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第13話 悪女令嬢、ついに王国の弱点を見抜く
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第13話 悪女令嬢、ついに王国の弱点を見抜く
軍営の大掃除が始まって三日。
ベルリッタ王国軍は、以前とは見違えるほど整っていた。
「す、すげぇ……兵舎がこんなに綺麗なの初めてだ……」
「武器庫の在庫も正確に数えられてる……」
「食堂から悪臭がしないなんて奇跡だろ……?」
兵士たちは自分たちでも信じられないという表情で周囲を見回していた。
その中心で腕を組み、鬼のような視線を向けている人物が一人。
アクノマジョリーカである。
「まだ終わりではありませんわ。ここからが本番です」
彼女の声に、兵士たちの背筋が伸びる。
ドンファム王子がそっと耳打ちする。
「マジョリーカ、みんな結構疲れてるし……今日は休みにしてあげても……?」
「だめですわ」
即答だった。
「今は、軍の体制を立て直す絶好の機会です。この勢いを途切れさせたら元に戻りますわよ」
「は、はい……」
ドンファムはしゅんと肩を落としながらも、内心では彼女の判断に納得していた。
アクノマジョリーカの厳しさには理由がある。
それは次の言葉で明確になった。
「さて。ベルリッタ軍の“弱点”を洗い出しますわ」
参謀長が驚いたように顔を上げる。
「弱点でございますか?しかし、兵站も整い、士気も上昇しつつあります。今の時点でここまで改善したことは……」
「だからこそ分かることがあるのですわ」
アクノマジョリーカは、軍議室の中央に広げられた地図を指差した。
「この国の弱点。それは“情報伝達の遅さ”です」
その場の空気が変わった。
参謀長は目を見開き、すぐに理解したらしい。
「……おっしゃる通りです。ベルリッタは広い国土に対し、各地の連絡網が古く、軍の動きも遅れがちです。これが原因で侵略の対処がいつも後手に回っていました」
マジョリーカはうなずいた。
「軍営を綺麗にして分かったのです。あらゆる文書が古いまま放置され、情報が更新されていませんでしたわ。敵が攻めてきても、緊急文書は馬で運ばれ、最短でも一日かかるでしょう」
「まさに、その通りでございます……」
兵士たちもざわめき出した。
「言われてみれば……」
「確かに連絡が遅いのはずっと問題だった」
「でも改善は難しいって聞いたことが……」
ドンファムが不安そうに尋ねた。
「マジョリーカ。情報伝達を早めるなんてできるの……?」
「できますわよ」
彼女は迷いなく答えた。
「ベルリッタには“できない理由”が多すぎるのです。
だから私が“できる方法”を探しますわ」
「できる方法……?」
「まず、伝令の拠点となる詰所を再編します。
各地に分散した連絡所を集約し、兵站と文書管理を一元化するのです」
参謀長が唸る。
「なるほど……情報が集まる場所が増えれば連絡が速くなる。さらに整理が進めば、危険地域の把握も迅速に……!」
「ええ。そして次に、近隣の村々や街道沿いに“中継点”を作ります。そこに常駐する兵を置き、伝令をリレー式に繋げば、従来の半分以下の時間で情報が届くでしょう」
「半分以下……!」
兵たちはざわつき、アクノマジョリーカを見る目が変わった。
その視線に気づきながらも、彼女は涼しい顔で言い放つ。
「ベルリッタは強国になれる資質がありますわ。ただ、それを扱う“手”が足りていないだけです」
参謀長は拳を握った。
「これは……この国の歴史が変わるかもしれませぬ……!」
ドンファム王子は感動のあまり涙ぐみながら言った。
「マジョリーカ……すごいよ。ほんとうに……すごいよ!」
「まあ、これくらい当然のことですわ。
国を守るためなら、多少の労力は惜しみません」
そう言いつつ、アクノマジョリーカの内心は別の方向に向いていた。
(……侵略前提で育てられた私だからこそ、弱点がよく分かるのですわ)
父の陰謀を止めるためにも、ベルリッタを強くしなければならない。
(やられる前にやる……そのために、まずは土台作りですわ)
この日、ベルリッタ王国は歴史的な改革へと歩き始めた。
そして、アクノマジョリーカは着々と――
