異世界転職 重機を操るインフラクイーン ‐婚約破棄元婚約者 重機で押しつぶします みなさんやっておしまいなさい‐

しおしお

文字の大きさ
9 / 32
第3章:屋敷まるごとスマート化計画

9話 「この世界の夜も、明るくして差し上げますわ」

しおりを挟む
「この世界の夜も、明るくして差し上げますわ」

今日も私は地球側で目を覚まし、起きるなりコーヒーを片手に計画リストを見直す。

「今日は、いよいよルノー邸の廊下と台所にセンサー付きLEDライトを設置するわよ…!」

台車には、すでにUSBバッテリー駆動のLEDライトが山積み。夜でも明るく、安全で、エネルギー効率も良好。さらには、ソーラーパネルで昼のうちに充電しておけるという万能仕様だ。

電池は予備もたっぷり、バッテリーは昨晩充電済み。点灯確認もOK。完璧な準備を整えた私は、いつものように着替える。

「このジャージ姿のままゲートを通るのは、二度とごめんですわ……」

しっかりと貴族らしいドレスに着替え、異世界用バッグを抱えた私は、アパートのリビングの一角で異世界へのゲートを開いた。

ゆらりと空間が揺れ、空間がひらく。私は台車ごと異世界アートランド王国へと足を踏み入れる。

* * *

ルノー家の私室に到着するやいなや、荷物の確認を終え、すぐさま作業に取りかかった。

最初の設置場所は、邸内でも特に暗く、使用人たちが夜中に躓きがちな西側の廊下だ。

「それでは、設置開始よ」

取り出したのは、センサー付きLEDライト。薄暗い廊下に小さな脚立を立て、私は慣れた手つきで灯具を取り付けていく。

ちょうど通りかかったリアンナが、思わず立ち止まる。

「お、お嬢様、まさかまた……作業を?」

「ええ。今回は夜道対策。人が近づけば灯る魔法のような灯り、設置していきますの」

私の手元でパチリと取り付けが完了し、センサーが起動。試しに数歩下がってから進むと――

パッ。

灯りが、まるで歓迎するかのようにふわりと灯った。

「うわぁ……本当に魔法みたい……!」

「この世界では、光はとても貴重ですからね。これで、使用人たちが夜中に転んでしまう心配も減りますわ」

リアンナは感動の面持ちで頷いた。

「お嬢様、天才ですわ……!」

「ふふん♪ もっと褒めてもよくてよ?」

* * *

続いて向かったのは台所。ここは、シェフたちが早朝から深夜まで立ち働く、屋敷の心臓部だ。

「こんな場所こそ、照明の恩恵が必要ね」

設置場所を確認し、2つのセンサーライトを手早く取り付ける。動きに反応して灯るLEDが、まるで厨房を守る守護者のように光を放った。

そこへ料理長が現れた。

「お嬢様、これは……まさか灯りでございますか?」

「はい。早朝でも、夜遅くでも、スイッチ不要で灯るのです。しかも、電力は昼間に太陽の光で充電しておけますから、燃料も不要ですわ」

料理長の目が丸くなる。

「これで、夜中に食材を取りに来た者が転ぶ心配も……いや、それより料理中の影ができにくくなって、包丁を使う時も安全になりますな!」

「そこまで気づいていただけて嬉しいですわ。安全第一ですからね」

* * *

廊下と厨房へのライト設置を終える頃、既に屋敷中に噂が広がりはじめていた。

「西廊下が明るくなった!」「お勝手で灯りが自動で点いた!」

そして私は、中庭の一角にこっそりと設置したソーラーパネルを確認しに行った。

「あとは、この子たちがしっかり充電してくれれば……」

ソーラーパネルとポータブルバッテリーの組み合わせで、夜でも自立運転できる照明の完成だ。これにより、屋敷はついに“夜でも明るい空間”を手に入れることとなった。

 

「この世界の夜も、明るくして差し上げますわ」

私は呟きながら、澄んだ青空を見上げた。

その日――

アートランド王国ルノー公爵家は、世界で初めて自動照明を備えた屋敷となった。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

国外追放されたくないので第二王子の胃袋を掴んだら溺愛されました!

