見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ

しおしお

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25-4 真の統率者

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25-4 真の統率者



城下を照らす夕陽が赤から紫へと溶けていくころ、セリカは王城の高窓から外を眺めていた。
レクサスⅧ世の形式的な署名を待つ書類は山積みで、忙しさは相変わらずだった。
だが、胸の奥を占めるのは疲労ではない。もっと深く、冷たいもの――。

(この国の王は、一体“誰”なのかしら?)

自分ではないことだけは明らかだ。
だが「国王」と呼ばれる男は、今日も応接室で昼寝をしているらしい。

セリカの肩にのしかかる現実と責任は、日に日に重さを増していた。


---

◆リリーの言葉がくれた“ひとすじの灯”

執務室で涙がこぼれたあの夜。
彼女にそっと寄り添ってくれた侍女リリーの存在は、思いのほか大きかった。

「セリカ様のお力になりたいのです。どうか、お一人で抱え込まないでください」

その言葉は、セリカの心の奥で小さな光となり、ひどく冷えきっていた心を少しだけ温めた。

翌朝からも業務は変わらず続いた。
だが――セリカの目には、昨日よりも強い光が宿っていた。

(私がやらなければ、この国は動かない。だったら私がやるだけ)

だがその“強さ”の奥に、確実に膨らんでいくものがあった。

――レクサスⅧ世への失望。
――そして「このままではいけない」という苛立ち。


---

◆地方視察――“王”と呼ばれるべき者はどちらか?

セリカは各地の現状を知るため、視察に出ることを決めた。
王妃である自分が動くことに宮廷は騒然としたが、彼女は有無を言わせず馬車に乗り込んだ。

農村では作物の不作を嘆く農民が、
商業都市では税率に悩む商人が、
辺境では守備兵不足を訴える領主が――。

ひとりひとりの言葉を真剣に聞き、即座に改善策を示すセリカに、住民たちはどこでも頭を垂れた。

「王妃様のおかげで命が助かりました」
「あなたこそ、この国の光です」

そんな言葉を向けられるたび、彼女は胸の奥が熱くなるのを感じた。

(私のしてきたことは、ちゃんと人々に届いていたんだ…)

誇りと同時に、次第にひとつの思いが形を成し始める――。

(もし“本物の統治者”が必要なら、私がその役目を負うべきなのかもしれない)


---

◆決戦の夜――レクサスⅧ世との対話

視察から戻ったその夜。
庭園の月明かりが石畳を照らすなか、セリカは意を決してレクサスⅧ世を呼び出した。

彼はワインのグラスを片手に、いつもの気の抜けた笑みを浮かべていた。

「話って何? また書類のことなら、君に任せてるって言ったよね」

セリカは静かに、しかし強く言い放った。

「――任せています、では済まされないのです。
 あなたはこの国の王です。国の未来を共に考えていただかなくては困ります」

レクサスⅧ世はしばし目を瞬かせたあと、ゆるく笑った。

「どうしてそんなに必死なんだい、セリカ?
 君が有能だから任せてるんだ。私は面倒なことはしたくないだけさ」

その一言で、セリカの中の何かが静かに凍りついた。

(ああ、やっぱり……この人は、国王ではない)

怒りは湧かなかった。
それを通り越した先にある、乾いた諦観。そして確信。

「――承知しました。ならば、私が『この国を導く者』として動きます」

彼女が告げると、レクサスⅧ世は肩をすくめただけだった。

「好きにすればいいよ。君の方が向いてるしね」

(では、私が“王”になる)

そう心の中で静かに宣言した瞬間、セリカの迷いは消えていた。


---

◆影の王――セリカの新たな統治

翌日から、セリカは一切の遠慮を捨てた。

王命の起草、軍の再編、経済政策の調整、外交交渉。
どれも彼女が中心となって動き、地方領主たちも彼女の判断に従い始めた。

「セリカ様のお言葉なら従います」
「実際に国を動かしているのは王妃様だ」

やがて宮廷でもこう噂され始める。

“国王はセリカ様であるべきだ”
“レクサスⅧ世は象徴にすぎない”

その声は日に日に強まり、ついには国外の使者まで彼女を「統治者殿」と呼ぶようになった。


---

◆そして――真の支配者として

ある朝、セリカは王城のバルコニーから国を見下ろした。
市場は活気に満ち、軍は規律を取り戻し、国は再び発展し始めている。

(私が歩んできた道は正しかった)

彼女は初めて、心からそう思えた。

「レクサス王国は、私が守る」

その決意は揺るがない。
たとえ名目上の王は別にいるとしても――この国を動かすのは、彼女以外にありえなかった。


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