白い結婚のはずが、気づけば溺愛されていましたわ! 地味令嬢、辺境でスローライフを望んだのに国まで救ってしまう件

しおしお

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第11話 —雪国の“聖女様”、気づかぬまま降臨す—

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第11話 —雪国の“聖女様”、気づかぬまま降臨す—

翌朝。
ミレイユが城下の市場へ視察に向かうと──
なぜか、周囲がそわそわしていた。

小さなざわめきが、
雪を踏む足音と一緒に広がっていく。

「……あの方が……辺境公爵夫人様?」

「ほら、あの整理術で倉庫を蘇らせたって噂の……!」

「保存食を改良してくれたおかげで、今年は冬越しが楽になるらしいぞ」

「なんというか……こう、光が見える……!」

ミレイユ
(……え? なんで皆さんキラキラした目で見てくるの……?
私、まだなんにもしてませんわよ!?
あ、いや……したかしら……ちょっと倉庫片付けただけ……?)

彼女がそう思っている間にも、領民の視線は増えるばかり。

そして──

◆領民A、突然の叫び

「公爵夫人様ぁああ!!
倉庫を救ってくださって……ありがとうございましたぁあ!!」

ミレイユ
「ひ、ひぃ!? あ、ありがとうございます!?」

領民B「聖女様のようなお方じゃ……」

領民C「きっと私たちの上に、神が遣わしたに違いない……」

領民D「まさか! 公爵様に笑顔をもたらした張本人だぞ!」

ミレイユ
(えっ……待って!?
もう話が変な方向へ飛躍してません!?
神って……聖女って……
私、ただの“スローライフしたい地味令嬢”ですわよ!?)

全力で否定したい。
でも、皆の眼差しは暖かくてまっすぐで、
とてもじゃないけど「違います!」とは言えない。

(う、嬉しい……けど……なんだか申し訳ない気が……)

すると、小さな女の子がミレイユの前に飛び出した。

「お、おくさま……これ、受け取ってください!」

差し出されたのは、
雪国特産の霜りんごを可愛く包んだ小袋。

「えっ……でも、これは……」

「お礼なんです!
お父さん、倉庫の仕事が楽になって帰りが早くなったの!
だから……ありがとうを言いたくて……!」

ミレイユは胸をぎゅっと掴まれたような気持ちになった。

(そんな……
私の“整理整頓のお遊び”が……
そんな風に役に立っていたなんて……)

「……ありがとうございます。大切にいただきますわ」

微笑むと、少女はぱあっと顔を輝かせて走り去った。

周囲の領民も涙ぐんでいる。

「やはり聖女様だ……!」

「心まで浄化される……!」

「公爵様が惚れ込むのも当然だ……!」

(え? 惚れ込む?)
ミレイユの脳が一瞬フリーズした。

(え!? 惚れ込む!?
え、え、え!? そんな事実ありました!?
契約結婚なのに!?
私、まだ名前呼び捨てられただけなのに!?
それは……その……甘酸っぱい事件だったけれども……!!)

慌てふためくミレイユの様子も、
領民たちには“恥じらう聖女”に見えたらしい。

「奥様……かわいらしい……」

「優しくて、控えめで……本物の祝福だ……」

もはや誰も止められない状態になっていた。

◆そしてロヴェルは──

その時。

「ミレイユ、ここにいたのか」

雪を踏みしめる音とともに
ロヴェルが現れた。

銀髪に雪の結晶をつけた姿は、
まさに“氷の公爵”。

領民たちが一斉に頭を下げる。

「公爵様、お疲れ様でございます!!」

ロヴェルは頷き、
ミレイユの手にさりげなく手袋をはめてくれた。

「手が冷たい。……もっと厚い手袋を持たせるべきだったな」

ミレイユ
「え、あ、そ、その……っ」

(なにこれ……なにこの“自然なスキンシップ”!?
昨日より距離が近くなってません!?
なんで……!?
スローライフのはずが……
恋愛フラグの速度が異常なんですけど!?)

その瞬間、領民たちの心は完全に決壊した。

「か、かかか、公爵様が奥様に触れた……!?」

「いや、触れただけじゃない!
優しく包み込むように手袋を……!」

「うちの殿下がこんなデレ方する日が来るなんて……!」

ロヴェル
「……? 何をざわめいているんだ?」

完全に自覚ゼロ。

その無自覚さがまた領民を震え上がらせた。

「奥様……やっぱり……本物だ……
この国の未来を変える……本物の方なんだ……」

ミレイユ
(ちょっと待って!?
未来とか本物とか……
理想のスローライフ、どんどん遠ざかっていきますわ!!)

彼女だけが、必死で“誤解の路線変更”を試みていた。

だがもう領民も家臣も、
“ミレイユ=救いの星”という確信が固まってしまっていた。

そしてミレイユ自身は、
ロヴェルの自然な優しさに
胸がドキッ……と鳴るのを止められずにいた。

(……どうしましょう。
……これ、本当に契約結婚……?)

──こうして、
ミレイユは知らぬ間に“領地の象徴”となり、
スローライフは静かに華やかな未来へ転がっていくのだった。

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