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3章
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3-1:王宮からの圧力
薫風が吹き抜ける王都の空気は、かつての穏やかさを失っていた。アレクシス公爵の権威は日に日に強まり、社交界だけでなく政界にもその影響を及ぼし始めていた。王家にとって、その急速な台頭は明らかな脅威だった。
――「ヴァン=カーディア公爵家の勢力拡大を許すわけにはいかない」
王宮の執務室では、年老いた宰相や王族たちが重々しく声を交わしていた。執務机に置かれた地図には、アレクシスの領地が朱色で囲まれており、その領土面積は王都に次ぐほど拡大している。宰相が手にした文書には、アレクシスが提案した新税制案と治安維持の改革案が詳細に記され、どちらも国益に資すると言われながらも、王家の権力を相対的に削ぐ内容だった。
「……もし、あの公爵夫妻が王都の民心を完全に掌握すれば、王権そのものが揺らぎかねない」
「そこで、本日よりしかるべき“誘導”を開始する」
ひそやかに囁かれるその“誘導”とは、公爵夫妻への揺さぶり、すなわちジャアナアリーを狙った個別攻撃のことであった。王家はまず、ジャアナアリーの家族への支援を停止する指令を出し、さらに彼女への風聞を流す手筈を整える。
――「公爵の威光にあやかりたい平民の傀儡」「公爵家の影に隠れた女狐」
社交界の噂屋たちは、そんな言葉をつむいでは王都中に流布した。噂は瞬く間に広がり、街角の噂話から上流貴族の談合場まで、あらゆる場所でジャアナアリーの評価は揺らぎ始めた。彼女を取り巻く侍女やお付きの者たちも、口々に「公爵夫妻の評判が傾けば全てが終わり」と怯え、その雰囲気は邸内にも波及していく。
そんな折、私は公爵邸の書斎へ招かれた。厚い青い書簡を手渡され、中を見ると、王宮からの“提案”と称する手紙がそこにあった。
――「アレクシス公爵にお願いです。どうかヴァン=カーディア家の繁栄を抑え、我が王宮への貢献に集中してください。ジャアナアリー殿には、ご家族への庇護を約束しております。いかがでしょうか」
私は手紙を見下ろし、ゆっくりと視線を上げる。対面には無表情の公爵が座っていたが、その瞳の奥には確かな怒りと憂慮が滲んでいた。
「公爵様……これは、王宮からの要請ですか?」
「そうだ。――我々の勢力を分断しようとする策略だ」
彼は淡々と語るが、その声には怒気が含まれていた。私は深く息を吸い、胸の中で崩れかけていた芯を取り戻す。
「私は、公爵様の妻でいることを選びました。家族の庇護を失ったとしても、です」
言葉を告げると、公爵は一瞬だけ目を見開いた。まるで私の決意を試すかのように見つめ返し、静かに頷く。
「ありがとう、ジャアナアリー。君がそう言ってくれるだけで、僕はどんな策略にも屈しない。だが……君を守るための覚悟は、できているのか?」
「はい。私は、公爵様の隣で、どんな困難も乗り越えます」
その言葉に、公爵の肩がわずかに緩んだ。私は彼の手を取り、強く握り返した。
邸を出ると、庭園の先に控える石像が不意に目に入った。かつて、ふたりで散歩したときにアレクシスが話してくれた言葉を思い出す。
――「試練こそが、絆を深める。君となら、どんな嵐も越えていける」
私は握りしめた手をゆるめず、そっと目を閉じた。背後から聞こえてくる使用人たちのざわめきが、まるで遠い雷鳴のように感じられる。
王宮の圧力は、これからさらに激しさを増すだろう。しかし、私は決して揺らがない。
――「私は、公爵様の妻。なにも怖くはない」
そう心に誓うと、私は堂々と邸門を後にした。公爵邸の石門が私を黙って見送る中、私は自分の影をまっすぐに伸ばしながら、逆境の狭間に立ち向かう覚悟を固めたのだった。
3-2:二人で戦う覚悟
王宮から突きつけられた“揺さぶり”の矢は、公爵家の内側にも暗い影を落としていた。公爵邸の大広間には、本来なら整然と並ぶはずの礼装をまとった執事や侍女たちが、ひそひそと囁き合いながら、こちらを不安げに見つめる。屋敷を守り支えてくれている彼らに申し訳なさを覚えつつも、私はその場に立ち尽くしていた。
「ジャアナアリー、君の覚悟を改めて聞かせてほしい」
