婚約破棄されたけれど、頼りない第一王子様と結婚したら溺愛されました

しおしお

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第35話 婚後の生活――ぎこちない新婚、少しずつ距離が縮まって

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第35話 婚後の生活――ぎこちない新婚、少しずつ距離が縮まって

アルファルファ殿下とイメルダの結婚から数日。

王城の新婚夫妻専用の居住区には、
どこか柔らかい空気が流れ始めていた。

とはいえ――

まだ二人は “ぎこちない”。

なぜなら、
殿下は相変わらず 慎重すぎて
時々“オドオド”した言動が顔を出し、

イメルダはイメルダで、
(殿下……今日も……かっこいい……)
と内心では胸を押さえながらも、

外見上は極力 “品格ある名門令嬢” を保とうと
無駄に意識してしまうからである。



朝。

イメルダは朝食の席で優雅にナプキンを置き、
ふと殿下を見る。

殿下は黙々とパンを食べている……ように見えて、
明らかに緊張している。

(……殿下、また緊張なさってる……
 そんなにわたくし、こわいですの?)

イメルダはかわいく小さく咳払いをした。

「殿下。
 お口に合いませんでしたか?」

「ひぇっ!?」

ナイフを落としかける殿下。

イメルダは即座に立ち上がり、
素早く拾ってテーブルに戻す。

「殿下、ゆっくりで大丈夫ですわ」

「あ、あぁ……す、すまない……
 まだ慣れなくて……その……
 一緒に食事をするっていうのが……」

イメルダは思わず口元を押さえる。

(そんな……かわいい……)

でも言葉には出さない。

「わたくしもですわ。
 ですが、毎日少しずつ慣れてまいりますでしょう?」

殿下は、もじもじしながら頷く。

「う、うん……。
 イメルダと……一緒なら……
 そうかもしれない……」

イメルダの胸が射抜かれた。

(……っ!
 だめ……殿下……そんな目で見るのは反則ですわ……!!)



昼。

執務室にて。

殿下は慎重に慎重を重ねて文を作成していた。

「……これは……どう思う?
 その……イメルダの意見も……聞きたい……」

「はい、殿下。
 拝見いたしますわ」

イメルダは文書を読み、
丁寧に文章を整え直す。

「殿下のご意見はまっとうですわ。
 ですが、こちらの一文を少し和らげれば、
 相手の受け取りも良くなります」

「そ……そうか……!」

殿下は嬉しそうに、
しかし驚くほど素直に感謝する。

「イメルダは……本当にすごい……。
 その……尊敬している……」

イメルダは一瞬呼吸を忘れた。

(そ……尊敬……!?
 そんなこと言われたら……
 わたくし……ますます……殿下のこと……)

顔が熱くなって仕方ない。



夜。

殿下が仕事で疲れて戻ると、
イメルダは廊下で待っていた。

「殿下。
 お疲れでしょう?
 お風呂の準備をさせております」

「えっ……あ……ああ……すまない……」

殿下は目を泳がせ、
恥ずかしそうに視線を落とす。

イメルダはそっと近づき、
小声で囁いた。

「殿下……無理はなさらないで。
 わたくしに……頼ってくださいませ」

殿下の動きが止まった。

そして――
小さく頷き、言う。

「……うん。
 イメルダになら……頼りたい」

イメルダの胸が跳ねる。

(だめ……もう……
 本当にこの殿下の……全部を支えたい……!)



その夜、殿下とイメルダは
少しだけ距離を縮めた。

手をつなぐでもなく、
抱きしめ合うでもなく。

ただ――

「おやすみ、イメルダ」

「おやすみなさいませ、殿下」

いつもより近い距離で、
微笑み合って別れることができた。

それだけで十分すぎるほど幸せだった。



翌朝。

侍女たちは、
ほのかに頬を染めたイメルダの姿を見て
こっそり顔を見合わせる。

「イメルダ様……なんだか最近……」

「殿下と、とても良い雰囲気で……」

「ご結婚から急に、夫婦らしく……?」

その噂はじわじわと広がり、
王城に新たな風が吹き始める。

――ぎこちない新婚夫婦は、
ゆっくりと確かな絆を育てていく。


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