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第10話 蜜月のはじまり──変わり始める二人
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第10話 蜜月のはじまり──変わり始める二人
結婚から数日。
王城での新婚生活は、イメルダが想像していたものよりずっと甘く、そして静かに始まった。
だが──
その甘さに溺れそうになっているのは、どうやらイメルダだけではなかった。
◆
「い、イメルダ……その……
こ、これは……どうだろう……?」
朝食前。
アルファルファは、またもやクローゼットの前で固まっていた。
ずらりと並べられた多くの衣服の前で、
彼はまたしても例の“優柔不断の儀式”を始めている。
「……ど、どれがいいのか……わからない……」
イメルダは嘆息した。
(……まったく、この殿下は……)
昨夜の彼を思い出して顔が熱くなりつつも、
ここは妻として毅然とした態度を取るべきところだ。
「殿下。落ち着いてくださいませ」
「う、うん……」
イメルダは彼の前に立ち、ひとつひとつの服を比較した。
(昨夜は……あんなに頼もしかったのに……
朝になるとまるで別人ですわ……)
「殿下には、こちらがよく似合いますわ」
「そ、そうか……?」
「はい。殿下の上品さを最も引き立てます。
ほら、こちらのラインなど……」
イメルダがそっと袖に触れると、
アルファルファの耳がほんのり赤く染まった。
「……その……イメルダが選んでくれるなら……
それで……いい……」
彼の耳まで赤いのを見て、
イメルダは胸がぎゅんと鳴った。
(かわいい……)
あまりにも可愛いので、思わず吹き出しそうになる。
けれど同時に、胸の奥に温かい感情が広がった。
(この方を……支えたい。
わたくしが、しっかりしなくては……)
◆
朝食の場でも、殿下の“ダメっぷり”は健在だった。
「え、えぇと……これは……どう食べれば……?」
「殿下。これはナイフではなく、フォークで……」
「そ、そうか……はは……」
(……この方、本当に大丈夫かしら……)
公務に向かわされるたび、侍従たちは心配そうにひそひそと囁きあう。
「緊張のあまり、呼吸をするのを忘れなければよいが……」
「陛下の前で倒れなければよいが……」
(誠実で、優しくて、真面目……
それは素晴らしいけれど……
国王としては不安ですわ……)
しかし──イメルダは気づき始めていた。
アルファルファは、
慎重すぎるほど慎重で、
失敗を人一倍おそれ、
自分の言葉ひとつで誰かを傷つけることを何よりも怖れている。
それは裏を返せば──
「人の気持ちに深く寄り添える」という資質でもある。
(夜の殿下が……あれほど優しいのも……
そういうところから来ているのですわね……)
イメルダは微笑んだ。
◆
その日の午後、公務から戻ってきたアルファルファは、
ほんの少しだけ自信がついたような顔をしていた。
「い、イメルダ……今日……少し褒められた……」
「まあ!どなたに?」
「……陛下に……“よく考えて答えていた”と……」
胸を張るでもなく、威張るでもなく、
ただ照れくさそうに報告する夫に、
イメルダの胸はまたじんわり温かくなる。
「……殿下は、考え深い方ですもの。当然ですわ」
「そ、そうかな……?」
「ええ。殿下ほど誠実なお方は……ほかにいらっしゃいません」
アルファルファは、
その言葉を噛みしめるように目を伏せた。
そして──
そっと、イメルダの手を取り、
ためらいがちに指先へキスを落とした。
「……あ、あの……イメルダ……
き、君が……そばにいてくれると……ぼ、僕は……」
イメルダは、
その続きを聞く前に胸がいっぱいになってしまった。
「殿下。わたくしも……そばにおりますわ。ずっと」
自分でも驚くほど自然に、その言葉が出た。
◆
そしてその夜。
二人きりになった寝室で、
アルファルファは少しだけ勇気を出したように
イメルダを抱き寄せ──
静かに、丁寧に、彼女を愛した。
翌朝。
イメルダは、またも庭園でそっと呟く。
「まさか……昨夜はさらに……。
殿下って……本当に……ずるいですわ……」
「それに……あんなに優しいなんて……」
頬を両手で覆い、
イメルダはゆっくり座り込んだ。
(だめ……もう完全に……殿下のことばかり考えてしまう……)