書斎の重厚な扉を閉め、アレクシスは私の目をまっすぐに見据えた。その瞳には、前回とは違う厳しさと、それを超える信頼が入り混じっている。
「はい、公爵様。私は……あなたの隣で戦います」
私は強く頷き、胸の奥にある決意を言葉に乗せた。
「あなたの妻として、家族として、どんな困難も共に乗り越えていきたいと――心から思っています」
その言葉を聞いたアレクシスは、わずかに口許を緩め、そして深く息をついた。
「ありがとう、ジャアナアリー。君の言葉は、僕にとって何よりも心強い」
彼は机の引き出しから細長い文書を取り出した。それは先ほど王宮から届いた“交渉案”や、“忠誠書”と記された書類であった。宰相の手が加えられた修正箇所には朱色のインクで「ヴァン=カーディア家への庇護停止」「ジャアナアリー殿への公的援助打ち切り」などと厳しい一文が並んでいる。
「これらは、公国の全権を握ろうとする王家の策略だ。僕だけならともかく、君を巻き込むわけにはいかない」
アレクシスの声はほとんど囁きのようだったが、その真剣さがひしひしと伝わってくる。私は机の上の書類に手を触れ、自分の決意を確かめるように目を閉じた。
「でも、私には選択肢はありません。あなたと共に歩むと決めた以上、何があっても逃げません」
再び瞳を開くと、アレクシスは私の手を優しく包み込んだ。彼のその掌の温もりが、静かに心に灯る。
「では、僕たちはこれから“戦う”」
彼はそう言い、立ち上がった。私も続いて立ち上がる。重厚なカーテンの陰から差し込む午後の陽光が、二人を照らし出す。
---
それからの数日間、公爵邸はまるで要塞のように厳戒態勢が敷かれた。護衛の騎士団の数は倍増し、執事たちは作戦会議のように地図とにらめっこを続けた。どこから情報が漏れ、どこに裏切りの芽が潜むのか。夜ごとに会議室に集められた侍女や家令たちは、疲れた顔で訓示を受け、各自の役割を確認していった。
私は毎晩、アレクシスとともに護衛隊長から報告を受けた。臣下たちの中にも、王家の圧力に屈して離反しようとする者がいる。だが、その度に二人で声を合わせ、彼らの忠義を取り戻していった――優しさと厳しさを絶妙に織り交ぜ、心をつかむアレクシスのやり方は見事だった。
ある夜、私は自室のバルコニーでひとり、深い溜息をついていた。心細さと責任の重さに押しつぶされそうになりながらも、「私だけではない」と思い返す。背後から優しい声がした。
「ジャアナアリー、少し疲れたかい?」
振り返ると、アレクシスが剣帯を外し、軽装で隣に立っている。月明かりに照らされて、彼の髪と目が銀色に輝いていた。
「公爵様もお疲れでしょうに……」
私は俯きながらつぶやく。彼は私の手を取り、その細い指先を優しく撫でた。
「君と共にあるこの戦いは、僕にとっても初めてのことだ。戸惑いもある。しかし、君がそばにいてくれるから、僕は強くなれる」
胸に温かいものが流れ込む。私は目を潤ませながら、彼に向き直った。
「私も、公爵様がいなければ、もう折れていたかもしれません」
「それでも君は折れずに立っている。君が戦う姿を見て、僕はどれだけ勇気づけられたかわからない」
二人は静かに抱き合い、そのまま言葉を紡ぐ必要はなかった。互いの胸の鼓動が、この上ない協奏曲のように響き合っている。
---
翌朝、邸内に一通の書簡が届く。それはかつて忠実だった家令からの離反の予告であった。だが、その脅しにも屈しない。私は書簡を摂政代理の執務机に叩きつけ、公爵とともに決意を示した。
「これを受け入れることは、一歩も引かないという宣言だ」
アレクシスは鋭い目で私を見た。
「はい。私の人生は、あなたと共にあります」
私は断固として言い切った。彼は満足そうに頷き、その場で家令たちを集めて改めて命じた。
――「ヴァン=カーディア公爵夫妻の忠誠を誓う者は、そのままここに残りなさい。離反を考える者は、今すぐ退去せよ」
意外にも、多くの家令や侍女たちは忠義を誓い直し、邸内に留まることを選んだ。恐怖ではなく、二人への信頼がその心を支配していたのだ。
同じ日に、社交界からも「公爵夫妻に逆らう者は、貴族としての資格を失う」との噂が広まる。王家の圧力をものともせず――いや、それすらを跳ね返して団結を見せた公爵夫妻の姿は、社交界にも政治界にも大きな衝撃を与えた。
二人で戦う――その決意は文字通り、形となって示されたのだった。