和栗かのこ
恋愛
乙女ゲームが趣味の社畜・美咲は、階段から落ちて乙女ゲーム「クレセント・ナイト」の悪役令嬢に転生してしまう。 悪役令嬢セセリアに転生した美咲は、国外追放される展開を変えるため、婚約者である第二王子の胃袋を掴むことを思いつく。

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

『生きた骨董品』と婚約破棄されたので、世界最高の魔導ドレスでざまぁします。私を捨てた元婚約者が後悔しても、隣には天才公爵様がいますので!

aozora
恋愛
『時代遅れの飾り人形』――。 そう罵られ、公衆の面前でエリート婚約者に婚約を破棄された子爵令嬢セラフィナ。家からも見放され、全てを失った彼女には、しかし誰にも知られていない秘密の顔があった。 それは、世界の常識すら書き換える、禁断の魔導技術《エーテル織演算》を操る天才技術者としての顔。 淑女の仮面を捨て、一人の職人として再起を誓った彼女の前に現れたのは、革新派を率いる『冷徹公爵』セバスチャン。彼は、誰もが気づかなかった彼女の才能にいち早く価値を見出し、その最大の理解者となる。 古いしがらみが支配する王都で、二人は小さなアトリエから、やがて王国の流行と常識を覆す壮大な革命を巻き起こしていく。 知性と技術だけを武器に、彼女を奈落に突き落とした者たちへ、最も華麗で痛快な復讐を果たすことはできるのか。 これは、絶望の淵から這い上がった天才令嬢が、運命のパートナーと共に自らの手で輝かしい未来を掴む、愛と革命の物語。

「不吉な黒」と捨てられた令嬢、漆黒の竜を「痛いの飛んでいけー!」で完治させてしまう

ムラサメ
恋愛
​漆黒の髪と瞳。ただそれだけの理由で「不吉なゴミ」と虐げられてきた公爵令嬢ミア。 死の森に捨てられた彼女が出会ったのは、呪いに侵され、最期を待つ最強の黒竜と、その相棒である隣国の竜騎士ゼノだった。 しかし、ミアが無邪気に放った「おまじない」は、伝説の浄化魔法となって世界を塗り替える。 向こう見ずな天才騎士に拾われたミアは、隣国で「女神」として崇められ、徹底的に甘やかされることに。 一方、浄化の源を失った王国は、みるみるうちに泥沼へと沈んでいき……?

【完結】伯爵令嬢の25通の手紙 ~この手紙たちが、わたしを支えてくれますように~

朝日みらい
恋愛
煌びやかな晩餐会。クラリッサは上品に振る舞おうと努めるが、周囲の貴族は彼女の地味な外見を笑う。 婚約者ルネがワインを掲げて笑う。「俺は華のある令嬢が好きなんだ。すまないが、君では退屈だ。」 静寂と嘲笑の中、クラリッサは微笑みを崩さずに頭を下げる。 夜、涙をこらえて母宛てに手紙を書く。 「恥をかいたけれど、泣かないことを誇りに思いたいです。」 彼女の最初の手紙が、物語の始まりになるように――。

ぽっちゃり侯爵と大食い令嬢の甘い婚約生活

piyo
恋愛
女性秘書官として働きながら、“大食い令嬢”の異名を持つダニエラ。そんな彼女に、上司のガリウスがひとつの縁談を持ってくる。 相手は名門オウネル侯爵家の当主、キーレン・オウネル。 大変ふくよかな体形の彼は、自分と同じように食を楽しんでくれる相手を探していた。 一方のダニエラも、自分と同じくらいの食欲のある伴侶を求めていたため、お茶会を通じて二人は晴れて婚約者となる。 ゆっくりと距離を縮め、穏やかに愛を育んでいく二人だが、 結婚式の半年前、キーレンが交易交渉のため国外へ赴くことになり―― ※なろうにも掲載しています

【完結】能力が無くても聖女ですか?

天冨 七緒
恋愛
孤児院で育ったケイトリーン。 十二歳になった時特殊な能力が開花し、体調を崩していた王妃を治療する事に… 無事に王妃を完治させ、聖女と呼ばれるようになっていたが王妃の治癒と引き換えに能力を使い果たしてしまった。能力を失ったにも関わらず国王はケイトリーンを王子の婚約者に決定した。 周囲は国王の命令だと我慢する日々。 だが国王が崩御したことで、王子は周囲の「能力の無くなった聖女との婚約を今すぐにでも解消すべき」と押され婚約を解消に… 行く宛もないが婚約解消されたのでケイトリーンは王宮を去る事に…門を抜け歩いて城を後にすると突然足元に魔方陣が現れ光に包まれる… 「おぉー聖女様ぁ」 眩い光が落ち着くと歓声と共に周囲に沢山の人に迎えられていた。ケイトリーンは見知らぬ国の聖女として召喚されてしまっていた… タイトル変更しました 召喚されましたが聖女様ではありません…私は聖女様の世話係です

バイトの時間なのでお先に失礼します!~普通科と特進科の相互理解~

スズキアカネ
恋愛
バイト三昧の変わり者な普通科の彼女と、美形・高身長・秀才の三拍子揃った特進科の彼。 何もかもが違う、相容れないはずの彼らの学園生活をハチャメチャに描いた和風青春現代ラブコメ。 ◇◆◇ 作品の転載転用は禁止です。著作権は放棄しておりません。 DO NOT REPOST.

処理中です...