私は悪女らしいので、婚約者のうつけ王子を操り──私を売った父と母国に復讐します

しおしお

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第11話 悪女令嬢、密偵掃討作戦を開始する

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第11話 悪女令嬢、密偵掃討作戦を開始する

 ドンファムの特訓開始から三日後。
 アクノマジョリーカは、ベルリッタ城の地図を広げ、険しい顔で城内を見渡していた。

「……思った以上に、あちこちに父――エリルフィン公爵の密偵が潜り込んでいますわね」

 ベルリッタの各所に、エリルフィン公爵が送り込んだ者たちが散らばっている。
 王の行動、軍備、城内の噂――情報はすべて元母国へ漏れている。

 このままでは侵略の合図が出るのも時間の問題だった。

「まずは身内の“掃除”から始めますわよ」

 マジョリーカがひそやかに呟くと、ドンファムが青ざめた。

「そ、掃除って……まさか、命を奪うとか……?」

「私を誰だと思っていますの?
 そんな野蛮な真似、しませんわ」

「そ、そうだよね……よかった……」

「“必要であれば”話は別ですが」

「やっぱり怖いよマジョリーカ!!」

 王子が震えていると、マジョリーカは胸を張って宣言した。

「目的はただ一つ。
 ――ベルリッタへの情報漏洩を“ゼロ”にすることですわ」

 

 潜む密偵をあぶり出す作戦

 マジョリーカは、侍女長のルネを呼びつけた。

「内密にしてほしいことがありますわ」

「はい、マジョリーカ様」

「これから城内に“偽情報”を流します。
 誰がどの情報を漏らすか、私がすべて把握しますわ」

「偽情報……でございますか?」

「ええ。部屋の位置や軍備、王子の予定……
 すべて細かく噓の情報を流し込み、どれが父に渡るか監視しますの」

「……お見事です。悪女の名は伊達ではございませんね」

「褒め言葉として受け取っておきますわ」

 ルネが深く頭を下げ、動き出す。

 一方のドンファムは、ぽかんと口を開けていた。

「そんな方法があるんだ……すごいよ、マジョリーカ」

「王国を守るためには当然のことですわ」

(ほんとうに……この令嬢は何者なんだ……?
 “悪女”と呼ばれていたなんて、信じられない)

 

 次々と罠にかかる密偵たち

 三日もすると、マジョリーカの用意した“罠”が次々と作動した。

 兵士の一人が王城を抜け出してエリルフィン公爵へ手紙を送ろうとすれば――

 既にドンファムの護衛隊が待ち伏せしていた。

「なっ、なぜバレた!」

「それはですね……あなたが“西門の開閉時間”を公爵に伝えようとしたからですよ」

 別の侍女が妙に部屋の配置を気にしていると、
マジョリーカが淡々と告げた。

「窓の位置を調べて何をするつもりですの?
 ……父へ伝えるため、でしょう?」

「ひっ……!」

 泣き崩れる侍女を、王子が優しく連行する。

 密偵として城に潜り込んでいた者たちは、
次々と捕まり、完全に隔離された。

 

 王宮会議、騒然

 捕縛された密偵たちの人数は、なんと二十名を超えていた。

 王は驚愕し、ドンファムは青ざめ、
 重臣たちも信じられないという表情を浮かべる。

「マジョリーカ殿……どうやってここまで……?」

「簡単なことですわ。
 “本気で国を落とそうとしている者”の思考など、父を見ていれば手に取るように分かりますの」

(ぞ……ぞっとするほどの才覚……)
(やはり、ただの令嬢ではない……)
(悪女というより、戦略の天才では……?)

 王宮全体がざわつく中、ドンファムだけは誇らしげに微笑んだ。

「ぼくの婚約者、すごいだろ……?」

(なっ……!?)

 場にいた全員が一瞬固まり、
 その次の瞬間、絶妙に気まずい空気が流れた。

 ……が、マジョリーカだけは微動だにしなかった。

「王子、勘違いしないでくださいまし。
 私は“ベルリッタを守るため”に動いているだけですわ」

「う、うん……でも、ありがとう」

(この王子……素直すぎますわね……
 悪くはないのだけれど)

 

 そして夜、アクノのひとり言

「……やられる前に、やる。
 この国は落とさせませんわよ、父上」

 部屋の窓辺に立ち、月を見上げながら彼女は冷たく微笑んだ。

 ベルリッタ王国は、まだ誰も知らない。
 ――悪女と呼ばれた令嬢が、今まさに国を救おうとしていることを。
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