---
小さな勝利を積み重ねるたびに、私たちの絆は深まっていく。昼間の激務に疲れて夜半に倒れそうになっても、互いに支え合い、励まし合いながら歩み続けた。時には剣を抜き、時には演説台に立ち、市民や貴族たちの心に直接訴えかける。どんなに逆境が高くそびえ立っても、私は公爵の隣に立ち、同じ夢と誇りを胸に刻んでいた。
――これが、私たちの“本物の夫婦”としての歩みだ。
夜空に星が瞬くたび、私は心からそう呟く。どんな困難も、二人でなら必ず乗り越えられる。そう確信しながら、私は明日の朝も彼と共に歩き続けることを誓った。
3-3:命を狙われるジャアナアリー
夜半過ぎの静寂が、公爵邸の広大な庭園を包んでいた。天井のように高い樫(かし)の樹々が重厚な影を落とし、どこか遠くでフクロウが遠吠えのように鳴いている。月明かりは濃い雲に隠れ、濡れた芝生が淡い光をはじくだけ。屋敷内の灯りも最小限に抑えられ、深い闇の中に潜む何かを感じさせた。
私は書斎で公爵からの書簡を整理し終え、静かに廊下を進んでいた。書斎近くの控え室では、いつものように忠実な騎士団員が眠りにつき、時折城壁の見張りが遠くを見渡す足音だけが響いている。安堵のため息を漏らしつつ、私はふだん通り自室へ戻ろうとした。
その瞬間、背後の茂みから小柄な影が飛び出してきた。
「——!」
咄嗟に体が硬直し、長い髪を束ねた赤いリボンが揺れるのを視界の端で捉えた。次の瞬間、暗い刃が一閃し、私の胸元を狙ってきた。
「きゃっ——!」
悲鳴にも似た声を上げる私に、刃は私の礼服の襟元をかすり、かすかな温かさを残しながら鋭く逃げていった。血の匂いが鼻先に漂い、ひんやりとした感触が自分の胸を濡らす。驚きと恐怖で手が震え、足元がふらついた。
「ジャアナアリー!」
闇を裂くように響いた低い声に救われる思いで、振り返った。黒い鎧に身を包んだアレクシスが、秀麗な顔に一瞬の恐怖を刻みながら、剣を手に一目散に駆け寄ってくる。隣にいた近侍騎士たちも続いて駆けつけ、暗闇の中で交錯する鎧の音と鉄の軋みが凄まじい緊迫感を生んだ。
「その手で、二度と君を——!」
アレクシスは断固たる剣さばきで、暗躍していた刺客の姿を追う。刃が交わるたび、火花のように稲妻が走る。刺客は素早く二方向に走り去ろうとするが、公爵の一太刀が肩口に深く抉(えぐ)った。暗闇の中に呻き声が響き、刺客はよろめきながら地面に倒れ伏す。
「離れろ!」
アレクシスの怒号で侍女たちは後退し、私は震える足でその場から転げるように後ろへ飛び退いた。膝から力が抜け、夜露に濡れた草の感触がひんやりと伝わる。胸元の血しぶきが広がり、目の前が暗く揺れた。
「ジャアナアリー」
アレクシスが駆け寄り、私の腕をしっかりと支える。その腕には恐怖以上の安堵と絶対的な守護者としての覚悟が満ちていた。彼の無表情は、今や切羽詰まった真剣さに変わっている。
「大丈夫か?」
声は低く、しかし確かな震えがあった。私は言葉を絞り出す。
「……あ、ありがとう……公爵様」
頬に伝うものは血ではなく、恐怖と安堵の涙だった。アレクシスは無言で私を抱き寄せ、ひんやりした草の上にそっと座り込む。
「君を失うわけにはいかない」
その言葉に、私は涙をこらえきれず、肩を震わせた。アレクシスは右手で私の額を撫で、左手で傷口を優しく押さえる。きつく絞めたリボンのように、彼の腕は揺るぎない安心感をくれる。
「助かってよかった……」
嗚咽交じりに呟く私に、公爵は静かに答える。
「誰が君の命を狙ったのかを調べる。命に別状はない」
闇夜にくっきりと映るその横顔は、かつて見た冷静な公爵ではなく、私のために怒りと悲しみを爆発させる一人の人間だった。彼の震える声に、私の胸はいっぱいになる。
「私は、大丈夫ですから……」
私は彼の肩にしがみつきながら言う。だが、身体は震え、視界が滲む。アレクシスはそっと笑いかけ、髪を撫でた。
「君が無事で何よりだ。だが、これからはどこへ行くにも僕が隣にいよう。君を一人にするつもりはない」
その言葉を、私は心底嬉しく思った。契約婚の冷たい枠組みはもはや過去のこと。今こうして、命を賭けて私を守る彼の姿が、真実の絆を示している。
辺りに広がる夜露の匂いと、遠くの木々のざわめきの中で、私はそっと目を閉じた。アレクシスの腕の中で、安心と切なさが交じり合う。刺客の不穏はこの国の権力争いの深さを物語っていたが、それでも私は恐れなかった。
