38 / 39
第39話 父娘の対面と、揺らぐ公爵領
しおりを挟む
第39話 父娘の対面と、揺らぐ公爵領
ベルリッタ軍は国境を越え、エリルフィン公爵領へと雪崩れ込んだ。
行軍は驚くほど順調で、敵兵は散発的な抵抗すらまともにできない。
アクノマジョリーカは軍馬の上から全体を見渡し、静かに呟く。
アクノマジョリーカ
「ふふ……混乱していますわね。予想通りです。」
ドンファム
「というか、お前の実家……こんなに脆かったのか?」
アクノマジョリーカ
「父は、他国を侵略する“つもりだっただけ”の男ですもの。
やる気だけで侵略できるなら、苦労しませんわ。」
ドンファム
「辛辣だな……」
その時、先遣隊が駆け戻ってきた。
先遣隊
「報告します! 公爵軍は本陣を引き払い、公爵邸へ撤退した模様!
領都全体が混乱し、住民は避難を始めています!」
アクノマジョリーカ
「さて……父が逃げ込んだのなら、そのまま包囲します。
私たちが直接乗り込みますわ。」
ドンファム
「……会うのか? あの公爵に。」
アクノマジョリーカ
「当然でしょう。
“計略がすべて崩れた瞬間の顔”を見るために来たのですから。」
ドンファム
「お前、実は怖い女だよな……?」
アクノマジョリーカ
「褒め言葉として受け取っておきますわ。」
アクノマジョリーカの微笑に、ドンファムは小さく身震いした。
---
エリルフィン公爵邸。
重厚な扉を兵士たちが蹴破ると、奥の広間でエリルフィン公爵が震える手で剣を握っていた。
エリルフィン公爵
「アクノマジョリーカ……! 貴様……娘のくせに……!」
アクノマジョリーカは堂々と歩いてきた。
その歩みは、もはや“令嬢”ではなく“勝利を確信した将”のものだった。
アクノマジョリーカ
「父上こそ……娘を侵略の道具に使ったこと、覚悟はできているのでしょうね?」
エリルフィン公爵
「……なぜだ! なぜベルリッタ側についた!
お前を送り込んだのは、ベルリッタを内部から崩すためだぞ!」
アクノマジョリーカ
「それが愚かだと言っているのですわ。
殿下は利用できるほど浅い人物ではありません。
そして――
父上の計略は、最初から私が粉砕するつもりでいましたの。」
エリルフィン公爵
「娘が……父に牙をむくというのか……!」
アクノマジョリーカ
「違いますわ。
父が先に、娘を切り捨てたのです。」
公爵は言葉を失う。
アクノマジョリーカは一歩、また一歩と父へ近づいた。
その瞳には怒りではなく――冷たい決意だけが宿っていた。
アクノマジョリーカ
「ベルリッタへの侵略を企て、娘を政治の駒として売り、
最後は自分だけ逃げ延びようとする。
そんな男に、公爵領を任せておけません。」
エリルフィン公爵
「……アクノ……お前は、本当に……私の娘なのか?」
アクノマジョリーカ
「ええ。
“あなたが見捨てた娘”が、こうして帰ってきたのです。」
沈黙が落ちる。
公爵の手から、カラン……と剣が落ちた。
エリルフィン公爵
「私は……間違っていたのか……?」
アクノマジョリーカ
「いいえ。
父上の計略は間違っていませんでしたわ。」
エリルフィン公爵
「……え?」
アクノマジョリーカ
「ただ――
相手が悪かっただけですの。
ベルリッタ王国ではなく、“私”を敵に回したのが。」
父の顔に絶望が浮かぶ。
その瞬間、ドンファムが一歩前に出た。
ドンファム
「エリルフィン公爵。
あなたの野望はここで終わりだ。
国王の名において、拘束する。」
公爵は抵抗する力もなく、膝から崩れ落ちた。
アクノマジョリーカ
「父上。どうか安心なさって。
あなたの領地は――私が守りますわ。」
そう告げる声は冷たかったが、その奥にわずかな哀しみがあった。
---
こうして――
悪女令嬢アクノマジョリーカは、
自らの計略をもって生家を制圧し、
ベルリッタ王国にとって最大の脅威を取り除いたのだった。
そして次回、最終話。
アクノマジョリーカとドンファム王子の未来が決まる。
ベルリッタ軍は国境を越え、エリルフィン公爵領へと雪崩れ込んだ。
行軍は驚くほど順調で、敵兵は散発的な抵抗すらまともにできない。
アクノマジョリーカは軍馬の上から全体を見渡し、静かに呟く。
アクノマジョリーカ
「ふふ……混乱していますわね。予想通りです。」
ドンファム
「というか、お前の実家……こんなに脆かったのか?」
アクノマジョリーカ
「父は、他国を侵略する“つもりだっただけ”の男ですもの。
やる気だけで侵略できるなら、苦労しませんわ。」
ドンファム
「辛辣だな……」
その時、先遣隊が駆け戻ってきた。
先遣隊
「報告します! 公爵軍は本陣を引き払い、公爵邸へ撤退した模様!
