婚約破棄されたけれど、頼りない第一王子様と結婚したら溺愛されました

しおしお

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第11話 変わりゆく夫──小さな成長の始まり

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第11話 変わりゆく夫──小さな成長の始まり

結婚生活が始まって一週間。
イメルダは、夫アルファルファの“ある変化”に気づき始めていた。

それは、ほんの小さな、けれど確かな変化だった。



王城にて、殿下が大臣たちと面会する場面。

かつてのアルファルファならば──
意見を求められた瞬間、
「……」
と黙りこみ、
大臣たちが気まずい顔で助け舟を出すのが常だった。

しかし今日は違った。

「殿下、商会との契約書に署名を求められていますが……」

重苦しい空気が流れる中、
アルファルファは小さく息を吸う。

そして、震える声ながらも言った。

「……これは……少し考えたい。
 時 間を……もらえるだろうか」

わずか数秒の沈黙のあと、
大臣が目を丸くした。

「は、はい! もちろんでございます、殿下!」

たったそれだけのこと。
だが、彼にとっては大きな一歩だ。

黙り込み、責任を恐れ、
ただ場を固めてしまうだけだった殿下が──
**“言葉で伝える”**ようになり始めたのだ。

廊下の陰からその様子を見ていたイメルダは、
こっそりと胸元を押さえた。

(殿下……すごい……)

ほんの少しの成長だからこそ、
胸が熱くなる。



その日の午後。

イメルダと話しているときも、
殿下は以前のように黙り込まなくなっていた。

「殿下、この刺繍はいかがです? 来月のお茶会用で……」

きっと、また黙り込んでしまう──
そう思ったイメルダの予想に反して。

「……えっと……その……
 とても、きれいだと思う」

そう言ったあと、
殿下は気恥ずかしそうに目をそらした。

イメルダは思わず口元を押さえた。

(かわ……い……)

心臓の跳ね方に、自分でも驚いてしまう。

「殿下。その……ありがとうございます」

「い、いや……その……本当に……きれいで……
 似合うと思ったから……」

イメルダは、
胸の奥がじわりと温かくなるのを感じた。

(殿下……昨日よりも……言葉が出てきている……)

夫婦になって、
彼がイメルダに向ける目が変わったことがよく分かる。

慎重で、怖がりで、優しくて、
でも──
ちゃんとイメルダの言葉を受け取り、
返そうと努力してくれている。

それが嬉しかった。



夜。

寝室でも、アルファルファは変わりつつあった。

「……イメルダ。
 きょ、今日は……どうだった……?」

以前なら、寝る前に何か言おうとしても
結局言えずに黙り込むだけだった。

だが、今は違う。

「公務……少しだけ……うまくいった気がする。
 陛下にも……褒められて……」

「まあ、殿下! 本当に素晴らしいですわ!」

イメルダが心から喜ぶと、
殿下は照れながらも
イメルダの手をそっと握り、ぽつりと呟いた。

「……君がいるから……だと思う。
 その……イメルダの言葉が……胸に残っていて……
 だから……少し……勇気が出せた」

イメルダの胸が、ふわっと震えた。

(だめ……もう……殿下のことばかり考えてしまう……)

彼を支えていきたい。
その気持ちが、日に日に強くなっていく。

そして──
イメルダの献身が、殿下をさらに大きく変えていくことになる。

その時、王宮の外で蠢く影──
ベータとアルティシアは、まだその変化に気づいていなかった。


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