「婚約破棄された令嬢ですが、何か?」

しおしお

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宮廷への招待

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アルシェナールの評判は、ついに宮廷にまで届くようになった。彼女の薬草学の知識と調合技術の素晴らしさは噂を呼び、貴族の間で「侯爵家を追放された令嬢が王都で成功している」という話が広まりつつあった。そしてある日、彼女の人生を大きく変える出来事が起きる。

その朝、薬草店が開店して間もない頃、一人の使者が店を訪れた。使者は宮廷で仕える執事のような身なりをしており、手には美しい装飾が施された封筒を持っている。彼は店内に入ると、丁寧に頭を下げた。

「アルシェナール・エルディナ様、こちらは王宮からの招待状です。」

「王宮からの招待状……?」

突然の出来事に、私は驚きを隠せなかった。使者は封筒を私に差し出しながら続けた。

「宮廷の公爵夫人が、あなたの調合した薬のおかげで体調が大幅に改善されたと聞いております。これを機に、宮廷にお越しいただき、他の貴族たちにもお力をお貸しいただければと考えております。」

私は一瞬、返事に詰まった。宮廷に行くということは、貴族社会の中心に再び足を踏み入れるということだ。それは、かつての婚約破棄や追放を思い出させるだけでなく、注目を集めるリスクも伴う。

「少し考えさせていただけますか?」

「もちろんです。しかし、お早めの返事をいただければ幸いです。」

使者は丁寧に一礼し、去っていった。私は招待状を手にしたまま、深い溜息をついた。

その日の夕方、仕事が一段落した頃、アシュレイが再び店を訪れた。彼に招待状のことを話すと、彼は少し考え込んでから口を開いた。

「君が宮廷に行くかどうかは、慎重に考えるべきだろうね。注目を浴びることにはリスクが伴うから。」

「分かっているわ。でも、これを断るのもまた問題を生む気がするの。」

アシュレイは私の言葉に頷きながら、穏やかな笑みを浮かべた。

「そうだね。君ならうまくやれると信じているよ。ただ、もし何かあれば僕が力になる。」

その言葉に、私は少しだけ心が軽くなった。彼がいてくれることが、今の私には大きな支えになっている。

数日後、私は意を決して宮廷へ向かうことにした。使者に返事を出し、指定された日に馬車で王宮へ向かった。王宮は私がかつて想像していた以上に豪華で、広大な庭園や壮麗な建物が目の前に広がっていた。

迎えに出てきたのは、公爵夫人だった。彼女は上品な笑みを浮かべながら私に近づき、手を取った。

「アルシェナール嬢、お越しいただきありがとうございます。あなたの薬のおかげで、私は本当に助けられましたわ。」

「そのようにおっしゃっていただけるのは光栄です。」

「さあ、中へお入りなさい。他の方々にもあなたを紹介したいの。」

公爵夫人に促され、私は王宮の中へ足を踏み入れた。その内部はまるで夢の中のような豪華さで、輝くシャンデリアと美しい装飾品が至る所に飾られている。

「ここが……宮廷……。」

私は思わず呟いた。かつて侯爵家の令嬢として貴族社会の一員だった頃にも、ここまで豪華な空間に足を踏み入れたことはなかった。

公爵夫人に連れられて大広間に入ると、多くの貴族たちが集まっていた。その中には、私の顔を見て驚いたような表情を浮かべる者もいれば、興味深そうに私を観察する者もいた。

「皆さま、こちらがアルシェナール・エルディナ嬢です。」

公爵夫人が紹介すると、場内がざわついた。彼女たちが何を話しているのかは分からなかったが、「追放された令嬢」という単語が聞こえてきたのは間違いなかった。

私は深呼吸し、冷静な笑みを浮かべて頭を下げた。

「本日はお招きいただきありがとうございます。至らない点もあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。」

その場が静まり返り、次第に拍手が起こった。それは歓迎の意味もあるが、どこか試すような意図が含まれているようにも感じた。

その夜、私は広間で次々と貴族たちと挨拶を交わした。彼らの中には、私を見下すような態度を取る者もいれば、心から好意的に接してくれる者もいた。だが、誰もが私の才能に興味を抱いていることは明らかだった。

一人の貴族が近づき、冷笑を浮かべながら話しかけてきた。

「噂通り、貴族らしい品の良さをお持ちだ。だが、追放された身分で宮廷に戻ってくるとは、随分と大胆だね。」

私は彼の挑発に乗らず、静かに微笑んだ。

「お褒めいただきありがとうございます。私の力が誰かのお役に立てるのであれば、それが何よりの喜びです。」

その答えに、彼は少しばかり驚いたような表情を浮かべ、その場を立ち去った。

夜が更け、私は宮廷の外に出た。馬車を待つ間、空を見上げると満天の星が輝いていた。宮廷という新たな舞台に立った私の未来はどうなるのか。その答えはまだ分からない。

「でも、私は私のやるべきことをやるだけ。」

静かに呟き、私は再び馬車に乗り込んだ。これが私の新しい挑戦の始まりだった。

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