婚約破棄されたけれど、頼りない第一王子様と結婚したら溺愛されました

しおしお

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第31話 アルティシアとベータ、追い詰められ始める

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第31話 アルティシアとベータ、追い詰められ始める

王城の長い回廊を進みながら、
アルファルファ殿下は静かな怒りをまとっていた。

隣を歩くイメルダは、
殿下の手の温かさと、
その奥底でふつふつと燃える決意を感じ取り――
胸が締め付けられた。

(殿下……もう、あの優柔不断な方ではありませんわね……)



会議室に到着すると、
そこには既に数名の官僚と騎士が集まっていた。

そして――
その中心で派手な声を上げている女が一人。

アルティシア。

「だってね? 皆さま。
 第一王子殿下は“王の器ではない”と
 侯爵夫人(仮想の名家の女性)がおっしゃっていたのですよ?
 しかも殿下の奥方――
 あのイメルダ様が王権掌握を狙っているですって!」

周囲がざわめく。

その隣ではベータ王子が、
妙に汗をかきつつ、相槌を打っていた。

「そ、そうなんだ。
 兄上の動きは危険だと思う。
 ボクはただ、国のためを――」

その瞬間――
扉が開いた。

「その“危険”な兄が来たぞ、ベータ」

アルファルファ殿下の冷たい声が響いた。

空気が凍りつく。

アルティシアがゆっくり振り返り――
笑顔を貼り付けた。

「あら……殿下?
 ご機嫌よう……わざわざこんなところに?」

しかし殿下は笑わない。
いつもなら俯きがちだった目が、
まっすぐ二人に向けられている。

「ここで何をしていたのかは、
 すでに報告を受けている」

アルティシアの笑顔が強張る。

「誤解ですわ、殿下。
 私はただ皆さまに事実を――」

「事実? 誰が“事実”だと言った?」

殿下の一喝に、
会議室の空気が震えた。

「……っ」

「イメルダが王権を掌握している?
 私が王位を狙って国を動かしている?
 君たちは根も葉もない噂を“事実”と呼ぶのか?」

ベータは真っ青になり、
震えながら口を開く。

「兄上……ぼ、僕は……その……。
 ただ……あ、兄上のために――」

「ベータ。
 私のためだと言うのなら、
 なぜ私の背中に刃を向けるような真似をする?」

「ひっ……!」

殿下は一歩進む。

以前なら考えられなかった、
威圧感を伴う一歩だ。

イメルダは密かに感動していた。

(ああ……殿下……本当に変わられましたわ……)

「ベータ、アルティシア。
 二人が流した噂で、どれだけ城下が混乱したか理解しているか?」

アルティシアは必死で言い訳しようとした。

「わ、わたくしは……その……。
 殿下が新たな案をお出しになったと聞いて、
 それが不安材料になる方が多かったので……
 ちょっと……注意喚起を……」

殿下は深くため息をついた。

「注意喚起なら、なぜ私のところへ来ない?」

アルティシアは喉を詰まらせる。

ベータは隣で
「ひぃ……ひぃ……」と変な声を漏らすだけ。

殿下は完全に怯えさせるほどではなく、
だが逃げ道を与えないまっすぐな眼差しで責めた。

「二人には、正式な場で説明してもらう。
 国王陛下の御前でな」

「っ……!?」

アルティシアは膝を震わせた。

ベータは泣きそうな顔でイメルダに目を向ける。

「イ、イメルダ姉さま……っ
 助けて……」

イメルダは冷ややかに言った。

「誠実な殿下と違って……
 自分の保身ばかりの方を、どうして助けられますの?」

ベータは絶望した表情を浮かべた。

そのとき――。

アルテイシアが不意に跳ねるように言った。

「ベータ殿下の指示ですわ!
 わたくしは命じられただけ!
 殿下が“兄上を失墜させたい”と――」

「お前が言い出したんだろう!!
 お前が“第一王子を落とせば私たちが王と王妃になれる”と言った!」

一瞬で互いを指差し合って罵倒し始めた。

「あなたが言ったんでしょうが!」

「何を! お前のせいで僕は!」

「殿下の器ではないとか言いふらしたのはあなたですわ!」

「違う! 君が勝手に!」

醜い罵り合い。

王城の会議室が、
一転して見苦しい舞台と化す。

(……ああ、これが“器”というものなのね)

イメルダは静かにそう思った。

そしてアルファルファ殿下は――
冷たい声で告げた。

「よく分かった。
 どちらも、同じ穴のむじなだ」

二人は凍りついた。

殿下の声は鋼のように硬い。

「この件、国王陛下の御前で裁かせてもらう。
 覚悟しておけ」

アルティシアとベータの顔から
血の気が引いた。

そして殿下は、
イメルダの方へゆっくりと手を伸ばし――

「行こう、イメルダ。
 ……もう、君に恥をかかせることはしない」

イメルダの胸は熱くなった。

「はい、殿下……!」

二人は並んで会議室を後にした。

残されたアルティシアとベータは、
互いを責め合いながら崩れ落ちるだけだった。

――いよいよ、
“ザマア”の幕は上がり始める。


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