社長室の蜜月

しおしお

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第3章:二人の関係の転機

3-2:プロジェクト成功と噂の渦

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結衣が秘書課で迎えた初の大プロジェクトは、ついに成功を収めた。西園寺蓮を中心に進められたこの一大プロジェクトは、社内外から高く評価され、結衣自身も達成感を覚えていた。しかし、その成功の裏で、結衣の周囲では新たな波紋が広がり始めていた。


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プロジェクトの最終会議が行われた日、結衣は会議室の片隅で、蓮が取引先に向けてプレゼンを行う様子を見守っていた。蓮の冷静で的確な言葉は取引先の役員たちを引き込み、用意された資料を指し示すたびに彼らの頷きが増していく。

結衣が作成した資料は、膨大な情報を整理し、見やすくまとめたものだった。蓮から厳しい指示を受け、何度も修正を繰り返したこの資料は、会議を成功へ導く大きな役割を果たしていた。

「素晴らしいプレゼンでした。これほど説得力のある内容は、我々の期待を遥かに超えるものです。」
取引先の代表者がそう述べ、笑顔で蓮と握手を交わした。

「相沢。」
プレゼンが終了し、資料を片付けようとしていた結衣に、蓮が短く呼びかけた。

「はい?」
結衣が振り向くと、蓮は静かに言った。

「よくやった。お前の資料が、このプロジェクトの成功を支えた。」

その言葉に、結衣の胸が熱くなった。彼の冷徹な指示に耐え、何度も壁にぶつかりながらも乗り越えてきた日々が報われた気がした。


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プロジェクトの成功を祝う打ち上げは、豪華なレストランで行われた。社員たちの間には安堵と喜びが広がり、乾杯の声が響き渡る。結衣も席に着き、食事を楽しみながら周囲の会話に耳を傾けていた。

「さて。」
その時、蓮がグラスを持ち、席から立ち上がった。レストランの賑やかな雰囲気が一瞬で静まり返る。

「今回のプロジェクトは、我々にとって非常に重要なものであった。この成功は、皆の努力の賜物だ。」
蓮は全員を見渡しながら、静かに話し始めた。社員たちは真剣な表情で彼の言葉を聞いている。

「特に、秘書課の相沢。」
突然名前を呼ばれ、結衣は驚きながら顔を上げた。

「彼女の努力と正確な仕事が、プロジェクトを支える重要な役割を果たした。この場を借りて感謝を伝えたい。」

蓮の言葉に、社員たちは一瞬の沈黙の後、拍手を送った。結衣は顔が赤くなるのを感じながら、頭を下げた。


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打ち上げが終わった後、秘書課の同僚たちが結衣に声をかけてきた。

「相沢さん、すごいね。社長から名前を出されるなんて、そう簡単なことじゃないよ。」
「うんうん、“お気に入り”なんじゃないの?」

冗談めいた言葉ではあったが、その裏に嫉妬や皮肉が含まれているのを結衣は感じ取った。

「そんなことないよ。ただ仕事を頑張っただけ。」
笑顔で否定するしかなかったが、その場に漂う微妙な空気が結衣の胸に重くのしかかった。


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翌日から、社内での視線が一層増えたのを結衣は感じた。特に同期の椎名理香は、打ち上げでの出来事を受け、明らかに態度を変えていた。理香は結衣に冷たく接するだけでなく、他の社員たちと話す際に結衣の名前を出して揶揄するような発言をすることも増えた。

昼休み、理香が結衣を呼び出してこう言った。

「結衣、昨日の打ち上げ、すごかったね。社長に褒められて。」
その声には、嫉妬と苛立ちが滲んでいた。

「理香、あれは仕事を評価してくれただけだよ。」
結衣は冷静に答えたが、理香は鋭い目で彼女を見つめた。

「本当にそれだけ? 私には違うように見えたけど。」

結衣は何も言い返せなかった。理香が抱く疑念は、結衣にとっても否定しきれないものがあったからだ。


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夕方、結衣が社長室にスケジュール確認のため訪れると、蓮がデスクから顔を上げた。

「相沢、噂については気にするな。」

結衣は驚きながら蓮を見つめた。彼が自分に向けられた噂について気づいているとは思わなかった。

「でも、皆さんの視線が気になって……」
結衣がそう言うと、蓮は真剣な表情で言った。

「噂などに惑わされるな。お前の仕事ぶりは俺が一番理解している。」

その言葉に、結衣の胸はじんと熱くなった。彼の信頼が、自分の不安を少しずつ溶かしていくのを感じた。


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プロジェクト成功の達成感と共に、蓮との距離は確実に近づいていた。しかし、それと同時に社内での噂や理香との確執が、結衣の心に影を落としていた。

「私は……どうしたらいいんだろう。」

結衣の心の中には、蓮への信頼と、自分自身の気持ちへの戸惑いが交錯していた。そんな彼女の揺れる想いが、これからの二人の関係に新たな転機をもたらすことになる――。

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