氷の公爵と契約結婚したら、いつの間にか溺愛されていました 〜冷徹な夫が“絶対に手放さない”と言って離してくれません〜

しおしお

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最終章 氷の公爵と宿命の地——溺愛が結ぶ真の結末

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 「愛のない政略結婚」から始まりながら、少しずつ互いを理解し合うようになったアドリアナとヴァレリウス。
 コーデリア率いるフライベルク家の陰謀は一度は打ち砕かれたものの、アドリアナの実家であるローラン子爵領には深刻な疫病が発生し、領内の混乱が続いている。
 さらに、フライベルク伯爵たちが「公爵夫妻が疫病対策を怠った」と王宮で糾弾しようと画策するなど、事態はまだ予断を許さない。
 政略を超えた“真の夫婦”になりつつある二人は、アドリアナの故郷を守るため、そして互いの心を守るため、最後の戦いへと挑んでいく。

1. 災厄を抱えた領地へ

 雨が降りしきる薄暗い朝だった。
 アドリアナは何度か深呼吸をして、自分に言い聞かせる。——ローラン子爵領で疫病が蔓延し、父を含む多くの領民が苦しんでいる。あの場所に戻るのは怖い。それでも、公爵夫人として動かねばならない。
 そう決意したのは、ヴァレリウスが王宮で大規模な救援や医療スタッフを手配するため、まず彼女に先行して実情を把握してきてほしい、と申し出たからだ。そして、王宮での“フライベルク家による攻撃”を防ぐ役割も、ヴァレリウスが一手に引き受けるという。
 しかし、それは別々の行動を取ることを意味する。アドリアナにとって、彼がいない場所で危険に立ち向かうのは不安もあるが、隣で彼を支えたい思いと同じくらい、故郷を見捨てるわけにはいかなかった。

「……行ってきます、公爵様」

 出発前の屋敷の玄関。アドリアナの言葉に、ヴァレリウスは静かに頷く。その金色の瞳はどこまでも冷徹で、同時にどこまでも優しい。

「気をつけろ。俺の部下をつけたが、それでも危険だ。すぐに戻ってこられるように考えておけ。……必ず帰って来い」

 短い抱擁。彼はあまり言葉を重ねず、しかし固くアドリアナの手を握った。ひんやりとしたその手からは、いつしか穏やかな温もりが感じられるようになっている。

「はい……公爵様も、お体に気をつけて」

 別れを惜しむ間もなく、馬車が走り出す。重苦しい雨空のもと、アドリアナを乗せた黒い馬車は王都を抜け、ローラン子爵領へと向かった。

1-1. 疫病蔓延の予兆

 ローラン子爵領に近づくにつれ、目に飛び込んできたのは人通りの激減した街道、閉ざされた門、そして所々に置かれた「疫病注意」を喚起する看板だった。
 かつてアドリアナが過ごした故郷ののどかな風景とは程遠い。どこか荒んだ空気が漂い、人々は疑心暗鬼になっているのか、外へ出ることを恐れている様子。
 護衛騎士のレオンが馬車の窓から顔を覗かせ、「奥方さま、どうやら領内全体で外出規制が敷かれているようです。強硬手段で入ることを拒まれる可能性もありますが……」と声をかける。

「でも、私はローラン子爵の娘です。入る資格はあります。……大丈夫、きっと説得できますから」

 そう言いつつも、不安を拭えないまま馬車は進み、ついに子爵邸へ到着した。かつてアドリアナが暮らしていた屋敷は、すっかり寂れた雰囲気で、門番の姿さえ見えない。
 屋敷に入ると、初老の使用人が慌てて出迎えてくれた。だが、その表情には深い疲労がにじむ。

「お嬢様……いえ、公爵夫人。戻られたのですね……。実は子爵様がお倒れになり、既に数日も高熱が続いて……。医師が診ましたが、この疫病ではないかと……」

「父が……そんな……。今すぐ会わせてください!」

 アドリアナは悲鳴にも似た声を上げ、屋敷の奥へ駆け込む。顔を合わせるのはいつぶりだろう。半月もないはずなのに、遠い記憶のように感じられる。
 部屋にたどり着くと、そこには激しい咳と高熱にうなされながら横たわる父の姿があった。こんなにも弱々しい父を見たことがない。アドリアナは唇を震わせながらベッドに近づく。

