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第1章:突然の異動と運命の出会い
1-4:同期との摩擦と理香の嫉妬
しおりを挟む相沢結衣の秘書課での生活が始まってから数週間が経った。業務には少しずつ慣れてきたが、依然としてプレッシャーは大きい。特に、西園寺蓮社長の完璧主義には毎日振り回されるばかりだった。そんな中、同期であり友人でもある椎名理香の存在が結衣をさらに悩ませることになる。
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その日、ランチタイムに営業部の同期たちと久しぶりに会った。彼女たちの中心には、いつも明るく場を盛り上げる理香がいた。
「結衣、秘書課ってどう? 西園寺社長のそばで働けるなんて、すごいじゃない!」
理香は目を輝かせながら声をかけてきた。結衣は少し困惑しながら答える。
「うん、確かにやりがいはあるけど、すごく大変だよ。ミスが許されないし、常に先を読んで動かないといけなくて……。」
結衣の言葉に、理香は軽く笑った。
「そんなこと言って、実は楽しいんじゃないの? 社長ってカッコいいんでしょ?」
「え、そんなことはないよ!」
結衣は慌てて否定したが、理香は興味津々の表情を崩さなかった。
「でもさ、社長って独身でしょ? 結衣、近くにいるんだからアピールするチャンスじゃない?」
理香の冗談めいた言葉に、結衣は苦笑いを浮かべるしかなかった。確かに蓮の見た目は整っているが、彼の厳しさや冷徹さを毎日目の当たりにしている結衣にとって、そんな気持ちを抱く余裕などなかった。
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ランチタイム後、理香が結衣に個別に声をかけてきた。
「結衣、少し話があるんだけど。」
二人きりになると、理香の態度は一変した。笑顔は消え、真剣な表情で結衣を見つめる。
「正直に言うけど、私、西園寺社長にずっと憧れてるの。」
「え……?」
結衣は言葉を失った。営業部時代、理香が社内の誰かに恋愛感情を抱いている話は聞いたことがなかった。
「結衣、社長の秘書として働いてるんだよね。だからこそ、お願いがあるの。」
理香の声にはどこか圧力が込められていた。
「お願いって……?」
結衣が戸惑いながら聞くと、理香は少しためらった後、こう言った。
「できれば、あまり社長と親しくしないでほしいの。」
「えっ?」
思わず聞き返した結衣の顔に、理香は微笑みを浮かべたが、その目には嫉妬の色が宿っていた。
「だって、結衣みたいな控えめな子でも、社長の目に留まるかもしれないじゃない。私はずっと彼に想いを寄せてきたの。だから、余計な波風は立てたくないの。」
その言葉に、結衣は困惑しながらも胸が痛んだ。理香の気持ちは理解できるが、結衣自身は蓮に特別な感情を抱いているわけではない。それに、自分が秘書としての仕事をすることは避けられない。
「理香、私はただ秘書として仕事をしてるだけだよ。社長に何か特別な感情があるわけじゃないし、理香が気にすることじゃ――」
言いかけたところで、理香が遮った。
「でもね、結衣。社長と毎日一緒にいるってだけで十分よ。他の女性社員も噂してるわよ? 『相沢さん、社長に近づいてるんじゃないか』って。」
その言葉に、結衣は息を呑んだ。自分がそんな風に見られているなんて考えたこともなかった。確かに、秘書課に来てから周囲の視線を感じることはあったが、それが噂となって広がっているとは思わなかった。
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その日の夕方、結衣は社長室に資料を届けに行った。蓮はいつものようにデスクに座り、書類に目を通していた。結衣が資料を置くと、蓮が顔を上げた。
「何か困っていることはあるか?」
突然の質問に、結衣は驚いた。
「え、いえ、特には……」
慌てて答えるが、蓮の鋭い目が結衣をじっと見つめる。
「顔に出ている。仕事以外のことで悩んでいるなら、早めに片付けておけ。」
短くそう言われたが、その声には冷たさだけでなく、どこか気遣いのようなものが感じられた。
結衣は迷ったが、秘書としての立場を守るため、理香とのことを口にするのはやめた。ただ「ありがとうございます」とだけ返し、社長室を後にした。
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その夜、結衣は帰宅後、自分の胸の中に溜まったモヤモヤを整理しようと試みた。理香との関係はこれからどうなるのだろう? 自分は秘書として蓮のために動いているだけなのに、それが周囲の誤解や嫉妬を生む。
「私は、ただ仕事をしているだけ……」
そう自分に言い聞かせながらも、蓮の「顔に出ている」という言葉が何度も頭の中で反芻された。それほど自分は表情に出ていたのか。そして、蓮が気づいたということは、彼が自分を見てくれている証拠なのか――。
少しだけ胸が高鳴る感覚に気づいた結衣は、その気持ちを振り払うように目を閉じた。
理香の嫉妬と周囲の誤解、そして自分自身の感情。この問題をどう乗り越えるべきか、結衣の心は揺れ続けていた。
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