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6-4 第二王子からの求婚爆弾
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6-4 第二王子からの求婚爆弾
──その日の夜。
クロフォード邸の客間には、平穏という名の甘い幻が漂っていた。
ミリアはソファに沈み込み、深い深い安堵のため息をついていた。
「……やっと……解放されたのね……」
言葉にするだけで胸が震える。
あの地獄ルート、原作世界の強制力に背骨まで持っていかれるような毎日。
王子の暴走、夜イベント、全国民への羞恥公開。
それらが“婚約破棄成立”というたった一言で全部終わったのだ。
(私は今日から……!
通行人Aでも、村娘1でも、道端の石ころ1でも……何でもいい!
ただの背景に戻れるのよ!!)
ミリアは天を仰いだ。
幸福とは、静けさの中にある。
やっとそれを取り戻せたのだ。
「……さあ、今日から陰キャ生活スタートですわ!」
自分で言ってちょっと元気が出た。
そのとき──客間の扉がノックされた。
「ミリア様、失礼いたします」
「……侍女A? どうしました?」
侍女Aは、なぜか両手いっぱいの巨大な花束を抱えていた。
その量たるや、第一王子が送り付けてきていた大量花束の、ちょうど二倍はありそうだ。
「……なんですの、その山は……?」
嫌な予感しかしない。
ミリアの右目がピクッと震える。
「ふぇ、フェリオン(第一王子)じゃないですよね……!?
あの人、もう別の婚約者がいるはずですけど……!?」
「はい。殿下ではありません」
「じゃあ誰? まさかストーカー?」
「いえ……差出人は──」
侍女Aは、手紙をミリアに差し出した。
封蝋には、見覚えのある紋章。
王家第二王子、レオナール殿下のものだ。
ミリアの血の気が、スゥゥゥッ……と引いた。
「…………うそ、でしょう……?」
「内容を読み上げてもよろしいですか?」
「やめて……でも聞かないと……なんか暴走しそうだし……
いえ、でも聞きたくない……でも……」
「では読みますね!」
「聞けって言ってない!!!」
しかし侍女Aは朗々と読み上げた。
『ミリア・クロフォード嬢へ
この度の件、兄の不始末により貴女が多大な被害を受けたこと、
王家の一員として深くお詫び申し上げる。
そして──
もしよければ、結婚を前提にお付き合い願いたい。
貴女の誠実さと芯の強さに、私はずっと魅力を感じていた。
どうか一度、お会いする機会をいただければと願っている。
第二王子 レオナール』
読み終わった瞬間──
「──強制力ぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」
ミリアの絶叫が屋敷中に炸裂した。
「だから言ったでしょおおおお!!
私は!空気でいいって!!
背景でいいって!!
そっとしとけって言ったのよぉぉぉぉぉ!!」
頭を抱えて床を転げまわる。
「なに!? 第一王子ルートから抜けたら第二王子ルートに自動移行する仕様なの!?
誰がそんな乙女ゲームみたいなルート選択を望んだのよ!!」
侍女Aはオロオロしながら花束を抱え直した。
「あ、あの……第二王子殿下は、とても誠実で高潔なお方と……宮廷で有名で……」
「知ってるわよ!!
だから余計に困るのよ!!
誠実で優しい人ほど、断ったときの罪悪感が重たいのよ!!
なんでこう!私の人生はハードモードを極めようとするの!!」
ミリアは頭を抱え、壁に額を押し付け、震える声で叫んだ。
「モブでいたい……ただのモブでいいのに……
なんでみんな私を主役にしようとするの……?
私、そんなスペックないのに……!!」
侍女Aはそっと背中を撫でた。
「ミリア様……強制力は……ミリア様が思うより強大かと……」
「知ってる!!!
知ってるわよぉぉぉぉぉ!!!!
でもお願いだから、せめて休んでぇぇぇぇぇぇ!!