――「あなたがいる」
そのたった一言で、私はどんな嵐も乗り越えられると確信した。アレクシスと私は、真の夫婦として――命を賭けた絆を胸に、これからも共に戦い抜くのだと。
3-4:宣言――最も価値ある妻として
王都最大の栄華を誇る大広間は、政務と社交を兼ねた「王国春季晩餐会」のために、豪奢な装飾が施されていた。高い天井からは無数のクリスタルシャンデリアが吊り下げられ、壁面の巨大なステンドグラスには朝の陽光が射し込み、華やかな色彩が床に波紋となって広がる。大理石の入口には王旗と公国の紋章が並び、国王夫妻、王太子、諸侯や公爵たち――およそ百名を超える貴族が一堂に会していた。
その中央に据えられた玉座に、公爵アレクシス・ヴァン=カーディアと私、ジャアナアリーが静かに腰を下ろしている。長い調度品の間には緊張感が漂い、これほどの荘厳な場であるにもかかわらず、私は背後から自分を見守る護衛騎士の眼差しと、足元でじっと息を潜める使用人たちの気配を感じていた。
「これより、アレクシス・ヴァン=カーディア公爵殿下より、王夫人殿のご紹介と宣言を賜ります」
王宮の儀礼長が高らかに宣言し、会場の空気が一段と引き締まる。数歩進んだ儀礼台の上で、公爵は端正な顔立ちを少しだけ綻ばせ、私の手を取りそっと握った。私は脈打つ手のひらを見下ろし、深く息を吸った。
「皆様、本日はお集まりいただき誠にありがとうございます」
アレクシスの声は穏やかだが、その一音一音に重みがあった。彼は玉座の前で両手を広げ、会場を見渡す。
「私はこれまで、公爵家の権威を守るため、数々の改革と政治的措置を講じてまいりました。しかし、いかなる法律や条約よりも優先されるものがあります。それこそが――家族の絆です」
貴族たちのざわめきが一瞬止まり、王宮の侍従や宰相も背筋を伸ばしたまま彼の言葉に耳を傾けている。
「本日、私はここに宣言いたします。ジャアナアリー・ミラシオンは、私の最も価値ある妻であり、かけがえのない家族であると」
その言葉とともに、アレクシスは深く私の手を握り締め、真っ直ぐに私の瞳を見つめた。私の胸は高鳴り、手のひらの温度がじんわりと伝わる。
「彼女は金銭や利益のための存在ではなく、心と魂で選んだ伴侶です。王家がどれほどの圧力をかけようと、社交界がどれほどの噂を流そうと、私は決して彼女を手放すつもりはありません」
会場の空気が一度、ぴんと張りつめる。そして拍手がひとつ、またひとつと湧き上がる。まずは最も近しい貴族たちが、続いて遠方の公爵や侯爵が大きな拍手を送る。やがて自然と会場中に拍手の波が広がり、鳴り止まない歓声が大理石の壁に反響した。
――今、ジャアナアリーはただの“契約花嫁”ではない。真の公爵夫人として、国中に認められたのだ。
侍従が新たな書簡を手渡すと、アレクシスはそれを見つめ、静かに読み上げた。そこには、かつて私を貶めた令嬢や裏切った貴族たちへの勅命が記されていた。
「ここに発布します。私に敵対し、妻を侮辱した者たちは、すべて公爵家の領地から追放する。彼らに与えられた爵位と称号は没収し、王家の寵愛も停止するものとする」
会場に再び静寂が訪れ、一瞬、誰もが息を飲む。だが主君の言葉をそのまま引用する儀礼長の声が場内にこだまし、最後には厳粛な拍手が巻き起こった。
「これが、私の“ざまぁ”です」
アレクシスはにっこりと微笑み、私の頬にそっと口づけを落とした。その瞬間、私の頬は熱く染まり、会場の視線が二人を祝福する光のように感じられた。
「ジャアナアリー、君が僕の側にいてくれる限り、何ものも恐れる必要はない。未来は必ず、僕たちの絆によって拓かれる」
私は彼の胸に顔を寄せ、微笑みながら頷いた。
「はい、公爵様。私は、あなたと共に歩み続けます」
大広間は再び祝福の拍手に包まれ、祝宴の幕が開いた。肉料理が豪華な皿に盛られ、吟遊詩人が祝祭の歌を奏で、舞踏会は深い夜まで続いていった。だが私にとって、最も輝いていたのはアレクシスの隣で交わした“真実の誓い”だった。
――これが、私たちの新たなスタート。契約を超え、政略を超え、権力争いをも超える、本物の愛の宣言。
華やかな宴の中で、二人の未来は力強く、燦然と輝き始めていた。
