私は悪女らしいので、婚約者のうつけ王子を操り──私を売った父と母国に復讐します

しおしお

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第12話 悪女令嬢、王国軍の立て直しに着手する

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第12話 悪女令嬢、王国軍の立て直しに着手する

 エリルフィン公爵の密偵たちを一掃した翌日。
 アクノマジョリーカは、ベルリッタ城の軍議室に姿を現した。

「軍の状況を、今すぐ正確に教えてくださる?」

 その場に集まっていた軍幹部たちは、一瞬ためらいの色を浮かべる。
 令嬢である彼女に軍の情報を開示して良いのか――戸惑っていた。

 だが、それを払拭したのはレオン王子……ではなくドンファム王子だった。

「マジョリーカは信用していい。
 密偵を全部あぶり出してくれたのは、彼女なんだ」

「……承知しました、殿下」

 軍幹部たちは、次々と資料をマジョリーカの前へ積み上げた。

 

 王国軍、実はボロボロ

 マジョリーカは資料を流し読みし、すぐ観察した。

「……予想以上に、ひどいですわね」

 彼女の言葉に、軍幹部は肩を落とした。

「はい……兵の士気は低く、装備も古くなっております。
 軍資金も不足し、訓練も満足にできていません」

「加えて……」
 参謀役が苦悩の顔で続ける。

「エリルフィン公爵側に通じていた重臣たちのせいで、
 予算が横流しされ、兵站が崩壊寸前です」

「それで、ベルリッタは侵略の準備が遅れていたわけですわね」

 すべて父の陰謀。
 マジョリーカは胸の奥に冷たい怒りを灯す。

「父上……本気で、この国を落とすつもりだったのね」

 

 悪女令嬢、早すぎる軍改革を提案する

「まず最初に、兵士に徹底してやらせるべきことがありますわ」

「そ、それは?」

「“掃除”です」

「……………………は?」

 軍議室が固まった。

「掃除……でございますか?」

「ええ。軍営の清掃、装備庫の整理整頓、兵舎の換気と衛生状態の改善。
 戦う以前に“環境”が腐敗していては、士気は落ち、装備も活かせませんわよ」

 参謀長は目をぱちぱちさせた。

「お、お言葉ですが……軍にとって最優先すべきは訓練や――」

「その訓練を支える環境が最悪だから言っているのですわ。
 兵の寝床が湿っていて、装備が錆びている状態で、何が戦えると言うのかしら?」

 その瞬間、軍幹部たちの背筋が伸びた。

(……鋭い)
(軍務を知らぬ令嬢と思って侮っていたが……)
(まるで歴戦の将のような目だ)

 

 ドンファム王子、こっそり感動する

 横で聞いていたドンファムは、目を輝かせていた。

「マジョリーカ、すごいよ……! そんな考え方、ぼくにはなかった!」

「あなたは素直すぎますわ。
 でも悪くありません。素直な兵ほど伸びますし」

「ぼ、僕って兵士扱い……?」

「兵士以下の訓練を受けているのですから当然でしょう?」

「やっぱり厳しいよマジョリーカ!!」

 

 悪女令嬢、動く

「まずは現場を見ますわ。案内なさい、ドンファム殿下」

「は、はい!」

 二人は軍営へ向かう。

 そこに広がっていたのは――想像以上の惨状だった。

・訓練場は泥だらけ
・兵舎は埃まみれ
・装備庫には壊れた武器が積み上がり
・食堂は……見るに堪えないほど散らかっていた

「…………絶句ですわね」

 マジョリーカは頭を押さえた。

「ドンファム殿下」

「は、はい!」

「いますぐ兵を集めなさい。
 本日より――軍営全面清掃を開始しますわ!」

「えええっ!?
 ぼ、ぼくも……?」

「当然ですわよ。あなたはこの国の王子なのですから」

 

 ベルリッタ軍、立て直しの第一歩を踏み出す

 その日の午後、軍営では前代未聞の光景が広がっていた。

「そこ!剣を磨く前に床を磨きなさい!」
「武器庫、整理が甘いですわよ!」
「食堂の衛生状態が最悪ですわ、やり直し!」

 悪女令嬢の号令のもと、兵士たちが無言で働いている。

 その中心で、ドンファム王子は汗だくになって雑巾がけしていた。

「……ぼ、ぼく、王子なのに……」

「王子だからこそ先頭に立つのですわ」

「は、はいっ!!」

(なんだ……すごい……皆、真剣についてきてる……)

 兵士たちは、マジョリーカの怒号ではなく“的確さ”に驚惶し、
 その才覚に自然と敬意を抱いていた。

 

 そして夜

 レオン王子は、静かにこの様子を見守っていた。

(……この令嬢、ただ者ではない。
 ベルリッタは、彼女のおかげで救われるかもしれない)

 彼は小さく微笑みながら呟いた。

「……うつけなどではなく、むしろ――英雄は彼女だな」

 その頃、当の本人はというと――

「……ああ、腰が痛いですわ」

 と、誰もいない部屋でひとり嘆いていた。


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