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第8話 —ミルクティーの夜と、“名前呼び”の魔法—
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第8話 —ミルクティーの夜と、“名前呼び”の魔法—
暖炉増設工事が終わったその夜。
外は吹雪。
窓の外を白い雪が舞い、
静寂が辺境城を包んでいた。
ミレイユは昼間の出来事がまだ胸に残っていて、
心なしか落ち着かない。
(ロヴェル様……本当に優しい方でしたわ。
干渉しないと言いつつ、
私のことを気にかけてくださって……
なんだか……不思議な気持ちですわ……)
暖かくなった居室は、
まさに“天国”のようだった。
そこへ──
コン、コン。
控えめなノック。
「ミレイユ、入るぞ」
ロヴェルが木のトレイを片手に入ってきた。
湯気の立つミルクティーの香りが、
ふわりと部屋に広がる。
「よければ……一杯どうだ」
「えっ……ロヴェル様が淹れてくださったんですの?」
「ああ。
雪が強い夜は、温かい飲み物が良いと……
フィオナに教わった」
ミレイユは思わず微笑んだ。
(不器用……いえ、ぎこちないけれど……
こんな優しい気配りまで……)
ロヴェルは彼女の前にそっとカップを置いた。
ミルクティーは淡い琥珀色。
雪国の夜に、ほっと灯った小さな温もりのよう。
二人は向かい合って、
静かに湯気の向こうに視線を交わした。
とても穏やかで、
あたたかくて、
今までミレイユが知らなかった時間だった。
◆微妙にぎくしゃく……でも心地よい時間
「……あの……ロヴェル様。
本日は……いろいろとありがとうございました」
ミレイユが言うと、
ロヴェルはほんの少しだけ目線をそらした。
「……当然のことだ。
君が困っていたからしただけだ」
(ちょっと照れてない……?
いや、そんなはず……)
ミレイユの胸は小さく跳ねた。
静かな沈黙が流れる。
だが、その沈黙が不思議と苦しくない。
むしろ心地よい。
(白い結婚なのに……こんな時間、あっていいのかしら……)
雪が降る音だけが聞こえる。
やわらかく、優しい冬の音──。
◆ロヴェルの“決定的な失言”
やがて、ロヴェルはゆっくりカップを置いた。
そして。
ふと、自然に言った。
「……暖かいか、ミレイユ」
ミレイユはびくっ、と肩を震わせた。
(え……?
いま……名前……呼び捨て……?
呼び捨て……!?)
自分の名前を “契約の夫” に呼び捨てにされた、
それだけなのに。
胸の奥まで、
熱がひゅっと流れ込んでくるようだった。
ミレイユ
「は、はいっ……! あ、あの、その……!
……暖かいですわ!」
(わ、私、なに慌ててるの!?
落ち着いて、落ち着いて私!
これはただの確認!
ただの“温度確認”よ!!
名前呼び捨てなんて、きっと偶然……偶然……)
ロヴェルは固まった。
そして──
耳まで赤く染まった。
「……す、すまない。
今のは……その……呼び捨てにしたつもりでは……いや、その……」
珍しく、言葉を噛んだ。
ミレイユ(心の声)
(なにこの“純度100%の不器用”!?
かわ……いや、かわいいって思っちゃだめ!!
これは白い結婚!
干渉しない、互いに自由!!
気を強く持って、私!!)
ロヴェルは咳払いをして話を戻そうとする。
「……その……
雪が強い夜は冷える。
……身体を冷やさぬよう、気をつけてくれ」
その言い方が、
まるで“恋人の気遣い”みたいで──
ミレイユの胸がまた跳ねた。
「……はい。
あの……ロヴェル……様も……」
危うく呼び捨てになりそうで、
慌てて語尾を濁す。
ロヴェルは少し目を伏せて頷いた。
「ありがとう」
小さく、けれど確かに優しい声だった。
◆そして夜がゆっくりと降りていく
二人はもう一杯ミルクティーを飲み、
そのまま少しだけ雑談した。
といっても──
ミレイユ(心の声)
(落ち着いて受け答えしてるように見えるけど……
内心ではずっと“名前呼び捨て”が頭に残ってる……
どうしましょう……思い出すたびに心臓が……)
ロヴェル(心の声)
(……なぜ私は名前で呼んだ?