モブは放置してくれていいのよぉぉぉぉ!!」
彼女の絶叫が夜のクロフォード邸に響き渡る。
こうして──
婚約破棄で自由を手に入れたはずのミリアに、
新たなフラグ「第二王子求婚ルート」が強制発生したのであった。
(強制力「仕事しました」)
「仕事すんなぁぁぁぁぁぁぁ!!」
──END(でも続編の匂いしかしない)
──その日の夜。
クロフォード邸の客間には、平穏という名の甘い幻が漂っていた。
ミリアはソファに沈み込み、深い深い安堵のため息をついていた。
「……やっと……解放されたのね……」
言葉にするだけで胸が震える。
あの地獄ルート、原作世界の強制力に背骨まで持っていかれるような毎日。
王子の暴走、夜イベント、全国民への羞恥公開。
それらが“婚約破棄成立”というたった一言で全部終わったのだ。
(私は今日から……!
通行人Aでも、村娘1でも、道端の石ころ1でも……何でもいい!
ただの背景に戻れるのよ!!)
ミリアは天を仰いだ。
幸福とは、静けさの中にある。
やっとそれを取り戻せたのだ。
「……さあ、今日から陰キャ生活スタートですわ!」
自分で言ってちょっと元気が出た。
そのとき──客間の扉がノックされた。
「ミリア様、失礼いたします」
「……侍女A? どうしました?」
侍女Aは、なぜか両手いっぱいの巨大な花束を抱えていた。
その量たるや、第一王子が送り付けてきていた大量花束の、ちょうど二倍はありそうだ。
「……なんですの、その山は……?」
嫌な予感しかしない。
ミリアの右目がピクッと震える。
「ふぇ、フェリオン(第一王子)じゃないですよね……!?
あの人、もう別の婚約者がいるはずですけど……!?」
「はい。殿下ではありません」
「じゃあ誰? まさかストーカー?」
「いえ……差出人は──」
侍女Aは、手紙をミリアに差し出した。
封蝋には、見覚えのある紋章。
王家第二王子、レオナール殿下のものだ。
ミリアの血の気が、スゥゥゥッ……と引いた。
「…………うそ、でしょう……?」
「内容を読み上げてもよろしいですか?」
「やめて……でも聞かないと……なんか暴走しそうだし……
いえ、でも聞きたくない……でも……」
「では読みますね!」
「聞けって言ってない!!!」
しかし侍女Aは朗々と読み上げた。
『ミリア・クロフォード嬢へ
この度の件、兄の不始末により貴女が多大な被害を受けたこと、
王家の一員として深くお詫び申し上げる。
そして──
もしよければ、結婚を前提にお付き合い願いたい。
貴女の誠実さと芯の強さに、私はずっと魅力を感じていた。
どうか一度、お会いする機会をいただければと願っている。
第二王子 レオナール』
読み終わった瞬間──
「──強制力ぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」
ミリアの絶叫が屋敷中に炸裂した。
「だから言ったでしょおおおお!!
私は!空気でいいって!!
背景でいいって!!
そっとしとけって言ったのよぉぉぉぉぉ!!」
頭を抱えて床を転げまわる。
「なに!? 第一王子ルートから抜けたら第二王子ルートに自動移行する仕様なの!?
誰がそんな乙女ゲームみたいなルート選択を望んだのよ!!」
侍女Aはオロオロしながら花束を抱え直した。
「あ、あの……第二王子殿下は、とても誠実で高潔なお方と……宮廷で有名で……」
「知ってるわよ!!
だから余計に困るのよ!!
誠実で優しい人ほど、断ったときの罪悪感が重たいのよ!!
なんでこう!私の人生はハードモードを極めようとするの!!」
ミリアは頭を抱え、壁に額を押し付け、震える声で叫んだ。
「モブでいたい……ただのモブでいいのに……
なんでみんな私を主役にしようとするの……?
私、そんなスペックないのに……!!」
侍女Aはそっと背中を撫でた。
「ミリア様……強制力は……ミリア様が思うより強大かと……」
「知ってる!!!
知ってるわよぉぉぉぉぉ!!!!
でもお願いだから、せめて休んでぇぇぇぇぇぇ!!
モブは放置してくれていいのよぉぉぉぉ!!」
彼女の絶叫が夜のクロフォード邸に響き渡る。
こうして──
婚約破棄で自由を手に入れたはずのミリアに、
新たなフラグ「第二王子求婚ルート」が強制発生したのであった。
(強制力「仕事しました」)
「仕事すんなぁぁぁぁぁぁぁ!!」
──END(でも続編の匂いしかしない)
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