領都全体が混乱し、住民は避難を始めています!」
アクノマジョリーカ
「さて……父が逃げ込んだのなら、そのまま包囲します。
私たちが直接乗り込みますわ。」
ドンファム
「……会うのか? あの公爵に。」
アクノマジョリーカ
「当然でしょう。
“計略がすべて崩れた瞬間の顔”を見るために来たのですから。」
ドンファム
「お前、実は怖い女だよな……?」
アクノマジョリーカ
「褒め言葉として受け取っておきますわ。」
アクノマジョリーカの微笑に、ドンファムは小さく身震いした。
---
エリルフィン公爵邸。
重厚な扉を兵士たちが蹴破ると、奥の広間でエリルフィン公爵が震える手で剣を握っていた。
エリルフィン公爵
「アクノマジョリーカ……! 貴様……娘のくせに……!」
アクノマジョリーカは堂々と歩いてきた。
その歩みは、もはや“令嬢”ではなく“勝利を確信した将”のものだった。
アクノマジョリーカ
「父上こそ……娘を侵略の道具に使ったこと、覚悟はできているのでしょうね?」
エリルフィン公爵
「……なぜだ! なぜベルリッタ側についた!
お前を送り込んだのは、ベルリッタを内部から崩すためだぞ!」
アクノマジョリーカ
「それが愚かだと言っているのですわ。
殿下は利用できるほど浅い人物ではありません。
そして――
父上の計略は、最初から私が粉砕するつもりでいましたの。」
エリルフィン公爵
「娘が……父に牙をむくというのか……!」
アクノマジョリーカ
「違いますわ。
父が先に、娘を切り捨てたのです。」
公爵は言葉を失う。
アクノマジョリーカは一歩、また一歩と父へ近づいた。
その瞳には怒りではなく――冷たい決意だけが宿っていた。
アクノマジョリーカ
「ベルリッタへの侵略を企て、娘を政治の駒として売り、
最後は自分だけ逃げ延びようとする。
そんな男に、公爵領を任せておけません。」
エリルフィン公爵
「……アクノ……お前は、本当に……私の娘なのか?」
アクノマジョリーカ
「ええ。
“あなたが見捨てた娘”が、こうして帰ってきたのです。」
沈黙が落ちる。
公爵の手から、カラン……と剣が落ちた。
エリルフィン公爵
「私は……間違っていたのか……?」
アクノマジョリーカ
「いいえ。
父上の計略は間違っていませんでしたわ。」
エリルフィン公爵
「……え?」
アクノマジョリーカ
「ただ――
相手が悪かっただけですの。
ベルリッタ王国ではなく、“私”を敵に回したのが。」
父の顔に絶望が浮かぶ。
その瞬間、ドンファムが一歩前に出た。
ドンファム
「エリルフィン公爵。
あなたの野望はここで終わりだ。
国王の名において、拘束する。」
公爵は抵抗する力もなく、膝から崩れ落ちた。
アクノマジョリーカ
「父上。どうか安心なさって。
あなたの領地は――私が守りますわ。」
そう告げる声は冷たかったが、その奥にわずかな哀しみがあった。
---
こうして――
悪女令嬢アクノマジョリーカは、
自らの計略をもって生家を制圧し、
ベルリッタ王国にとって最大の脅威を取り除いたのだった。
そして次回、最終話。
アクノマジョリーカとドンファム王子の未来が決まる。
0
あなたにおすすめの小説
不機嫌な侯爵様に、その献身は届かない
翠月 瑠々奈
恋愛
サルコベリア侯爵夫人は、夫の言動に違和感を覚え始める。
始めは夜会での振る舞いからだった。
それがさらに明らかになっていく。
機嫌が悪ければ、それを周りに隠さず察して動いてもらおうとし、愚痴を言ったら同調してもらおうとするのは、まるで子どものよう。
おまけに自分より格下だと思えば強気に出る。
そんな夫から、とある仕事を押し付けられたところ──?
