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第3話 婚約者殿下、買い物で迷子になる
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第3話 婚約者殿下、買い物で迷子になる
婚約から一週間。
イメルダは宮廷からの正式な依頼で、式典用の衣装を準備することになった。
そして当然、婚約者であるアルファルファも同行する――はずだったのだが。
「ひっ、ひぃっ……あ、あの……
こんな華やかな店……僕、場違いでは……」
店の入口からすでに挙動不審である。
(……殿下。あなたは王家の嫡男ですわよ?)
イメルダは心の中で突っ込む。
高級ブティックの店員たちは、
殿下の来店と見て笑顔を貼りつけた。
「まあ、殿下! 本日は婚約者様とご来店だとか。
こちらのドレスなど、奥様にいかがでしょう?」
「え、ええっ!? お、おく……っ!?」
(ああ……もう。扱いが面倒ですわ)
店員は馴れた調子で次々とドレスを持ってくる。
「こちらの深紅のドレス、婚約者様によくお似合いかと」
「そ、そう……なのか……?」
「ええ、もちろんですとも。
さらにこちらの靴を合わせれば――」
(あ、この人……推し売りする気ですわね)
案の定、殿下は押されまくっている。
「で、殿下が決めてください」
イメルダは助け舟を出す。
「えっ!? ぼ、僕が!?
い、イメルダ様……何でも似合うから……!」
(それは褒め言葉として正しいけれど、決めてくれませんと)
店員がさらに畳みかける。
「では、やはりこちらのドレスを――」
「そ、そうだな……」
イメルダは、ぐっと腕を組んだ。
「殿下。店員に流されず、殿下自身のご意見を」
「ぼ、僕の……意見……?」
殿下はドレスを前に、右へ左へ視線を泳がせる。
——そしてなぜか突然、店の奥を指差した。
「こ、この店の……
お、お品物を……ぜ、全部……!」
「はっ!? 優柔不断のレベルが……おかしいですわ!!」
店員は目を輝かせる。
「全部!? 殿下、それは素晴らしい選択でございます!」
「ちょ、ちょっと待ってくださいまし!!」
イメルダは慌てて店員の前に立ちふさがった。
(この人は本当に……!
善意100%なのに……行動が極端すぎますわ!)
---
◆イメルダのため息
結局――
イメルダが丁寧に説明し、
アルファルファの「全部」はなんとか回避された。
店を出たとき、イメルダは疲労困憊だった。
「はぁぁ……」
「ご、ごめんなさい……
僕、イメルダ様を困らせましたよね……」
その顔は本気で落ち込んでいる。
イメルダは肩を落とした。
(……本当に憎めない方ですわ)
(誠実な分だけ、まだベータよりは百倍マシ……)
「殿下。迷うのは悪いことではありませんわ。
ただ、少しずつ……自信を持つ練習をいたしましょうね」
すると、殿下の顔がぱっと明るくなった。
「は、はいっ……!
イメルダ様となら……頑張れます!」
(む……妙に素直すぎますわ。
こういうところは可愛いですけど)
イメルダは何とも言えない胸の感覚を覚えながら、
殿下の隣を歩き続けた。
このときの彼女はまだ知らない。
――“彼女が本気で惚れ落ちる夜”がすぐそこまで迫っていることを。
---
婚約から一週間。
イメルダは宮廷からの正式な依頼で、式典用の衣装を準備することになった。
そして当然、婚約者であるアルファルファも同行する――はずだったのだが。
「ひっ、ひぃっ……あ、あの……
こんな華やかな店……僕、場違いでは……」
店の入口からすでに挙動不審である。
(……殿下。あなたは王家の嫡男ですわよ?)
イメルダは心の中で突っ込む。
高級ブティックの店員たちは、
殿下の来店と見て笑顔を貼りつけた。
「まあ、殿下! 本日は婚約者様とご来店だとか。
こちらのドレスなど、奥様にいかがでしょう?」
「え、ええっ!? お、おく……っ!?」
(ああ……もう。扱いが面倒ですわ)
店員は馴れた調子で次々とドレスを持ってくる。
「こちらの深紅のドレス、婚約者様によくお似合いかと」
「そ、そう……なのか……?」
「ええ、もちろんですとも。
さらにこちらの靴を合わせれば――」
(あ、この人……推し売りする気ですわね)
案の定、殿下は押されまくっている。
「で、殿下が決めてください」
イメルダは助け舟を出す。
「えっ!? ぼ、僕が!?
い、イメルダ様……何でも似合うから……!」
(それは褒め言葉として正しいけれど、決めてくれませんと)
店員がさらに畳みかける。
「では、やはりこちらのドレスを――」
「そ、そうだな……」
イメルダは、ぐっと腕を組んだ。
「殿下。店員に流されず、殿下自身のご意見を」
「ぼ、僕の……意見……?」
殿下はドレスを前に、右へ左へ視線を泳がせる。
——そしてなぜか突然、店の奥を指差した。
「こ、この店の……
お、お品物を……ぜ、全部……!」
「はっ!? 優柔不断のレベルが……おかしいですわ!!」
店員は目を輝かせる。
「全部!? 殿下、それは素晴らしい選択でございます!」
「ちょ、ちょっと待ってくださいまし!!」
イメルダは慌てて店員の前に立ちふさがった。
(この人は本当に……!
善意100%なのに……行動が極端すぎますわ!)
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◆イメルダのため息
結局――
イメルダが丁寧に説明し、
アルファルファの「全部」はなんとか回避された。
店を出たとき、イメルダは疲労困憊だった。
「はぁぁ……」
「ご、ごめんなさい……
僕、イメルダ様を困らせましたよね……」
その顔は本気で落ち込んでいる。
イメルダは肩を落とした。
(……本当に憎めない方ですわ)
(誠実な分だけ、まだベータよりは百倍マシ……)
「殿下。迷うのは悪いことではありませんわ。
ただ、少しずつ……自信を持つ練習をいたしましょうね」
すると、殿下の顔がぱっと明るくなった。
「は、はいっ……!
イメルダ様となら……頑張れます!」
(む……妙に素直すぎますわ。
こういうところは可愛いですけど)
イメルダは何とも言えない胸の感覚を覚えながら、
殿下の隣を歩き続けた。
このときの彼女はまだ知らない。
――“彼女が本気で惚れ落ちる夜”がすぐそこまで迫っていることを。
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