白い結婚のはずが、気づけば溺愛されていましたわ! 地味令嬢、辺境でスローライフを望んだのに国まで救ってしまう件

しおしお

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第24話 ―雪国の告白と、ほどける心―

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第24話 ―雪国の告白と、ほどける心―

吹雪の夜。
暖炉の火がぱちぱちと弾ける音だけが、
静かな室内に満ちていた。

ミレイユは、王都との縁を断つ決断をしたばかり。
胸の奥に、ようやく掴めた安堵が宿っていた。

(これで……私は本当に、辺境の人。
ここで、ここで生きていく……
ロヴェル様と、この領地の皆さんと一緒に……)

だが──
その背後から、そっと呼ばれる。

「……ミレイユ」

振り返った先。
ロヴェルは暖炉の明かりに照らされ、
銀色の瞳を少しだけ揺らしていた。

普段の彼なら見せない、
迷いにも似た影がそこにあった。

「少し……話がある」

ミレイユは小さく頷き、ロヴェルの隣に腰を下ろす。
けれど胸は、理由のわからぬまま高鳴っていた。

◆言えなかった言葉

沈黙が落ちる。

雪の音だけが聞こえる中、
ロヴェルはしばらく言葉を探すように目を伏せ──
やがて、ゆっくりと口を開いた。

「……王都からの命令が来た時、
私は……怒りを抑えられなかった」

ミレイユは瞬きする。

ロヴェルは続けた。

「君を奪われるかもしれないと……
その可能性だけで、胸が締め付けられた。
……私は、あんな感情を抱いたのは初めてだ」

ミレイユの心が、きゅっと鳴る。

ロヴェルの声はかすかに震えていた。

「干渉しないと約束したのに……
君のことを考えると……
その約束を守れる自信がなくなる。
……私が、怖かったのは……
君がいなくなることだ」

(……ロヴェル様……)

胸の奥が熱くなる。

何かがゆっくり、ほどけていく。

◆ミレイユの涙

ロヴェルは目を伏せたまま続ける。

「……君の料理が好きだ。
倉庫整理の才も……領地の人々に向ける優しさも……
ミレイユ、そのすべてが……
私の心に触れてしまう」

(そんな……
そんな風に思ってくださっていたなんて……)

ミレイユの視界が滲む。

「私のことを……そんな風に……
見ていてくださったのですか……?」

ロヴェルは驚いたように顔を上げた。
ミレイユの頬を伝う涙を見て、慌てたように手を伸ばす。

「泣かないでくれ……! 私は、ただ──」

「違いますの……! 嬉しいんです……!」

ミレイユは、震える指先で涙を拭いながら言った。

「私……自分の気持ちに気づきましたの……
ロヴェル様のことを……想っていたんだと……
離れたくなかったのは……私も同じです」

ロヴェルの瞳が驚きで揺れる。

火の赤が、銀の瞳に映り込む。

「ミレイユ……君は……」

「はい……私は……
ロヴェル様と“白い結婚”でいたいのではなく……
ロヴェル様と、ちゃんと……」

言いかけて、顔が熱くなる。

「……ちゃんと夫婦として、生きていきたいのですわ」

暖炉の火が、ぱち、と小さく弾けた。

外は雪。
その静寂の中で、二つの心が確かに重なった。

ロヴェルはそっとミレイユの手を握る。

大きくて、冷たいはずの手が、
驚くほど優しい温度で包み込んだ。

「……ありがとう、ミレイユ。
君がそう言ってくれたことが……
何よりも、嬉しい」

ミレイユの涙が再びこぼれ、
だがその涙は、あたたかい幸福のものだった。

その夜──
二人は初めて、
“契約ではない夫婦”の距離に立ったのだった。


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