婚約破棄されたけれど、頼りない第一王子様と結婚したら溺愛されました

しおしお

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第37話 国王への道――アルファルファの覚悟が固まる

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第37話 国王への道――アルファルファの覚悟が固まる

夜更けの王城。
昼間の喧騒が跡形もなく消え、
静寂だけが廊下に満ちていた。

執務室の灯りはまだ消えていない。

イメルダと殿下は、
散らばった書類をすべて整理し終えた後、
気づけば二人でソファに腰掛けていた。

殿下は深く息を吐き、
静かに呟いた。

「……イメルダ。
 私は……今日、ひとつ決めたことがあるんだ」

イメルダは振り返る。

「殿下……?」

殿下は手を膝の上でぎゅっと握りしめ、
まっすぐ前を向いた。

「私は……次期国王を目指す」

その言葉は、
いつになく強い“意志”に満ちていた。

イメルダの胸は熱く震えた。

(殿下……ついに……)

これまでの殿下は、
“自信のなさ” や “過度の慎重さ” から
王位に対して一歩引きがちだった。

ベータ王子の方が外交で目立ち、
王族の中でも“次期国王候補”として扱われてきたのは事実。

だが――

今は違う。

殿下は確かに、前を向いている。

「……殿下。
 その決意……本気ですのね?」

「本気だ」

殿下ははっきり頷いた。

「今日、父上の前で……
 そしてベータやアルティシアの姿を見て……
 思ったんだ。

“王とは……肩書きではなく、
 国と民を正しい方向へ導ける者であるべきだ”と。

 そして……
 君が支えてくれるなら……
 私は……王になれるかもしれないと……」

殿下の声は震えていない。

その強さに、イメルダの胸はいっぱいになった。

(殿下……
 あなたは変わりましたわ……
 でも、根底にある誠実さはそのまま……
 だからこそ、王にふさわしいのです)

イメルダはそっと殿下の手に触れた。

「殿下。
 わたくしは……殿下が王となる姿を見たいですわ」

殿下は驚いたように瞳を瞬かせた。

「い……イメルダ……」

「殿下は、誠実で、慎重で、
 相手の痛みに寄り添える方。
 わたくしは……
 そんな殿下にこそ、国を任せたいと心から思います」

殿下の目がわずかに潤んだ。

「イメルダ……
 私は……君にそう言ってもらえるなんて……
 本当に……幸せだ……」

その言葉は、
胸の奥から溢れた本心だった。

イメルダはそっと微笑み、
言葉を続けた。

「殿下のお側にいられるのが……
 わたくしの誇りですわ。
 いつか殿下が王位に就かれたとき……
 その隣に立つことができれば……
 わたくしはそれだけで……」

殿下はイメルダの手を強く握った。

「いや……“それだけ”じゃない」

イメルダは目を見開く。

殿下は優しく、
しかしはっきりとイメルダを見つめた。

「君は……私に必要な人だ。
 君が隣にいてくれるなら……
 私は何だってできる気がする。

イメルダ……
 王になりたいのは……
 君のためでもあるんだ」

イメルダの息が止まった。

(殿下……)

胸の奥が甘く痺れ、
頬が熱くなる。

それは“恋”という言葉では足りないほど
深くて強い感情だった。



殿下は照れたように目を伏せた。

「……本当は、もっと早く言いたかったんだ。
 でも……言っていいのか迷って……」

イメルダの胸がきゅんと締めつけられた。

(……慎重で不器用な殿下……
 でも、そこが愛しくてたまらないのですわ)

イメルダはそっと殿下の肩に寄り添う。

「殿下……
 殿下が望むなら、
 わたくしは……
 王妃として……殿下をお支えしてまいりますわ」

殿下はゆっくりと顔を上げ、
イメルダの頬に手を添えた。

「イメルダ……ありがとう」

二人は見つめ合い、
静かに微笑み合った。

ぎこちなくも、
確かに深まった絆。

その瞬間――
イメルダだけが知っている“強さ”が、
殿下の中でまたひとつ花開いた。



こうして殿下は
“次期国王” へ歩み出し、

イメルダは
“王妃となる覚悟” を胸に刻んだ。

ふたりの未来は、
静かに――しかし確かに動きだしていた。


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