白い結婚のはずが、気づけば溺愛されていましたわ! 地味令嬢、辺境でスローライフを望んだのに国まで救ってしまう件

しおしお

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第10話 —“改善案”のつもりが領地の根幹を救ってしまう—

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第10話 —“改善案”のつもりが領地の根幹を救ってしまう—

翌朝。
ミレイユは昨夜まとめたメモを抱えて、
執務室へ向かった。

中にはロヴェルと側近たちが集まり、
地図の上に積もった問題を前に
険しい顔をしている。

領地の雪深い冬は、
どれだけ備蓄しても足りず、
輸送路は魔物が出て危険。
食料が尽きれば飢饉寸前。

重苦しい空気に、
ミレイユはそっと手を上げた。

「あの……少しだけ、
考えてきたことがあるのですが……」

家臣たち「奥様!?」「考え……?」

ロヴェルが静かに頷く。

「聞かせてくれ」

ミレイユは持参したメモを開き、
丁寧に、だが控えめに説明しはじめた。

◆ミレイユの“趣味レベル”の提案

「まず、倉庫の保存食は
塩と香草で加工すれば冬越しができますわ。
あと、粉食は水分を少なく仕上げれば
痛みにくいですの」

家臣A「ほ、保存技術……?」

家臣B「そんな使い方が……?」

ミレイユはさらにスラスラと続ける。

「それから、輸送路ですが──
魔物が出る場所は特定のルートに偏っています。
地図を見ますと、
実は安全地帯が“破線状”に繋がるんですのよ」

家臣C「安全地帯……?」

「はい。この線をつないで街道にすれば、
魔物との遭遇率は半減しますわ」

家臣全員「半減!?」

ミレイユは、
皆が驚く理由がわからないという表情で頷く。

「ええ。あと……」

メモをめくる。

「倉庫の在庫配置を
“出庫頻度の高い物を手前に”
“季節物は同じ棚に集める”
“記録は同じ形式に統一する”
という形にしますと──
管理の手間が三分の一に減りますの」

家臣D「三分の一……!?」

ミレイユは気軽に微笑んだ。

「これ、読書で覚えた商会の管理法ですの。
なかなか便利でしょう?」

側近たちは地図を見つめたまま動かない。

ロヴェルでさえ、
わずかに目を見開いていた。

(えっ……そんなに驚くこと……?
私、普通のことしか言ってないのだけれど……)

◆家臣たち、震える

「お、奥様……」
「これは……領地の問題そのものを……」
「根本から……改善できる……?」

家臣たちの声が震え始めた。

ミレイユは首を傾げる。

「ええ?
そんな大したことをしたつもりはありませんけれど……?」

ロヴェルは地図の上に手を置き、
低い声で言った。

「……これらの案がすべて実行できれば、
この冬の飢餓は避けられる。
街道を変更できれば、
春には交易も活発になる」

家臣たち
「奥様……やはり……天才……!」

「て、天才……!?
ち、違いますわ、わたくしそんな……
ただの……趣味の……!」

(ただのメモ書きのつもりだったんですの……
こんなことになるなんて……!)

ロヴェルは静かにミレイユを見る。

銀色の瞳が真っすぐ向けられ、
ミレイユは思わず息を飲んだ。

「ミレイユ。
……本当に、感謝する」

(や、やめて……そんな優しい声……
契約結婚ですのに……胸が変な感じに……)

「君のおかげで、この領地は……救われる」

その一言が
ミレイユの胸の奥深くに落ちた。

こそばゆくて、温かくて、
どうしていいかわからなくなる。

「い、いえ……わたくしは……
スローライフの延長で……少し考えただけで……」

「スローライフ……?」

家臣全員
「スローライフで、この改革規模……!?」

ミレイユ
「???」

こうして──
ミレイユは気づかぬうちに
領地改革の中心人物になってしまった。

本人は「趣味」のつもりで。
周囲は「救世主」だと思い込みつつ。

そのギャップは、
今後さらに“伝説級”の誤解を生むことになるのだった。

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