婚約破棄されたけれど、頼りない第一王子様と結婚したら溺愛されました

しおしお

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第2話 頼りなさすぎる婚約者殿下

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第2話 頼りなさすぎる婚約者殿下

婚約が正式に発表された三日後。
イメルダは王宮の応接室へと向かった。

(……さて。
 これが、これから私の夫となる方……)

心を整えて扉を開くと――

「ひっ……! あ、あの……こ、こんにちは……!」

椅子から飛び上がりそうな勢いで立ち上がるアルファルファがいた。

やたら姿勢が不自然。
やたら手が震えている。
やたら落ち着きがない。

(……まぁ予想通りですわね)

イメルダは優雅に一礼する。

「殿下、改めましてイメルダ・ヴァルシュタインでございます」

「は、はい! し、知っています……もちろん……!」

顔が真っ赤になっている。

座るよう促すと、
アルファルファは椅子の端にちょこんと座り、
なぜか背筋を棒のように固くしていた。

沈黙。

さらに沈黙。

イメルダは内心で額に手を当てる。

(……会話が続きませんわ)

仕方なく、イメルダが切り出した。

「殿下。わたくしどもは政略により結ばれた身。
 互いに誠実に務めを果たし、
 王家と公爵家の期待に応えましょう」

「は、はいっ!
 よ、よろしくお願いします……!」

(……だから緊張しすぎですわ、殿下)

イメルダは丁寧に説明を続ける。

「わたくしは殿下に干渉するつもりはございません。
 ご自由にお過ごしください」

するとアルファルファは慌てふためいた。

「い、いえっ!
 干渉……してほしいです……!
 ぼ、僕……何をすればいいのか……
 わ、わからなくて……!」

(………………)

イメルダの心に浮かんだのはただひとつ。

(頼りない……!)

息を吸い、落ち着いた声で尋ねる。

「では殿下、結婚後はどのようにしたいと
 お考えなのですか?」

アルファルファは机の上で手をもぞもぞ動かしながら、
小さな声で答えた。

「……け、結婚など……初めてなので……
 ど、どうすれば……あなたが……喜ぶのか……
 に、人に聞くのも、恥ずかしくて……」

顔は俯いているが、耳まで真っ赤だ。

イメルダは思わず固まる。

(……殿下?)

(いま……“あなたが喜ぶことを考えたい”と……?)

彼がイラつかせる原因は――
決して悪意ではなかった。

ただただ、不器用で、自信がなくて、
 でも“誠実に向き合おうとしている”。

イメルダは深く息を吐いた。

(……まぁ。
 こんなんでも、誠実な分、ベータよりはマシですわね)

「殿下の気持ちはわかりました。
 では少しずつ……お互いを知るところから始めましょう」

「し、知る!?
 ぼ、僕のことを……!?」

「ええ。婚約者として当然でしょう?」

アルファルファは、
椅子ごと倒れそうなほどの勢いで赤面した。

(……本当に大丈夫かしら、この方)

そう思いながらも、
イメルダは不思議な安心感を覚えていた。

誤魔化さない。
嘘をつかない。
良く見せようとして虚勢も張らない。

こんな男性を、
イメルダはこれまで見たことがなかった。


---

その日の帰り道。

イメルダはふと立ち止まり、
自分でも驚くほど穏やかな声で呟く。

「……慎重に、深く考える方……なんですのね、殿下は」

それはまだ気づかない。
この小さな認識が、
後に“ぞっこん献身”へ変わっていくことを。

──第2話・完──


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