白い結婚のはずが、気づけば溺愛されていましたわ! 地味令嬢、辺境でスローライフを望んだのに国まで救ってしまう件

しおしお

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第4話 —辺境への道と、不器用すぎる公爵—

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第4話 —辺境への道と、不器用すぎる公爵—

ミレイユが返事を送って数日後。
早朝の薄い光の中、彼女は辺境へ向かう馬車へと乗り込んだ。

王都の喧騒は遠く、
雪を含んだ冷たい風が、まだ見ぬ未来へ押し出すように吹き抜ける。

(今日から新生活……!
ああ、ついに念願の静かな日々が……!
お菓子も作れますし、読書三昧もできますし……
白い結婚バンザイ!)

うきうきが隠しきれない。

だが──道中は、予想外の連続だった。

◆道中、魔物の洗礼

道は次第に森が深まり、
ところどころ雪が積もっている。

と、そのとき。

「奥様、馬車が止まります。魔物だ」

御者の低い声が響いた。

「ま、魔物……?」

ミレイユの背中がぴん、と凍りつく。
馬車がゆっくりと止まり、護衛兵が剣を抜く音がする。

木立の陰から現れたのは──
黒い毛並みをした狼型の魔物。

(えっ、想像よりデカい!! 犬じゃない!
あれはワンちゃんカテゴリーに入らない!!)

震えそうになったが、なんとか毛布を抱えて深呼吸する。

護衛兵たちが魔物に向き合い、
しかしものの十秒足らずであっさり仕留めてしまった。

あまりの早さに、ミレイユはぽかんと目を丸くした。

「奥様、度胸がおありですね」

「へっ……? 私、何もしてませんけれど……?」

「普通の令嬢なら悲鳴のひとつ上げるところです。
奥様は落ち着いておられる」

(いや……単に固まってただけなんですが……?
むしろ声出なかったんですけど……?)

だが護衛兵は勝手に感心してくれる。

「さすがは辺境公爵の奥方にふさわしい。
お強い」

(え……ええ……?
なんだか違う方向に評価されている気がしますわ……)

そんな不思議な空気をまといながら、馬車は進み続けた。

◆ついに辺境公爵ロヴェルとの対面

夕暮れ。
白銀に染まる雪原の向こうに、黒い石造りの城が姿を現した。

(わあ……想像よりずっと……凛々しくて綺麗……!)

重厚で荘厳。
王都の華美さとは違う、力強い存在感。

到着すると、護衛長が馬車の扉を開いた。

「奥様、ロヴェル様がお迎えに」

ドキリと胸が跳ねた。

(は、初対面……!
落ち着いてミレイユ、あなたは白い結婚希望の令嬢……!
干渉なしの生活が目標……!
変なこと言わないように!)

意を決して馬車から降りた。

目の前に立つ男は、噂通りの雰囲気をまとっていた。

長身で、鋼のように引き締まった体躯。
冷たい冬空の下でも凍らない、暗い銀色の瞳。
顔立ちは整っているのに、感情が一切読めない。

……というか、石像のように微動だにしない。

(わわわ……無表情すぎません!?
怒ってる? 私なにかした??)

ロヴェルは口を開いた。

だがその声は、意外にも低く落ち着いた優しい音色だった。

「長旅、ご苦労だった。
……寒くはなかったか」

「えっ、えっと……はい、あの、わ、私……大丈夫で……す……」

緊張で噛みまくるミレイユ。

(なにこれ……! 石像みたいなのに声が優しい……!
ギャップがすごすぎるんですけど!?)

ロヴェルは表情を変えないまま小さくうなずく。

「……そうか。よかった」

(今、よかったって言いました!?
この人、もしかして不器用なだけ?
怒ってるどころか……優しい……?)

ロヴェルは続けた。

「……私たちの結婚は“契約”だ。
互いの自由を尊重し、干渉はしない。
その約束は必ず守る」

その宣言はまるで誓いのように重く、誠実だった。

ミレイユは胸が温かくなるのを感じた。

「……ありがとうございます。
わたくしも、その契約を大切にいたします」

数秒の沈黙。

ロヴェルは、わずかに──本当にわずかに、眉を緩めた。

「……歓迎する。ミレイユ」

名前を呼ばれただけで、心が跳ねた。

(か、勘違いしないのよミレイユ!
これは契約結婚なんだから!
これは“夫婦としての距離感”ではなくただの挨拶……挨拶……!)

心の中で何度も言い聞かせる。

だがロヴェルの瞳には
“この出会いを大切にしよう”
という静かな誠意が宿っていた。

それがまた、胸をくすぐった。

白い結婚。
干渉なしの契約。
そして──妙に優しい辺境公爵。

ミレイユの新しい人生は、
静かに、でも確実に動き始めていた。


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