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第2章:家電で貴族を驚かせてみた件
8話 「アイスですわ!プリンセスにお届けに参りましたの!」
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「アイスですわ!プリンセスにお届けに参りましたの!」
異世界でのスクーターによるアイス販売が予想以上の反響を呼んでいた。街の噂では、ルノー家のご令嬢が冷たくて甘い“魔法のような菓子”を売り歩いているとか、走る姿が雷鳴の如しなどと語られ、貴族たちの間でも話題になっていた。
そんな中、今日は特別な納品日。
プリンセス・ラポートとのお茶会が予定されており、彼女から「ぜひまたあの冷たいスイーツを」という正式な依頼があったのだ。これに応えない理由などあるはずもない。
「というわけで、出発しますわよ!」
ドレス姿にフルフェイスヘルメットという、いっそ清々しいスタイルで、私は冷凍庫を搭載したスクーターにまたがった。中にはドライアイスを敷き詰めたクーラーボックス、そして本命のアイスクリームが収められている。
冷気は完璧。あとは届けるだけ――そう思っていた、矢先だった。
◆ ◆ ◆
王宮の正門にスクーターが近づくと、案の定、門番たちが目を見開いて叫んだ。
「おいっ、止まれ!そこの怪しい乗り物!誰だ貴様!」
「まあ、これは予想通りですわね」
私はスクーターを止め、ヘルメットのシールドを上げずに応じた。
「プリンセス・ラポート様に、冷たいスイーツの納品に参りました。ご注文を頂いておりますの」
「ふざけるな!このような鉄の獣に乗って……そのヘルムを取れ!」
「……ヘルムではありませんのだけれど」
しぶしぶヘルメットを脱いで顔を見せた瞬間、門番の顔色が変わった。
「ル、ルノー公爵令嬢!? 大変、失礼いたしましたっ!」
二人の門番は互いに顔を見合わせ、次の瞬間には反射的に門を全開にしていた。
「そのままお通りください!ノンストップでどうぞ!」
「ありがとうございます。では、行ってまいりますわ」
私はシールドを戻し、エンジンをふかして再び走り出した。
以降――この王宮において、“フルフェイスヘルメットにドレス姿”の人物は、顔パスとなった。
奇妙な格好であっても、そこには“結果”と“信頼”があるからこそだ。
◆ ◆ ◆
ラポート姫の私室では、既にティーテーブルが整えられ、姫自身が私の到着を心待ちにしていた。
「アルピーヌ様!来てくださって嬉しいですわ。まさか本当に、あのスイーツを再び届けてくださるなんて」
「ええ、もちろんです。ご注文の品、間違いなく冷たいままお持ちしましたわ」
私は冷凍庫から、丁寧に保冷材でくるんだアイスを取り出し、ガラスの器に盛り付ける。姫の目が一段と輝いた。
「きれい……まるで宝石のようですわ」
「冷たくなっておりますので、口に入れる際はご注意くださいませ」
姫は小さなスプーンで一口すくい、それを口元へ運ぶ。そして――
「ひゃっ……つめたっ、でも――」
瞳が一層輝いた。
「とてもおいしいですわ!」
◆ ◆ ◆
その後のお茶会は、アイスと音楽に包まれた和やかな時間となった。
私はCDプレイヤーを起動し、姫のお気に入りになりつつあるクラシックを流しながら、地球での出来事や新しいスイーツ候補について語る。もちろん、異世界における“地球”の存在はあくまで“遠い国の話”として伝えている。
「次は、季節のフルーツを使ったジェラートなんていかがでしょう?」
「すてきですわ!アイスの世界にも、四季があるのですね」
“アイスに四季”――それを文化として広めることができるのなら、私の使命も悪くない。
こうして、プリンセス・ラポートとの絆はさらに深まり、冷たいスイーツと不思議な乗り物にまつわる令嬢の物語は、またひとつ、王都に語り継がれることとなった。
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異世界でのスクーターによるアイス販売が予想以上の反響を呼んでいた。街の噂では、ルノー家のご令嬢が冷たくて甘い“魔法のような菓子”を売り歩いているとか、走る姿が雷鳴の如しなどと語られ、貴族たちの間でも話題になっていた。
そんな中、今日は特別な納品日。
プリンセス・ラポートとのお茶会が予定されており、彼女から「ぜひまたあの冷たいスイーツを」という正式な依頼があったのだ。これに応えない理由などあるはずもない。
「というわけで、出発しますわよ!」
ドレス姿にフルフェイスヘルメットという、いっそ清々しいスタイルで、私は冷凍庫を搭載したスクーターにまたがった。中にはドライアイスを敷き詰めたクーラーボックス、そして本命のアイスクリームが収められている。
冷気は完璧。あとは届けるだけ――そう思っていた、矢先だった。
◆ ◆ ◆
王宮の正門にスクーターが近づくと、案の定、門番たちが目を見開いて叫んだ。
「おいっ、止まれ!そこの怪しい乗り物!誰だ貴様!」
「まあ、これは予想通りですわね」
私はスクーターを止め、ヘルメットのシールドを上げずに応じた。
「プリンセス・ラポート様に、冷たいスイーツの納品に参りました。ご注文を頂いておりますの」
「ふざけるな!このような鉄の獣に乗って……そのヘルムを取れ!」
「……ヘルムではありませんのだけれど」
しぶしぶヘルメットを脱いで顔を見せた瞬間、門番の顔色が変わった。
「ル、ルノー公爵令嬢!? 大変、失礼いたしましたっ!」
二人の門番は互いに顔を見合わせ、次の瞬間には反射的に門を全開にしていた。
「そのままお通りください!ノンストップでどうぞ!」
「ありがとうございます。では、行ってまいりますわ」
私はシールドを戻し、エンジンをふかして再び走り出した。
以降――この王宮において、“フルフェイスヘルメットにドレス姿”の人物は、顔パスとなった。
奇妙な格好であっても、そこには“結果”と“信頼”があるからこそだ。
◆ ◆ ◆
ラポート姫の私室では、既にティーテーブルが整えられ、姫自身が私の到着を心待ちにしていた。
「アルピーヌ様!来てくださって嬉しいですわ。まさか本当に、あのスイーツを再び届けてくださるなんて」
「ええ、もちろんです。ご注文の品、間違いなく冷たいままお持ちしましたわ」
私は冷凍庫から、丁寧に保冷材でくるんだアイスを取り出し、ガラスの器に盛り付ける。姫の目が一段と輝いた。
「きれい……まるで宝石のようですわ」
「冷たくなっておりますので、口に入れる際はご注意くださいませ」
姫は小さなスプーンで一口すくい、それを口元へ運ぶ。そして――
「ひゃっ……つめたっ、でも――」
瞳が一層輝いた。
「とてもおいしいですわ!」
◆ ◆ ◆
その後のお茶会は、アイスと音楽に包まれた和やかな時間となった。
私はCDプレイヤーを起動し、姫のお気に入りになりつつあるクラシックを流しながら、地球での出来事や新しいスイーツ候補について語る。もちろん、異世界における“地球”の存在はあくまで“遠い国の話”として伝えている。
「次は、季節のフルーツを使ったジェラートなんていかがでしょう?」
「すてきですわ!アイスの世界にも、四季があるのですね」
“アイスに四季”――それを文化として広めることができるのなら、私の使命も悪くない。
こうして、プリンセス・ラポートとの絆はさらに深まり、冷たいスイーツと不思議な乗り物にまつわる令嬢の物語は、またひとつ、王都に語り継がれることとなった。
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