出来損ないと呼ばれた公爵令嬢の結婚
奏千歌
恋愛
[できそこないと呼ばれても][魔王]
努力をしてきたつもりでした。
でもその結果が、私には学園に入学できるほどの学力がないというものでした。
できそこないと言われ、家から出ることを許されず、公爵家の家族としても認めてもらえず、使用人として働くことでしか、そこに私の居場所はありませんでした。
でも、それも、私が努力をすることができなかった結果で、悪いのは私のはずでした。
私が悪いのだと、何もかもを諦めていました。
諦めた果てに私に告げられたことは、魔法使いとの結婚でした。
田舎町に住む魔法使いさんは、どんな方なのか。
大きな不安を抱え、長い長い道のりを歩いて行きました。
婚約破棄?結構ですわ。公爵令嬢は今日も優雅に生きております
鍛高譚
恋愛
婚約破棄された直後、階段から転げ落ちて前世の記憶が蘇った公爵令嬢レイラ・フォン・アーデルハイド。
彼女の前世は、ブラック企業で心身をすり減らして働いていたOLだった。――けれど、今は違う!
「復讐? 見返す? そんな面倒くさいこと、やってられませんわ」
「婚約破棄? そんなの大したことじゃありません。むしろ、自由になって最高ですわ!」
貴族の婚姻は家同士の結びつき――つまりビジネス。恋愛感情など二の次なのだから、破談になったところで何のダメージもなし。
それよりも、レイラにはやりたいことがたくさんある。ぶどう園の品種改良、ワインの販路拡大、新商品の開発、そして優雅なティータイム!
そう、彼女はただ「貴族令嬢としての特権をフル活用して、人生を楽しむ」ことを決めたのだ。
ところが、彼女の自由気ままな行動が、なぜか周囲をざわつかせていく。
婚約破棄した王太子はなぜか複雑な顔をし、貴族たちは彼女の事業に注目し始める。
そして、彼女が手がけた最高級ワインはプレミア化し、ついには王室から直々に取引の申し出が……!?
「はぁ……復讐しないのに、勝手に“ざまぁ”になってしまいましたわ」
復讐も愛憎劇も不要!
ただひたすらに自分の幸せを追求するだけの公爵令嬢が、気づけば最強の貴族になっていた!?
優雅で自由気ままな貴族ライフ、ここに開幕!
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
今さら遅いと言われる側になったのは、あなたです
有賀冬馬
恋愛
夜会で婚約破棄された私は、すべてを失った――はずだった。
けれど、人生は思いもよらない方向へ転がる。
助けた騎士は、王の右腕。
見下されてきた私の中にある価値を、彼だけが見抜いた。
王城で評価され、居場所を得ていく私。
その頃、私を捨てた元婚約者は、転落の一途をたどる。
「間違いだった」と言われても、もう心は揺れない。
選ばれるのを待つ時代は、終わった。
『お前とは結婚できない』と婚約破棄されたので、隣国の王に嫁ぎます
ほーみ
恋愛
春の宮廷は、いつもより少しだけざわめいていた。
けれどその理由が、わたし——エリシア・リンドールの婚約破棄であることを、わたし自身が一番よく理解していた。
「エリシア、君とは結婚できない」
王太子ユリウス殿下のその一言は、まるで氷の刃のように冷たかった。
——ああ、この人は本当に言ってしまったのね。
すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
水川サキ
恋愛
家族にも婚約者にも捨てられた。
心のよりどころは絵だけ。
それなのに、利き手を壊され描けなくなった。
すべてを失った私は――
※他サイトに掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる