婚約破棄されたけれど、頼りない第一王子様と結婚したら溺愛されました

しおしお

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第1話 婚約破棄と新たな婚約

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第1話 婚約破棄と新たな婚約

王宮大広間には、
王族と貴族たちの視線が張りつめていた。

その中央で――
第二王子ベータが声高に宣言する。

「イメルダ・ヴァルシュタイン!
 本日をもって、そなたとの婚約を破棄する!!」

ざわつく広間。

イメルダはゆっくりと振り返り、
静かに問い返した。

「理由を、お伺いしてもよろしいでしょうか?」

凛とした声。揺るぎない姿勢。

しかしベータは、
自分が“正しい側”であるかのように顎を上げた。

「お前は冷たい!
 妃としての気遣いもない!
 そなたとは……もうやっていけん!」

(……ほう。妃の務めをご存知で?)

イメルダは淡々と心の中で呟く。

その背後で、
小柄な少女が、わざとらしく震える声をあげた。

義妹、アルティシア。

「お義姉さま……申し訳ございません……
 わたくし、殿下に“イメルダ様は立派な方です”と
 いつも申し上げていたのですが……」

涙を浮かべ、胸に手を当てる。

貴族たちが同情の視線を向ける。
だが、イメルダにはそれが演技にしか見えなかった。

(……また、その手ですのね。
 弱いふりをして、周囲の同情を奪う)

ベータは胸を張る。

「アルティシアは常に優しく、気遣いができる!
 王子妃にふさわしいのは、彼女だ!」

ざわつく広間。

イメルダは淡々と尋ねる。

「では、私の“冷たさ”とは、
 具体的にどのような点で?」

ベータは一瞬、口を開いたまま固まった。

(……準備していませんわね)

「そ、それは……その……お前が……
 と、とにかく冷たいからだ!!」

イメルダは、微笑みに似たため息を漏らした。

(浅い……あまりにも浅はか)

アルティシアは、
イメルダの袖をつまむように泣き真似を続ける。

「わたくし、殿下が悩んでおられたのを知って……
 お義姉様に嫌われないよう、
 精一杯お支えしようと……」

「嘘をつくな、アルティシア!
 お前が“イメルダより私の方が妃に向いている”と――」

「わ、わたくしは申しておりません!!」

また始まった。
二人の“見苦しい言い合い”。

イメルダは一度目を閉じ、
(……この方は、本当に人として駄目ですわね)
と静かに思う。

そのとき――

「……あ、あの……」

おずおずと手が上がった。

第一王子、
アルファルファである。

緊張のあまり声が震えている。

「に、人の悪口を……公の場で言うのは……
 よ、よくないと思う……」

ベータ「黙れ兄上!」

アルファルファ「ひっ……!」

イメルダは思わず見つめた。

頼りない。
自信がない。
誰よりも臆病そう。

――でも。

その言葉は、誰よりも“誠実”だった。

イメルダは胸の奥で小さく思う。

(……こんなんでも、誠実な分……
 ベータ殿下より、はるかにマシですわね)

王はついに口を開いた。

「ベータの独断による婚約破棄、確かに承る。
 イメルダ・ヴァルシュタインよ……
 王家と公爵家の体面のため、
 アルファルファとの婚約を願いたい」

アルファルファ「えっ!? ぼ、僕が!?
 む、むりです……そんな……!」

その反応に、
イメルダはわずかにため息をつきつつも――
胸の奥のどこかで納得していた。

(頼りない方ですけれど……
 嘘や誤魔化しだけは、なさらない方……
 政略結婚なら……この誠実さは、むしろ救いですわ)

イメルダは深く礼をし、言った。

「畏まりました、陛下」

静かな声。
だが、その瞬間――

ベータの顔が、勝ち誇ったように歪む。

(ふん! 兄上に押しつけてやったわ)

だがそれこそが、
彼の不幸の始まりだった。

イメルダはふと隣のアルファルファを見る。

彼は不安げに視線を彷徨わせ、
自分の袖をぎゅっと握っていた。

本当に頼りない男――だが、

(……まあ、仕方ありませんわね。
 政略結婚ですもの。
 でも、誠実であることは……確かな“資質”ですわ)

イメルダはほんの少しだけ、
自分でも気づかないほど小さく、
アルファルファへ微笑んでいた。

こうして、政略で始まった新たな婚約は――
やがて、王国を揺るがす“絆”へと変わっていく。

──第1話・完──


---

次は第2話、

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