薫風が吹き抜ける王都の空気は、かつての穏やかさを失っていた。アレクシス公爵の権威は日に日に強まり、社交界だけでなく政界にもその影響を及ぼし始めていた。王家にとって、その急速な台頭は明らかな脅威だった。
――「ヴァン=カーディア公爵家の勢力拡大を許すわけにはいかない」
王宮の執務室では、年老いた宰相や王族たちが重々しく声を交わしていた。執務机に置かれた地図には、アレクシスの領地が朱色で囲まれており、その領土面積は王都に次ぐほど拡大している。宰相が手にした文書には、アレクシスが提案した新税制案と治安維持の改革案が詳細に記され、どちらも国益に資すると言われながらも、王家の権力を相対的に削ぐ内容だった。
「……もし、あの公爵夫妻が王都の民心を完全に掌握すれば、王権そのものが揺らぎかねない」
「そこで、本日よりしかるべき“誘導”を開始する」
ひそやかに囁かれるその“誘導”とは、公爵夫妻への揺さぶり、すなわちジャアナアリーを狙った個別攻撃のことであった。王家はまず、ジャアナアリーの家族への支援を停止する指令を出し、さらに彼女への風聞を流す手筈を整える。
――「公爵の威光にあやかりたい平民の傀儡」「公爵家の影に隠れた女狐」
社交界の噂屋たちは、そんな言葉をつむいでは王都中に流布した。噂は瞬く間に広がり、街角の噂話から上流貴族の談合場まで、あらゆる場所でジャアナアリーの評価は揺らぎ始めた。彼女を取り巻く侍女やお付きの者たちも、口々に「公爵夫妻の評判が傾けば全てが終わり」と怯え、その雰囲気は邸内にも波及していく。
そんな折、私は公爵邸の書斎へ招かれた。厚い青い書簡を手渡され、中を見ると、王宮からの“提案”と称する手紙がそこにあった。
――「アレクシス公爵にお願いです。どうかヴァン=カーディア家の繁栄を抑え、我が王宮への貢献に集中してください。ジャアナアリー殿には、ご家族への庇護を約束しております。いかがでしょうか」
私は手紙を見下ろし、ゆっくりと視線を上げる。対面には無表情の公爵が座っていたが、その瞳の奥には確かな怒りと憂慮が滲んでいた。
「公爵様……これは、王宮からの要請ですか?」
「そうだ。――我々の勢力を分断しようとする策略だ」
彼は淡々と語るが、その声には怒気が含まれていた。私は深く息を吸い、胸の中で崩れかけていた芯を取り戻す。
「私は、公爵様の妻でいることを選びました。家族の庇護を失ったとしても、です」
言葉を告げると、公爵は一瞬だけ目を見開いた。まるで私の決意を試すかのように見つめ返し、静かに頷く。
「ありがとう、ジャアナアリー。君がそう言ってくれるだけで、僕はどんな策略にも屈しない。だが……君を守るための覚悟は、できているのか?」
「はい。私は、公爵様の隣で、どんな困難も乗り越えます」
その言葉に、公爵の肩がわずかに緩んだ。私は彼の手を取り、強く握り返した。
邸を出ると、庭園の先に控える石像が不意に目に入った。かつて、ふたりで散歩したときにアレクシスが話してくれた言葉を思い出す。
――「試練こそが、絆を深める。君となら、どんな嵐も越えていける」
私は握りしめた手をゆるめず、そっと目を閉じた。背後から聞こえてくる使用人たちのざわめきが、まるで遠い雷鳴のように感じられる。
王宮の圧力は、これからさらに激しさを増すだろう。しかし、私は決して揺らがない。
――「私は、公爵様の妻。なにも怖くはない」
そう心に誓うと、私は堂々と邸門を後にした。公爵邸の石門が私を黙って見送る中、私は自分の影をまっすぐに伸ばしながら、逆境の狭間に立ち向かう覚悟を固めたのだった。
3-2:二人で戦う覚悟
王宮から突きつけられた“揺さぶり”の矢は、公爵家の内側にも暗い影を落としていた。公爵邸の大広間には、本来なら整然と並ぶはずの礼装をまとった執事や侍女たちが、ひそひそと囁き合いながら、こちらを不安げに見つめる。屋敷を守り支えてくれている彼らに申し訳なさを覚えつつも、私はその場に立ち尽くしていた。
「ジャアナアリー、君の覚悟を改めて聞かせてほしい」
書斎の重厚な扉を閉め、アレクシスは私の目をまっすぐに見据えた。その瞳には、前回とは違う厳しさと、それを超える信頼が入り混じっている。
「はい、公爵様。私は……あなたの隣で戦います」
私は強く頷き、胸の奥にある決意を言葉に乗せた。
「あなたの妻として、家族として、どんな困難も共に乗り越えていきたいと――心から思っています」
