまわりのすべてを照らし出す一筋の光となって、大広間を静かに包み込んでいたのだった。

4-4:エピローグ――幸せのその先へ

春の祭典から半年が過ぎ、王都の空気はすっかり初夏の色に染まっていた。公爵邸には新たな命の誕生を祝う花々が絶え間なく届けられ、廊下や客間は百花繚乱の趣を見せている。私、ジャアナアリーはこの邸で、まさに母としての新たな役割を担う日々を送っていた。

ある朝、私は柔らかな光に包まれた娘――アリシア・ヴァン=カーディアを抱き上げ、寝室のバルコニーへと連れ出した。透き通るような肌に、淡い薔薇色の頬。生まれたばかりの小さな手は私の指をぎゅっと握りしめ、瞳はまるで月明かりを映し出すような深いブルーだった。

「おはよう、アリシア」
私がそっと呼びかけると、娘は小さく口を開いて甘い歌のような声を漏らした。新米ママとして、心臓がふるえるほどの幸福を感じる瞬間だ。

バルコニーのすぐ隣には書斎があり、その窓から主人であるアレクシスが覗いていた。彼はいつもの黒い礼服ではなく、普段はあまり見せない淡いクリーム色の軽装を纏い、優しい笑みを浮かべている。

「可愛いな、アリシアは」
アレクシスは小さな声で漏らし、すぐに私に気づくと戸口を押し開けて出てきた。手にひと束のミントの花を持ち、そっとバスケットへ入れている。

「おはようございます、あなた……」
私は微笑みながら娘を抱き直す。彼はそっと近づき、娘に優しくキスを落とした。

「君たちの幸せそうな顔を見るのが、僕の日課になった」
そう囁く公爵の声に、私は胸の奥まで温かさが広がるのを感じた。


---

あの日、契約書を燃やしてからもう数か月。私たちは金銭以上の価値を知り、真の夫婦としての絆を深めてきた。社交界の噂もいまや完全に静まり、あの偏見の塵は風に飛ばされたように跡形もない。かわりに、この邸では笑い声と子どもの無邪気な寝息が絶えることなく響いている。

庭園の一角には、新たに設えられた小さな子供部屋への小径が伸びている。白いアーチの上には藤の花が咲き誇り、足元には小鳥を模した陶器の置物が点在している。先日、私は娘のために新しいベビーベッドと木製の積み木を買い、アンナと一緒に組み立てた。初めて娘と過ごす夜は、まるで魔法のように甘美で、私はその温もりをいつまでも忘れられそうにない。

「ママ、お歌を……」
娘が眠りつつも、小さく手を振って甘えるように笑った。私はそっと唄い始めた。

「ゆりかごのうえで ねんねしな~」

静かなメロディを口ずさみながら、私は彼女の髪を撫でる。公爵もそっと寄り添い、私たちを見守ってくれた。

「ジャアナアリー、君の歌声は本当に優しい」
彼は微笑み、私の手を取った。私は照れくさそうに視線を落とす。

「あなたと娘が、安心して眠れるなら……それだけで嬉しいわ」
「君がそばにいるからこそ、アリシアは安心する。僕も同じだ」

それは、契約婚の白い世界から始まった私たちの物語が、運命を超えた家族の絆へと昇華した瞬間だった。


---

日が暮れると、邸内には家族だけの小さな夕食が用意された。長い晩餐会とは違い、温かな食卓を囲むのは、アレクシスと私、そしてアンナや数名の使用人と娘だけ。シンプルな煮込み料理と焼き立てのパン、そして娘用の柔らかなミルクを添えた。それだけで、心は満たされた。

食卓の中央に置かれた小さなお茶碗を手に取り、私はそっとアレクシスに寄りかかる。

「愛してるって、もっと早く言っておけばよかった」
私は小さく呟く。それは契約期間中も言えず、でも今はすんなりと溢れる本心の言葉だった。

彼は私の呟きを聞くと、柔らかく笑い、指先で私の顎を優しく持ち上げた。

「遅くなんてないさ。今こうして伝えてくれたことが、何よりも大切だ」
私は彼の瞳を見つめ、その温かい言葉に涙がにじむ。

窓の外には、夏の星空が瞬いている。まるで私たち家族の未来を祝福するかのように、夜空に煌めく星々が流れるように瞬いていた。

「ありがとう、あなたとアリシアがいてくれて」
「そして……これからもずっと、一緒に」

私は小さく頷き、アレクシスと娘を見つめながら、家族としての幸せを噛みしめる。契約書はもう必要ない。私たちの絆は、愛と信頼で結ばれ、どんな困難も乗り越えられる強さを備えている。

公爵邸の灯りが、ゆっくりと家族の未来を照らし出す。その光の下で、私は微笑みを浮かべながら、愛しき人々とともに――幸せな日々を歩んでいくのだと静かに決意した。

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