彼女の胸に芽生えた想いは、
やがてアルファルファを大きく変えていく力へと変わっていく。
---
結婚から数日。
王城での新婚生活は、イメルダが想像していたものよりずっと甘く、そして静かに始まった。
だが──
その甘さに溺れそうになっているのは、どうやらイメルダだけではなかった。
◆
「い、イメルダ……その……
こ、これは……どうだろう……?」
朝食前。
アルファルファは、またもやクローゼットの前で固まっていた。
ずらりと並べられた多くの衣服の前で、
彼はまたしても例の“優柔不断の儀式”を始めている。
「……ど、どれがいいのか……わからない……」
イメルダは嘆息した。
(……まったく、この殿下は……)
昨夜の彼を思い出して顔が熱くなりつつも、
ここは妻として毅然とした態度を取るべきところだ。
「殿下。落ち着いてくださいませ」
「う、うん……」
イメルダは彼の前に立ち、ひとつひとつの服を比較した。
(昨夜は……あんなに頼もしかったのに……
朝になるとまるで別人ですわ……)
「殿下には、こちらがよく似合いますわ」
「そ、そうか……?」
「はい。殿下の上品さを最も引き立てます。
ほら、こちらのラインなど……」
イメルダがそっと袖に触れると、
アルファルファの耳がほんのり赤く染まった。
「……その……イメルダが選んでくれるなら……
それで……いい……」
彼の耳まで赤いのを見て、
イメルダは胸がぎゅんと鳴った。
(かわいい……)
あまりにも可愛いので、思わず吹き出しそうになる。
けれど同時に、胸の奥に温かい感情が広がった。
(この方を……支えたい。
わたくしが、しっかりしなくては……)
◆
朝食の場でも、殿下の“ダメっぷり”は健在だった。
「え、えぇと……これは……どう食べれば……?」
「殿下。これはナイフではなく、フォークで……」
「そ、そうか……はは……」
(……この方、本当に大丈夫かしら……)
公務に向かわされるたび、侍従たちは心配そうにひそひそと囁きあう。
「緊張のあまり、呼吸をするのを忘れなければよいが……」
「陛下の前で倒れなければよいが……」
(誠実で、優しくて、真面目……
それは素晴らしいけれど……
国王としては不安ですわ……)
しかし──イメルダは気づき始めていた。
アルファルファは、
慎重すぎるほど慎重で、
失敗を人一倍おそれ、
自分の言葉ひとつで誰かを傷つけることを何よりも怖れている。
それは裏を返せば──
「人の気持ちに深く寄り添える」という資質でもある。
(夜の殿下が……あれほど優しいのも……
そういうところから来ているのですわね……)
イメルダは微笑んだ。
◆
その日の午後、公務から戻ってきたアルファルファは、
ほんの少しだけ自信がついたような顔をしていた。
「い、イメルダ……今日……少し褒められた……」
「まあ!どなたに?」
「……陛下に……“よく考えて答えていた”と……」
胸を張るでもなく、威張るでもなく、
ただ照れくさそうに報告する夫に、
イメルダの胸はまたじんわり温かくなる。
「……殿下は、考え深い方ですもの。当然ですわ」
「そ、そうかな……?」
「ええ。殿下ほど誠実なお方は……ほかにいらっしゃいません」
アルファルファは、
その言葉を噛みしめるように目を伏せた。
そして──
そっと、イメルダの手を取り、
ためらいがちに指先へキスを落とした。
「……あ、あの……イメルダ……
き、君が……そばにいてくれると……ぼ、僕は……」
イメルダは、
その続きを聞く前に胸がいっぱいになってしまった。
「殿下。わたくしも……そばにおりますわ。ずっと」
自分でも驚くほど自然に、その言葉が出た。
◆
そしてその夜。
二人きりになった寝室で、
アルファルファは少しだけ勇気を出したように
イメルダを抱き寄せ──
静かに、丁寧に、彼女を愛した。
翌朝。
イメルダは、またも庭園でそっと呟く。
「まさか……昨夜はさらに……。
殿下って……本当に……ずるいですわ……」
「それに……あんなに優しいなんて……」
頬を両手で覆い、
イメルダはゆっくり座り込んだ。
(だめ……もう完全に……殿下のことばかり考えてしまう……)
彼女の胸に芽生えた想いは、
やがてアルファルファを大きく変えていく力へと変わっていく。
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