その言葉を聞いたアレクシスは、わずかに口許を緩め、そして深く息をついた。
「ありがとう、ジャアナアリー。君の言葉は、僕にとって何よりも心強い」
彼は机の引き出しから細長い文書を取り出した。それは先ほど王宮から届いた“交渉案”や、“忠誠書”と記された書類であった。宰相の手が加えられた修正箇所には朱色のインクで「ヴァン=カーディア家への庇護停止」「ジャアナアリー殿への公的援助打ち切り」などと厳しい一文が並んでいる。
「これらは、公国の全権を握ろうとする王家の策略だ。僕だけならともかく、君を巻き込むわけにはいかない」
アレクシスの声はほとんど囁きのようだったが、その真剣さがひしひしと伝わってくる。私は机の上の書類に手を触れ、自分の決意を確かめるように目を閉じた。
「でも、私には選択肢はありません。あなたと共に歩むと決めた以上、何があっても逃げません」
再び瞳を開くと、アレクシスは私の手を優しく包み込んだ。彼のその掌の温もりが、静かに心に灯る。
「では、僕たちはこれから“戦う”」
彼はそう言い、立ち上がった。私も続いて立ち上がる。重厚なカーテンの陰から差し込む午後の陽光が、二人を照らし出す。
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それからの数日間、公爵邸はまるで要塞のように厳戒態勢が敷かれた。護衛の騎士団の数は倍増し、執事たちは作戦会議のように地図とにらめっこを続けた。どこから情報が漏れ、どこに裏切りの芽が潜むのか。夜ごとに会議室に集められた侍女や家令たちは、疲れた顔で訓示を受け、各自の役割を確認していった。
私は毎晩、アレクシスとともに護衛隊長から報告を受けた。臣下たちの中にも、王家の圧力に屈して離反しようとする者がいる。だが、その度に二人で声を合わせ、彼らの忠義を取り戻していった――優しさと厳しさを絶妙に織り交ぜ、心をつかむアレクシスのやり方は見事だった。
ある夜、私は自室のバルコニーでひとり、深い溜息をついていた。心細さと責任の重さに押しつぶされそうになりながらも、「私だけではない」と思い返す。背後から優しい声がした。
「ジャアナアリー、少し疲れたかい?」
振り返ると、アレクシスが剣帯を外し、軽装で隣に立っている。月明かりに照らされて、彼の髪と目が銀色に輝いていた。
「公爵様もお疲れでしょうに……」
私は俯きながらつぶやく。彼は私の手を取り、その細い指先を優しく撫でた。
「君と共にあるこの戦いは、僕にとっても初めてのことだ。戸惑いもある。しかし、君がそばにいてくれるから、僕は強くなれる」
胸に温かいものが流れ込む。私は目を潤ませながら、彼に向き直った。
「私も、公爵様がいなければ、もう折れていたかもしれません」
「それでも君は折れずに立っている。君が戦う姿を見て、僕はどれだけ勇気づけられたかわからない」
二人は静かに抱き合い、そのまま言葉を紡ぐ必要はなかった。互いの胸の鼓動が、この上ない協奏曲のように響き合っている。
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翌朝、邸内に一通の書簡が届く。それはかつて忠実だった家令からの離反の予告であった。だが、その脅しにも屈しない。私は書簡を摂政代理の執務机に叩きつけ、公爵とともに決意を示した。
「これを受け入れることは、一歩も引かないという宣言だ」
アレクシスは鋭い目で私を見た。
「はい。私の人生は、あなたと共にあります」
私は断固として言い切った。彼は満足そうに頷き、その場で家令たちを集めて改めて命じた。
――「ヴァン=カーディア公爵夫妻の忠誠を誓う者は、そのままここに残りなさい。離反を考える者は、今すぐ退去せよ」
意外にも、多くの家令や侍女たちは忠義を誓い直し、邸内に留まることを選んだ。恐怖ではなく、二人への信頼がその心を支配していたのだ。
同じ日に、社交界からも「公爵夫妻に逆らう者は、貴族としての資格を失う」との噂が広まる。王家の圧力をものともせず――いや、それすらを跳ね返して団結を見せた公爵夫妻の姿は、社交界にも政治界にも大きな衝撃を与えた。
二人で戦う――その決意は文字通り、形となって示されたのだった。
