婚約破棄されたけど負けないもん。がんばってさばいばるするぞー!

しおしお

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第4章 幼女の奇跡と新しい約束

4−4 リリアナ、未来へ笑うですの!

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第4章 幼女の奇跡と新しい約束

4-4 リリアナ、未来へ笑うですの!

春の風が王都を包み込むように吹き抜けていた。
光の国となったルヴィアン王国は、かつてないほど穏やかで、豊かだった。
街には笑顔があふれ、誰もが未来を語るようになった。

その中心には、あの少女――リリアナがいた。

彼女は今や十六歳。
少女から若き乙女へと成長していたが、
あの頃の無邪気な笑顔は変わらない。

朝の陽射しを浴びながら、王都の孤児院を訪ねるリリアナ。
白い修道服の裾を揺らし、子どもたちの輪の中へと入っていく。

「リリアナおねえさまー!」
「おはようですのー!」

子どもたちが一斉に抱きついてくる。
その中で、彼女はひとりひとりの頭を優しく撫でた。

「今日も、よく笑ってますの。えらいですの!」
「リリアナさまも、いつも笑ってるもん!」
「ふふっ、そうですの。笑顔はね、世界でいちばん強い魔法ですの。」

彼女がそう言うと、子どもたちは声を上げて笑った。

***

昼過ぎ、孤児院を出たリリアナは、王都の広場に立った。
あの日、幼い彼女が人々の前で「泣かないですの」と誓った場所。
今ではそこに、立派な記念碑が建っている。

石碑には、金文字でこう刻まれていた。

> 『笑顔の奇跡 リリアナの祈り
――闇を照らしたのは、勇気ではなく優しさだった』



彼女は少し照れくさそうに笑い、
碑の前にそっと花を手向けた。

「リリアナ、がんばりましたの。
 でも、ほんとうは――“がんばらない”ほうが上手になったですの。」

柔らかな声が、風に溶けるように広がる。

そのとき、背後から懐かしい声がした。

「まったく、変わらないな。君は昔から、どこまでも明るい。」

振り向けば、青年になったエリアス王子が立っていた。
金の髪を後ろで束ね、凛々しい鎧姿。
だがその眼差しは、幼い日のまま優しい。

「おうじさま、また見てたですの?」
「君を見ていない日はないよ。」

「……また、うまいこと言いましたの。」
リリアナは頬を膨らませ、でもすぐに笑った。

エリアスは笑みを浮かべたまま、石碑を見つめる。
「君がいたから、国はここまで来られた。」
「ちがいますの。リリアナひとりじゃ、できませんの。
 みんなが、手をつないでくれたからですの。」

「……それでも、きっかけは君だ。」

彼はそう言って、懐から一冊の古い本を取り出した。
革表紙には、金の糸で“リリアナの記録”と刺繍されている。

「これは、君が幼いころに語った言葉をまとめたものだ。
 『泣いてもいいですの』『がんばりすぎないですの』『みんなで笑うですの』
 ――そのひとつひとつが、この国の指針になっている。」

リリアナは目を丸くした。
「そんなたいそうなものじゃないですの。ただ思ったことを言っただけですの。」

「だからこそ、価値があるんだ。」
エリアスは静かに言った。
「人は、難しい理屈では動かない。
 けれど、君の“やさしさ”には、誰も逆らえない。」

リリアナは頬を赤らめた。
「……それって、ほめてるですの?」
「もちろんだとも。」

二人は笑い合った。

***

その夜。
ルフェール家の庭で、イザベラ夫人と公爵が焚き火を囲んでいた。
リリアナはその隣で膝を抱え、夜空を見上げている。

「おかあさま。あの星、きれいですの。」
「ええ。あれは“春の乙女星”よ。
 遠い昔、優しい心を持った娘が天に上がって、
 みんなを見守っているという伝説があるの。」

「じゃあ、その娘さんも、がんばりすぎなかったですの?」
「ふふ、ええ。きっとね。」

リリアナは小さくうなずいた。
「リリアナも、星になっても笑っていたいですの。
 だって、笑顔はずっと光るですの。」

イザベラ夫人は涙ぐみながら微笑んだ。
「あなたなら、きっとそうなるわ。」

公爵が静かに杯を上げる。
「リリアナに。――この国を救った、私たちの太陽に。」

「リリアナ、まだおさけのめませんの!」
「ははは、そうだったな。」

笑い声が夜空に響く。
まるで星々さえ微笑んでいるかのように、穏やかな夜だった。

***

そして――時は流れた。
リリアナがこの世を去った後も、
“光の国”という呼び名は、変わらなかった。

彼女の誕生日には、今も王都の子どもたちが花冠を編み、
笑顔でこう唱える。

> 「リリアナみたいに、がんばりすぎないで笑うですの!」



人々の心に残ったのは、壮大な魔法でも英雄譚でもない。
ただ――やさしい笑顔。

それこそが、国を癒やし続ける“奇跡”だった。

風が吹き、街角の石碑に花びらが舞い落ちる。
陽光がそれを照らし、まるで金色の羽が降るようだった。

> ――リリアナ、未来へ笑うですの。
その笑顔が、永遠の約束となって。




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