社長室の蜜月

しおしお

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第3章:二人の関係の転機

3-1:試練のプロジェクト

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新しいプロジェクトが発足し、西園寺グループ全体が活気づいていた。それは企業の未来を左右するほど重要な案件であり、社内のあらゆる部署が総力を挙げて取り組むものだった。秘書課も例外ではなく、相沢結衣はその対応に追われる日々が始まった。


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「この資料、明日までにまとめておけ。詳細なデータ分析が必要だ。」
蓮から指示を受けるたびに、結衣はデスクに戻って作業を進めた。スケジュール調整、会議の準備、データの確認――業務量は膨大で、通常の2倍以上の仕事量だった。

「相沢さん、大丈夫?」
長谷川が心配そうに声をかけてきた。

「はい、何とかやってみます。」
結衣はそう答えたが、内心では不安と疲労が積み重なっていた。

特に蓮の厳しさは、プロジェクトが進むにつれて一層際立っていた。彼はミスを許さず、完璧を求めた。資料のフォーマットが少しでも違えばすぐに指摘し、スケジュールに遅れが出そうになれば即座に対応を求める。

「君の役割は、俺の指示を先回りして実行することだ。それが秘書の仕事だ。」

蓮のその言葉に、結衣はプレッシャーを感じながらも、必死に食らいついていった。


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連日の残業が続き、結衣は体力的にも精神的にも追い詰められていた。帰宅後に机に向かうと、蓮の指示を思い返しながら資料の修正を行った。夜遅くまで続く作業に、ふと気を抜けば眠気が襲ってくる。

「これを乗り越えれば、もっと成長できるはず……」
結衣は自分に言い聞かせながら、重たい瞼をこじ開けた。


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プロジェクトの中盤に差し掛かった頃、蓮からさらなる厳しい指摘を受けた。

「この部分、数字が甘い。分析をやり直せ。」
その場で結衣はすぐに謝罪し、再度データを見直し始めたが、頭の中は混乱していた。

「何度も確認したはずなのに……」

蓮の冷たい視線が突き刺さるように感じ、涙が滲みそうになる。しかし、ここで弱音を吐くわけにはいかないと、結衣は自分を奮い立たせた。

「社長の期待に応えるためにも、絶対に頑張る。」
その思いが、結衣の疲れ切った体を動かし続けた。


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ある日、結衣が深夜まで資料作成に没頭していると、蓮が社長室から出てきた。彼は結衣のデスクに目を向けると、ゆっくりと近づいてきた。

「相沢、まだ帰っていないのか?」

「はい、この資料を早めに仕上げておきたくて……」
結衣が答えると、蓮はしばらく沈黙した後、低い声で言った。

「無理をしすぎるな。お前が倒れれば、俺が困る。」

その一言に、結衣は驚きと共に胸が熱くなるのを感じた。厳しい指示ばかりだと思っていた蓮が、自分を気遣ってくれるなんて思いもしなかった。

「ありがとうございます。でも、社長の役に立てるなら、頑張ります。」

蓮は結衣をじっと見つめた後、短く頷いてその場を去った。その背中を見送りながら、結衣は少しだけ肩の力が抜けた気がした。


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プロジェクトの最終段階が近づくにつれ、結衣の負担はさらに増していった。それでも、蓮の「期待している」という言葉を胸に、最後までやり遂げるという決意を固めていた。

会議の日、結衣が準備した資料が会議室のテーブルに並べられ、蓮がそれを手に取った。しばらく無言でページをめくる彼の姿を見て、結衣の心臓は緊張で高鳴る。

「完璧だ。」
蓮がそう言った瞬間、結衣は胸の中で大きな安堵を感じた。

プロジェクトは無事に進行し、成功への道筋が見えてきた。その達成感と共に、結衣は自分が成長できたことを実感した。


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しかし、この成功が二人の関係に波紋を投げかけることになる。蓮の厳しい指導を乗り越えた結衣は、少しずつ社内で注目を集める存在になり始めていた。その評価が高まるほど、周囲からの視線や噂話も増えていく。

「相沢さん、社長のお気に入りなんじゃない?」
そんな声が秘書課や営業部でささやかれるようになり、結衣はその状況に困惑することになる。


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プロジェクト成功という達成感の陰で、結衣の心には新たな悩みが生まれようとしていた。蓮との関係が変化していく中で、自分の気持ちが少しずつ揺れ動き始めているのを感じていた。

「私は……社長にどう思われているんだろう?」

結衣の中で湧き上がるその疑問は、これからの二人の関係に大きな転機をもたらすことになる。

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