白い結婚のはずが、気づけば溺愛されていましたわ! 地味令嬢、辺境でスローライフを望んだのに国まで救ってしまう件

しおしお

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第2話 —追放? いいえ、自由ですわ—

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第2話 —追放? いいえ、自由ですわ—

王宮を後にしたミレイユは、
ゆっくりとした足取りで実家フロラン公爵家の門へと戻っていた。

──ただし、足取りがゆっくりなのは、
落ち込んでいるからでは決してない。

(はぁ……このまま帰宅したら、あとは自由な日々……!
午前中は読書、午後はお菓子作り、
夜は暖炉の前でのんびり……
あら、最高ではなくて?)

想像するだけで頬がゆるみそうになる。
だが、公爵家の門が近づくにつれ、しだいに現実に引き戻された。

玄関ホールに足を踏み入れた瞬間──
父と母、そして兄が勢揃いしていた。

「ミレイユ……貴様は……家の恥だ!」

父の怒鳴り声が、ホールに響き渡る。

(あ、やっぱり怒ってるわよねぇ……
まあ、想定内ですが)

ミレイユは深呼吸し、平然と一礼した。

「ただいま戻りました、お父様。お母様。お兄さま」

だが返ってきたのは冷たい言葉ばかりだった。

「王太子殿下に捨てられるとは!」
「うちの評判が地に落ちたわ……!」
「まったく、お前のような地味で冴えない娘など──」

罵声が次々に飛んでくる。

ミレイユは……
笑いそうになった。

(ごめんなさい……!
自由が嬉しすぎて、怒られれば怒られるほど笑顔になってしまいそう……!
いけませんわ、真顔、真顔……!)

ぐっと口元を引き締めて、なんとか耐える。

母が泣き声で詰る。

「王太子妃になれるはずだったのに……
どうしてもっと華やかにできなかったの?」

「申し訳ございません。
ですが私、もう“王太子妃教育”にこりごりですの」

つい本音が口からスルッと出てしまい、
家族が一瞬ぽかんとする。

兄は苛立ったように手を振った。

「もういい!
家の名誉のため、しばらく屋敷に入るな。
表を歩けば噂になる。
……半ば追放だと思え」

(はいきた追放! ありがとうございます!
でも……笑うな、ミレイユ。今笑ったら終わりよ……!)

なんとか真剣な表情を作り、ぺこりと頭を下げる。

「承知いたしました。
しばらく外で過ごしますわ」

家族は「反論しないのか?」という顔で固まった。

ふふっ。
するわけがないではないか。
だって──

これは私にとって“自由の切符”なのだもの!

屋敷を出て、門が閉まった瞬間。

ミレイユは、両手を胸の前でぎゅっと握りしめた。

(これでゆっくり!
お菓子作りと読書に時間を使えるわ!
朝から晩まで静かに暮らせるなんて最高……!)

雪のちらつく空を見上げながら、
ミレイユは久しぶりに心から深呼吸した。

「さあ、どこに家を借りましょうか……
暖炉があって、陽当たりがよくて……
甘いお菓子の香りが広がる、そんな素敵なお部屋……」

と──
そんな夢のような空想をしていたその時。

馬車が一台、ゆっくりと目の前に止まった。

御者が深々と頭を下げる。

「フロラン公爵令嬢ミレイユ様であられますか。
こちらに、お手紙をお届けに参りました」

「お手紙……?」

差し出された封筒には、
黒い封蝋で押された紋章が浮かんでいた。

──辺境公爵、ロヴェル・エルデの紋章。

(え、えええええ……!?
なぜ、辺境公爵様が私に……?)

雪の中で、ミレイユはぽつんと立ち尽くした。

その手紙の中身こそが、
彼女の人生を大きく変える“運命の白い結婚”の始まりだとは、
この時まだ知らなかったのであった。


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