私は悪女らしいので、婚約者のうつけ王子を操り──私を売った父と母国に復讐します

しおしお

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26話 「捨て駒ではなく、相棒として」

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26話 「捨て駒ではなく、相棒として」

夜のベルリッタ城。
作戦会議が終わったあと、アクノマジョリーカは一人、月の光差し込む回廊を歩いていた。

その背後から、控えめな足音が追ってくる。

「……マジョリーカ様」

振り返ると、そこにはドンファムが立っていた。
昼間とは違い、彼の表情は真剣だった。

「何か御用でして?」
アクノマジョリーカは微かに目を細める。

ドンファムは深呼吸し、覚悟を決めたように言った。

「僕は……あなたに、言わなくてはいけないことがあります」

「ほう?」

彼は拳を握りしめながら続けた。

「あなたはずっと僕を“使える駒”と言ってくださっています。でも……僕は、駒では終わりたくないのです」

アクノマジョリーカは片眉を上げる。

「では、何になりたいと?」

「あなたの相棒に。
ベルリッタを守るために、あなたと並び立っていたい」

その言葉に、アクノマジョリーカは少しだけ目を見開く。

王太子として振る舞うこともできず、周囲からうつけと呼ばれてきた男が、ようやく自分の意思で言葉を放ったのだ。

「……ドンファム王子。あなたは、私に添いたいのですか?それとも、ベルリッタのために戦いたいのですか?」

「その両方です。
あなたを誰よりも信じています。
あなたとなら、国を守り抜けると思ったのです」

アクノマジョリーカの唇に、ふっと僅かな笑みが浮かぶ。

「ふふ……そういう口を利けるのなら、最初から言いなさいな」

そして、背を向けたまま言い放つ。

「よろしい。
駒ではなく、あなたを私の“右腕”として扱ってあげますわ」

ドンファムは息を飲む。

「右腕……」

「ええ。私が策を張り巡らせ、あなたがそれを実行する。
あなたの誠実さも、民の信頼も、戦場での胆力も――全部、私が使いこなしてあげます」

ドンファムは胸が熱くなるのを感じた。

「……必ず、お役に立ちます」

「当然です。使えない右腕なら切り落としますので」

「が、がんばります!」

アクノマジョリーカは小さく笑った。

「冗談ですわ。
……半分くらいは」

「半分!?」

「王子、あなたは成長なさいました。
国のために意思を持つ男は嫌いではありません。さあ、行きますわよ。ベルリッタを守る準備は山ほどあります」

ドンファムは、強く頷く。

二人の足音が、夜の回廊に響いていく。

その歩みは、
もはや“うつけ王子と悪女令嬢”ではなく――
国を救うための、最強のコンビの歩みだった。



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