いや……呼ぶべきではなかったのに……
だが……あれは……自然に……)
お互い気づいていないが──
どちらも真っ赤で、心臓バクバクだった。
けれど。
そのぎこちなささえ、
雪国の夜には不思議と温かかった。
こうして──
白い結婚のはずの二人は、
知らぬ間に小さな“恋の種”を芽生えさせていた。
ゆっくり、静かに。
雪の結晶が積もるように。
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暖炉増設工事が終わったその夜。
外は吹雪。
窓の外を白い雪が舞い、
静寂が辺境城を包んでいた。
ミレイユは昼間の出来事がまだ胸に残っていて、
心なしか落ち着かない。
(ロヴェル様……本当に優しい方でしたわ。
干渉しないと言いつつ、
私のことを気にかけてくださって……
なんだか……不思議な気持ちですわ……)
暖かくなった居室は、
まさに“天国”のようだった。
そこへ──
コン、コン。
控えめなノック。
「ミレイユ、入るぞ」
ロヴェルが木のトレイを片手に入ってきた。
湯気の立つミルクティーの香りが、
ふわりと部屋に広がる。
「よければ……一杯どうだ」
「えっ……ロヴェル様が淹れてくださったんですの?」
「ああ。
雪が強い夜は、温かい飲み物が良いと……
フィオナに教わった」
ミレイユは思わず微笑んだ。
(不器用……いえ、ぎこちないけれど……
こんな優しい気配りまで……)
ロヴェルは彼女の前にそっとカップを置いた。
ミルクティーは淡い琥珀色。
雪国の夜に、ほっと灯った小さな温もりのよう。
二人は向かい合って、
静かに湯気の向こうに視線を交わした。
とても穏やかで、
あたたかくて、
今までミレイユが知らなかった時間だった。
◆微妙にぎくしゃく……でも心地よい時間
「……あの……ロヴェル様。
本日は……いろいろとありがとうございました」
ミレイユが言うと、
ロヴェルはほんの少しだけ目線をそらした。
「……当然のことだ。
君が困っていたからしただけだ」
(ちょっと照れてない……?
いや、そんなはず……)
ミレイユの胸は小さく跳ねた。
静かな沈黙が流れる。
だが、その沈黙が不思議と苦しくない。
むしろ心地よい。
(白い結婚なのに……こんな時間、あっていいのかしら……)
雪が降る音だけが聞こえる。
やわらかく、優しい冬の音──。
◆ロヴェルの“決定的な失言”
やがて、ロヴェルはゆっくりカップを置いた。
そして。
ふと、自然に言った。
「……暖かいか、ミレイユ」
ミレイユはびくっ、と肩を震わせた。
(え……?
いま……名前……呼び捨て……?
呼び捨て……!?)
自分の名前を “契約の夫” に呼び捨てにされた、
それだけなのに。
胸の奥まで、
熱がひゅっと流れ込んでくるようだった。
ミレイユ
「は、はいっ……! あ、あの、その……!
……暖かいですわ!」
(わ、私、なに慌ててるの!?
落ち着いて、落ち着いて私!
これはただの確認!
ただの“温度確認”よ!!
名前呼び捨てなんて、きっと偶然……偶然……)
ロヴェルは固まった。
そして──
耳まで赤く染まった。
「……す、すまない。
今のは……その……呼び捨てにしたつもりでは……いや、その……」
珍しく、言葉を噛んだ。
ミレイユ(心の声)
(なにこの“純度100%の不器用”!?
かわ……いや、かわいいって思っちゃだめ!!
これは白い結婚!
干渉しない、互いに自由!!
気を強く持って、私!!)
ロヴェルは咳払いをして話を戻そうとする。
「……その……
雪が強い夜は冷える。
……身体を冷やさぬよう、気をつけてくれ」
その言い方が、
まるで“恋人の気遣い”みたいで──
ミレイユの胸がまた跳ねた。
「……はい。
あの……ロヴェル……様も……」
危うく呼び捨てになりそうで、
慌てて語尾を濁す。
ロヴェルは少し目を伏せて頷いた。
「ありがとう」
小さく、けれど確かに優しい声だった。
◆そして夜がゆっくりと降りていく
二人はもう一杯ミルクティーを飲み、
そのまま少しだけ雑談した。
といっても──
ミレイユ(心の声)
(落ち着いて受け答えしてるように見えるけど……
内心ではずっと“名前呼び捨て”が頭に残ってる……
どうしましょう……思い出すたびに心臓が……)
ロヴェル(心の声)
(……なぜ私は名前で呼んだ?
いや……呼ぶべきではなかったのに……
だが……あれは……自然に……)
お互い気づいていないが──
どちらも真っ赤で、心臓バクバクだった。
けれど。
そのぎこちなささえ、
雪国の夜には不思議と温かかった。
こうして──
白い結婚のはずの二人は、
知らぬ間に小さな“恋の種”を芽生えさせていた。
ゆっくり、静かに。
雪の結晶が積もるように。
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