父の侵略計画を逆転させるための布石を打っていた。
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軍営の大掃除が始まって三日。
ベルリッタ王国軍は、以前とは見違えるほど整っていた。
「す、すげぇ……兵舎がこんなに綺麗なの初めてだ……」
「武器庫の在庫も正確に数えられてる……」
「食堂から悪臭がしないなんて奇跡だろ……?」
兵士たちは自分たちでも信じられないという表情で周囲を見回していた。
その中心で腕を組み、鬼のような視線を向けている人物が一人。
アクノマジョリーカである。
「まだ終わりではありませんわ。ここからが本番です」
彼女の声に、兵士たちの背筋が伸びる。
ドンファム王子がそっと耳打ちする。
「マジョリーカ、みんな結構疲れてるし……今日は休みにしてあげても……?」
「だめですわ」
即答だった。
「今は、軍の体制を立て直す絶好の機会です。この勢いを途切れさせたら元に戻りますわよ」
「は、はい……」
ドンファムはしゅんと肩を落としながらも、内心では彼女の判断に納得していた。
アクノマジョリーカの厳しさには理由がある。
それは次の言葉で明確になった。
「さて。ベルリッタ軍の“弱点”を洗い出しますわ」
参謀長が驚いたように顔を上げる。
「弱点でございますか?しかし、兵站も整い、士気も上昇しつつあります。今の時点でここまで改善したことは……」
「だからこそ分かることがあるのですわ」
アクノマジョリーカは、軍議室の中央に広げられた地図を指差した。
「この国の弱点。それは“情報伝達の遅さ”です」
その場の空気が変わった。
参謀長は目を見開き、すぐに理解したらしい。
「……おっしゃる通りです。ベルリッタは広い国土に対し、各地の連絡網が古く、軍の動きも遅れがちです。これが原因で侵略の対処がいつも後手に回っていました」
マジョリーカはうなずいた。
「軍営を綺麗にして分かったのです。あらゆる文書が古いまま放置され、情報が更新されていませんでしたわ。敵が攻めてきても、緊急文書は馬で運ばれ、最短でも一日かかるでしょう」
「まさに、その通りでございます……」
兵士たちもざわめき出した。
「言われてみれば……」
「確かに連絡が遅いのはずっと問題だった」
「でも改善は難しいって聞いたことが……」
ドンファムが不安そうに尋ねた。
「マジョリーカ。情報伝達を早めるなんてできるの……?」
「できますわよ」
彼女は迷いなく答えた。
「ベルリッタには“できない理由”が多すぎるのです。
だから私が“できる方法”を探しますわ」
「できる方法……?」
「まず、伝令の拠点となる詰所を再編します。
各地に分散した連絡所を集約し、兵站と文書管理を一元化するのです」
参謀長が唸る。
「なるほど……情報が集まる場所が増えれば連絡が速くなる。さらに整理が進めば、危険地域の把握も迅速に……!」
「ええ。そして次に、近隣の村々や街道沿いに“中継点”を作ります。そこに常駐する兵を置き、伝令をリレー式に繋げば、従来の半分以下の時間で情報が届くでしょう」
「半分以下……!」
兵たちはざわつき、アクノマジョリーカを見る目が変わった。
その視線に気づきながらも、彼女は涼しい顔で言い放つ。
「ベルリッタは強国になれる資質がありますわ。ただ、それを扱う“手”が足りていないだけです」
参謀長は拳を握った。
「これは……この国の歴史が変わるかもしれませぬ……!」
ドンファム王子は感動のあまり涙ぐみながら言った。
「マジョリーカ……すごいよ。ほんとうに……すごいよ!」
「まあ、これくらい当然のことですわ。
国を守るためなら、多少の労力は惜しみません」
そう言いつつ、アクノマジョリーカの内心は別の方向に向いていた。
(……侵略前提で育てられた私だからこそ、弱点がよく分かるのですわ)
父の陰謀を止めるためにも、ベルリッタを強くしなければならない。
(やられる前にやる……そのために、まずは土台作りですわ)
この日、ベルリッタ王国は歴史的な改革へと歩き始めた。
そして、アクノマジョリーカは着々と――
父の侵略計画を逆転させるための布石を打っていた。
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