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小さな勝利を積み重ねるたびに、私たちの絆は深まっていく。昼間の激務に疲れて夜半に倒れそうになっても、互いに支え合い、励まし合いながら歩み続けた。時には剣を抜き、時には演説台に立ち、市民や貴族たちの心に直接訴えかける。どんなに逆境が高くそびえ立っても、私は公爵の隣に立ち、同じ夢と誇りを胸に刻んでいた。
――これが、私たちの“本物の夫婦”としての歩みだ。
夜空に星が瞬くたび、私は心からそう呟く。どんな困難も、二人でなら必ず乗り越えられる。そう確信しながら、私は明日の朝も彼と共に歩き続けることを誓った。
3-3:命を狙われるジャアナアリー
夜半過ぎの静寂が、公爵邸の広大な庭園を包んでいた。天井のように高い樫(かし)の樹々が重厚な影を落とし、どこか遠くでフクロウが遠吠えのように鳴いている。月明かりは濃い雲に隠れ、濡れた芝生が淡い光をはじくだけ。屋敷内の灯りも最小限に抑えられ、深い闇の中に潜む何かを感じさせた。
私は書斎で公爵からの書簡を整理し終え、静かに廊下を進んでいた。書斎近くの控え室では、いつものように忠実な騎士団員が眠りにつき、時折城壁の見張りが遠くを見渡す足音だけが響いている。安堵のため息を漏らしつつ、私はふだん通り自室へ戻ろうとした。
その瞬間、背後の茂みから小柄な影が飛び出してきた。
「——!」
咄嗟に体が硬直し、長い髪を束ねた赤いリボンが揺れるのを視界の端で捉えた。次の瞬間、暗い刃が一閃し、私の胸元を狙ってきた。
「きゃっ——!」
悲鳴にも似た声を上げる私に、刃は私の礼服の襟元をかすり、かすかな温かさを残しながら鋭く逃げていった。血の匂いが鼻先に漂い、ひんやりとした感触が自分の胸を濡らす。驚きと恐怖で手が震え、足元がふらついた。
「ジャアナアリー!」
闇を裂くように響いた低い声に救われる思いで、振り返った。黒い鎧に身を包んだアレクシスが、秀麗な顔に一瞬の恐怖を刻みながら、剣を手に一目散に駆け寄ってくる。隣にいた近侍騎士たちも続いて駆けつけ、暗闇の中で交錯する鎧の音と鉄の軋みが凄まじい緊迫感を生んだ。
「その手で、二度と君を——!」
アレクシスは断固たる剣さばきで、暗躍していた刺客の姿を追う。刃が交わるたび、火花のように稲妻が走る。刺客は素早く二方向に走り去ろうとするが、公爵の一太刀が肩口に深く抉(えぐ)った。暗闇の中に呻き声が響き、刺客はよろめきながら地面に倒れ伏す。
「離れろ!」
アレクシスの怒号で侍女たちは後退し、私は震える足でその場から転げるように後ろへ飛び退いた。膝から力が抜け、夜露に濡れた草の感触がひんやりと伝わる。胸元の血しぶきが広がり、目の前が暗く揺れた。
「ジャアナアリー」
アレクシスが駆け寄り、私の腕をしっかりと支える。その腕には恐怖以上の安堵と絶対的な守護者としての覚悟が満ちていた。彼の無表情は、今や切羽詰まった真剣さに変わっている。
「大丈夫か?」
声は低く、しかし確かな震えがあった。私は言葉を絞り出す。
「……あ、ありがとう……公爵様」
頬に伝うものは血ではなく、恐怖と安堵の涙だった。アレクシスは無言で私を抱き寄せ、ひんやりした草の上にそっと座り込む。
「君を失うわけにはいかない」
その言葉に、私は涙をこらえきれず、肩を震わせた。アレクシスは右手で私の額を撫で、左手で傷口を優しく押さえる。きつく絞めたリボンのように、彼の腕は揺るぎない安心感をくれる。
「助かってよかった……」
嗚咽交じりに呟く私に、公爵は静かに答える。
「誰が君の命を狙ったのかを調べる。命に別状はない」
闇夜にくっきりと映るその横顔は、かつて見た冷静な公爵ではなく、私のために怒りと悲しみを爆発させる一人の人間だった。彼の震える声に、私の胸はいっぱいになる。
「私は、大丈夫ですから……」
私は彼の肩にしがみつきながら言う。だが、身体は震え、視界が滲む。アレクシスはそっと笑いかけ、髪を撫でた。
「君が無事で何よりだ。だが、これからはどこへ行くにも僕が隣にいよう。君を一人にするつもりはない」
その言葉を、私は心底嬉しく思った。契約婚の冷たい枠組みはもはや過去のこと。今こうして、命を賭けて私を守る彼の姿が、真実の絆を示している。
辺りに広がる夜露の匂いと、遠くの木々のざわめきの中で、私はそっと目を閉じた。アレクシスの腕の中で、安心と切なさが交じり合う。刺客の不穏はこの国の権力争いの深さを物語っていたが、それでも私は恐れなかった。
