私は悪女らしいので、婚約者のうつけ王子を操り──私を売った父と母国に復讐します

しおしお

文字の大きさ
6 / 39

第6話 悪女令嬢、うつけ王子を最速で覚醒させる

しおりを挟む
第6話 悪女令嬢、うつけ王子を最速で覚醒させる

 ベルリッタ滞在から十日目。
 アクノマジョリーカは、朝からドンファムを離宮中に引きずり回していた。

「マ、マジョリーカ……! なぜ朝からこんなに資料が……!」

「当然ですわ。あなた、まだ“駒として半人前”なのですから」

「半人前なの!?」

「ええ。ですから今日は“実地訓練”をしますわよ」

「じ、実地……?」

「王都の視察です。あなたの目で“弱点”を探しなさい。
 ベルリッタ王国に潜んでいる、侵略されやすいポイントを全部見つけ出すのです」

「え? 侵略されやすい……?」

「そうですわ」

 アクノマジョリーカはにっこり微笑む。

(もちろん、あなたの国を守るためではありませんわよ。
 “我がエリルフィン公爵家が侵略する際のため”ですわ)

「さ、行きますわよ。馬車の準備は整っています」

「いや、視察って……急すぎない?」

「黙ってついてきなさい。駒が口答えしてはダメですわ」

「はいぃぃ!」

 王子なのに駒扱いされ、しょんぼりしながらもついてくるドンファム。

 アクノマジョリーカは歩きながら、ちらりと彼を観察する。

(……本当に素直に従いますわね。
 この従順さ、最終的に国を乗っ取るには最高の素材ですわ)

 王都に着くと、アクノマジョリーカはすぐに指示を飛ばした。

「王子。あそこにある倉庫群、あれは火攻めに弱いですわ」

「火攻め!? なんでそんな発想になるの!?」

「侵略では基本ですわよ」

「基本なの!?」

「そしてあの貴族街。中央の大邸宅が指揮信号。
 そこを押さえれば全体が混乱しますわ」

「ちょっと待って、なんでそんなに詳しいの……」

「当然ですわ。私はエリルフィンの公爵令嬢。
 “侵略される側”より“侵略する側”なのです」

「怖いよ!? マジョリーカ!?」

 ドンファムの悲鳴など気にせず、彼女は続ける。

「そして城門。あれは兵力を集中させれば一時間で落ちますわ」

「一時間で!? やめてその計算!!」

「なので――」

 アクノマジョリーカは扇を閉じ、静かに笑った。

「ベルリッタを守りたいなら、あなたが変わらなければなりませんわ、王子」

「……!」

 その言葉に、ドンファムの目の奥が静かに燃えた。

 アクノマジョリーカは見逃さない。

(あら……良い反応。やはりこの王子、素質は本物ですわね)

「マジョリーカ……俺は……」

「黙って努力なさい。感情はあとで結構ですわ」

「はい……!」

 王子は拳を握りしめ、どこか誓うように頷いた。

 一方アクノマジョリーカは、心の中で小さく舌なめずりする。

(あなたが強ければ強いほど――
 “私の計画”は成功しますわ)

(従順で優秀な“駒としての王子”。
 これほど使い勝手の良い存在、他にいませんもの)

「王子。後半は城の弱点を調べますわよ」

「ま、まだ続くのか……」

「当然ですわ。ベルリッタ制圧のため……いえ、
 “あなたの強化”のためですわ」

「今なんて言った!?」

「気のせいですわ。さ、行きますわよ」

 こうして、ベルリッタ侵略を企む悪女令嬢は、
 今日も王子を振り回しながら、その国を丁寧に分析していくのであった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません

鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。 「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」 そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。 ——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。 「最近、おまえが気になるんだ」 「もっと夫婦としての時間を持たないか?」 今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。 愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。 わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。 政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ “白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!

何も決めなかった王国は、静かに席を失う』

ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として、 表には立たず、裏で国を支えてきた公爵令嬢ネフェリア。 だが―― 彼女が追い出されたのは、嫉妬でも陰謀でもなかった。 ただ一つ、「決める役割」を、国が彼女一人に押しつけていたからだ。 婚約破棄の後、ネフェリアを失った王国は変わろうとする。 制度を整え、会議を重ね、慎重に、正しく―― けれどその“正しさ”は、何一つ決断を生まなかった。 一方、帝国は違った。 完璧ではなくとも、期限内に返事をする。 責任を分け、判断を止めない。 その差は、やがて「呼ばれない会議」「残らない席」「知らされない決定」となって現れる。 王国は滅びない。 だが、何も決めない国は、静かに舞台の外へ追いやられていく。 ――そして迎える、最後の選択。 これは、 剣も魔法も振るわない“静かなざまぁ”。 何も決めなかった過去に、国そのものが向き合う物語。

灯火

松石 愛弓
恋愛
子供のいない男爵家に、幼少時に引き取られたフィーリア。 数年後、義両親に実子が授かり、フィーリアは無用とばかりに男爵令嬢の立場から使用人扱いにされる。 意地悪な義母と義妹の浪費癖のため、無償労働のメイドとしてこき使われる辛い日々。 そんなある日、フィーリアに転機が訪れて・・ 珍しくシリアスな感じのお話を書いてしまいました いつもはこんな感じなのに・・ ^^; https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/122288809/episode/2034446 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/658488266/episode/4191823 新作です。毎週土曜日に更新予定です。興味を持っていただけましたら幸いです。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/910027059/episode/10733961

気がついたら婚約者アリの後輩魔導師(王子)と結婚していたんですが。

三谷朱花
恋愛
「おめでとう!」 朝、職場である王城に着くと、リサ・ムースは、魔導士仲間になぜか祝われた。 「何が?」 リサは祝われた理由に心当たりがなかった。 どうやら、リサは結婚したらしい。 ……婚約者がいたはずの、ディランと。

追放された悪役令嬢、辺境で植物魔法に目覚める。銀狼領主の溺愛と精霊の加護で幸せスローライフ!〜真の聖女は私でした〜

黒崎隼人
恋愛
「王国の害悪」として婚約破棄され、魔物が棲む最果ての地『魔狼の森』へ追放された悪役令嬢リリア。 しかし、彼女には前世の記憶と、ゲーム知識、そして植物を癒やし育てる不思議な力があった! 不毛の地をハーブ園に変え、精霊と友達になり、スローライフを満喫しようとするリリア。 そんな彼女を待っていたのは、冷徹と噂される銀狼の獣人領主・カイルとの出会いだった。 「お前は、俺の宝だ」 寡黙なカイルの不器用な優しさと、とろけるような溺愛に包まれて、リリアは本当の幸せを見つけていく。 一方、リリアを追放した王子と偽聖女には、破滅の足音が迫っていて……? 植物魔法で辺境を開拓し、獣人領主に愛される、大逆転ハッピーエンドストーリー!

不機嫌な侯爵様に、その献身は届かない

翠月 瑠々奈
恋愛
サルコベリア侯爵夫人は、夫の言動に違和感を覚え始める。 始めは夜会での振る舞いからだった。 それがさらに明らかになっていく。 機嫌が悪ければ、それを周りに隠さず察して動いてもらおうとし、愚痴を言ったら同調してもらおうとするのは、まるで子どものよう。 おまけに自分より格下だと思えば強気に出る。 そんな夫から、とある仕事を押し付けられたところ──?

紫の瞳の王女と緑の瞳の男爵令嬢

秋野 林檎 
恋愛
「わ……私と結婚してください!」と叫んだのは、男爵令嬢ミーナ プロポーズされたのは第一騎士団の団長、アークフリード・フェリックス・ブランドン公爵 アークフリードには、13年前に守りたいと思っていた紫の髪に紫の瞳をもつエリザベスを守ることができず死なせてしまったという辛い初恋の思い出があった。 そんなアークフリードの前に現れたのは、赤い髪に緑の瞳をもつミーナ 運命はふたりに不思議なめぐりあいの舞台を用意した。 ⁂がついている章は性的な場面がありますので、ご注意ください。 「なろう」でも公開しておりますが、そちらではまだ改稿が進んでおりませんので、よろしければこちらでご覧ください。

出来損ないと呼ばれた公爵令嬢の結婚

奏千歌
恋愛
[できそこないと呼ばれても][魔王]  努力をしてきたつもりでした。  でもその結果が、私には学園に入学できるほどの学力がないというものでした。  できそこないと言われ、家から出ることを許されず、公爵家の家族としても認めてもらえず、使用人として働くことでしか、そこに私の居場所はありませんでした。  でも、それも、私が努力をすることができなかった結果で、悪いのは私のはずでした。  私が悪いのだと、何もかもを諦めていました。  諦めた果てに私に告げられたことは、魔法使いとの結婚でした。  田舎町に住む魔法使いさんは、どんな方なのか。  大きな不安を抱え、長い長い道のりを歩いて行きました。

処理中です...