――「あなたがいる」
そのたった一言で、私はどんな嵐も乗り越えられると確信した。アレクシスと私は、真の夫婦として――命を賭けた絆を胸に、これからも共に戦い抜くのだと。
3-4:宣言――最も価値ある妻として
王都最大の栄華を誇る大広間は、政務と社交を兼ねた「王国春季晩餐会」のために、豪奢な装飾が施されていた。高い天井からは無数のクリスタルシャンデリアが吊り下げられ、壁面の巨大なステンドグラスには朝の陽光が射し込み、華やかな色彩が床に波紋となって広がる。大理石の入口には王旗と公国の紋章が並び、国王夫妻、王太子、諸侯や公爵たち――およそ百名を超える貴族が一堂に会していた。
その中央に据えられた玉座に、公爵アレクシス・ヴァン=カーディアと私、ジャアナアリーが静かに腰を下ろしている。長い調度品の間には緊張感が漂い、これほどの荘厳な場であるにもかかわらず、私は背後から自分を見守る護衛騎士の眼差しと、足元でじっと息を潜める使用人たちの気配を感じていた。
「これより、アレクシス・ヴァン=カーディア公爵殿下より、王夫人殿のご紹介と宣言を賜ります」
王宮の儀礼長が高らかに宣言し、会場の空気が一段と引き締まる。数歩進んだ儀礼台の上で、公爵は端正な顔立ちを少しだけ綻ばせ、私の手を取りそっと握った。私は脈打つ手のひらを見下ろし、深く息を吸った。
「皆様、本日はお集まりいただき誠にありがとうございます」
アレクシスの声は穏やかだが、その一音一音に重みがあった。彼は玉座の前で両手を広げ、会場を見渡す。
「私はこれまで、公爵家の権威を守るため、数々の改革と政治的措置を講じてまいりました。しかし、いかなる法律や条約よりも優先されるものがあります。それこそが――家族の絆です」
貴族たちのざわめきが一瞬止まり、王宮の侍従や宰相も背筋を伸ばしたまま彼の言葉に耳を傾けている。
「本日、私はここに宣言いたします。ジャアナアリー・ミラシオンは、私の最も価値ある妻であり、かけがえのない家族であると」
その言葉とともに、アレクシスは深く私の手を握り締め、真っ直ぐに私の瞳を見つめた。私の胸は高鳴り、手のひらの温度がじんわりと伝わる。
「彼女は金銭や利益のための存在ではなく、心と魂で選んだ伴侶です。王家がどれほどの圧力をかけようと、社交界がどれほどの噂を流そうと、私は決して彼女を手放すつもりはありません」
会場の空気が一度、ぴんと張りつめる。そして拍手がひとつ、またひとつと湧き上がる。まずは最も近しい貴族たちが、続いて遠方の公爵や侯爵が大きな拍手を送る。やがて自然と会場中に拍手の波が広がり、鳴り止まない歓声が大理石の壁に反響した。
――今、ジャアナアリーはただの“契約花嫁”ではない。真の公爵夫人として、国中に認められたのだ。
侍従が新たな書簡を手渡すと、アレクシスはそれを見つめ、静かに読み上げた。そこには、かつて私を貶めた令嬢や裏切った貴族たちへの勅命が記されていた。
「ここに発布します。私に敵対し、妻を侮辱した者たちは、すべて公爵家の領地から追放する。彼らに与えられた爵位と称号は没収し、王家の寵愛も停止するものとする」
会場に再び静寂が訪れ、一瞬、誰もが息を飲む。だが主君の言葉をそのまま引用する儀礼長の声が場内にこだまし、最後には厳粛な拍手が巻き起こった。
「これが、私の“ざまぁ”です」
アレクシスはにっこりと微笑み、私の頬にそっと口づけを落とした。その瞬間、私の頬は熱く染まり、会場の視線が二人を祝福する光のように感じられた。
「ジャアナアリー、君が僕の側にいてくれる限り、何ものも恐れる必要はない。未来は必ず、僕たちの絆によって拓かれる」
私は彼の胸に顔を寄せ、微笑みながら頷いた。
「はい、公爵様。私は、あなたと共に歩み続けます」
大広間は再び祝福の拍手に包まれ、祝宴の幕が開いた。肉料理が豪華な皿に盛られ、吟遊詩人が祝祭の歌を奏で、舞踏会は深い夜まで続いていった。だが私にとって、最も輝いていたのはアレクシスの隣で交わした“真実の誓い”だった。
――これが、私たちの新たなスタート。契約を超え、政略を超え、権力争いをも超える、本物の愛の宣言。
華やかな宴の中で、二人の未来は力強く、燦然と輝き始めていた。
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