「お父様……聞こえますか、アドリアナです」

「……ア、ドリアナ……。すまない……すまない……」

 子爵はうわ言のように謝罪を繰り返す。かつてローラン家のために政略結婚を押しつけた父が、今はこうして娘の手を握りしめ、助けを乞うしかないのだ。
 アドリアナは涙をこぼしつつも決意を固めた。この領地を見捨てるわけにはいかない。公爵夫人として、そして娘として、みんなを守らなくては——。

2. 流言飛語と孤立無援

 翌日から、アドリアナは騎士たちと協力して疫病対策の実情を調べ歩く。周辺の村や町を回り、病院や教会での対応を確認しようとするが、どこも医師と薬が足りない状態だ。
 しかも、住民の間では「ローラン子爵家が、領民に無理な増税をしたせいで生活が困窮し、体力が落ちたところを疫病にやられた」という噂や、「公爵夫人は都で贅沢な暮らしをしていて、今ごろ戻ってきても手遅れだ」という悪意混じりの風説が広まっていた。

「お嬢様が……公爵夫人なんて務まるのか? ローラン家自身がこんな惨状だってのに……」

「フライベルク家が王宮で言ってたわ。“ローラン家は怠慢だから、アイゼンベルク公爵に迷惑をかけている”って……」

 耳にするたびに心が痛む。決してフライベルク家が善人でないことは知っているが、それでも人々の不信は簡単には解けない。
 さらに、実際に医師や薬草師たちに声をかけても、「危険すぎる」「専門知識が不十分」と尻込みする者ばかり。アドリアナは仕方なく、自分がまとめた「医療支援計画書」を一人一人に渡し、少しでも協力を呼びかける。
 しかし現状では、誰もが命を守るのに必死で、一歩踏み出す余裕がない。このままでは父をはじめ多くの患者が救われない危機が迫る。

2-1. 公爵からの手紙

 そんな苦境の中、アドリアナのもとに一通の手紙が届いた。差出人はもちろん、ヴァレリウスだ。

「状況はどうだ。俺も手配を急いでいるが、王宮内でフライベルク家が“公爵夫妻の落ち度”を吹聴しており、面倒な交渉を強いられている。
 だが、遠からず大規模な支援を送り込めるだろう。お前は焦るな。無理はするな。必ず戻れ。
 ——ヴァレリウス・フォン・アイゼンベルク」

 短い文面ながら、“必ず戻れ”という言葉に、アドリアナは胸が温かくなる。いつも冷たい態度の中に、彼なりの強い思いがこもっているのがわかる。
 けれど、戻るわけにはいかない。この地に残ると決めた以上、フライベルク家の陰謀や周囲の不信に負けず、踏みとどまらなければならない。アドリアナは手紙を胸元にしまい、燃えるような決意を再び抱く。

3. 停滞と突き上げ——フライベルク家の罠

 それから数日間。アドリアナは領地の要所を巡回し、仮設の診療所を増やす手伝いをしたり、住民の訴えをまとめて書簡にし、王宮やアイゼンベルク公爵邸に送り続けていた。
 しかし、期待していた支援物資は遅々として届かない。天候の悪化で街道が荒れ、馬車輸送が難しくなっているという報告もある。王宮ではフライベルク家がなおも“北方開発の予算と引き換えに救援を派遣するべきだ”と主張して、混乱を招いているらしい。
 領民の間では「本当に公爵様は来てくれるのか?」「フライベルク家の言うとおり、公爵夫人は何もしてくれないのでは?」という疑念が再燃し、街には暗い雰囲気が立ち込める。

「奥方さま、このままでは住民の不満が爆発しかねません。実際、子爵様が倒れられたままで、政治を執り行う者が不在の状態が続いています」

 使用人や騎士たちも苛立ちを募らせ、限界が近い。アドリアナは何度も「必ず公爵様が助けてくださる」と繰り返すが、自分でも言葉の重みが足りないと感じていた。
 そんなある朝、アドリアナは衝撃の報告を受ける。フライベルク家の使者が子爵領に入り込んで、住民を扇動しているというのだ。

3-1. フライベルク家の使者、再び

 アドリアナが急いで向かった先は、子爵領の小さな市場跡の広場。そこでは人々が不安気な表情で集まり、フライベルク家の紋章をつけた男が高壇に立って声を張り上げていた。

「皆の者、よく聞け! アイゼンベルク公爵とその夫人は、あくまで自分たちの利益を優先していて、ここには救援を送る気配がないのではないか? もしも、このまま放置されるなら、われらフライベルク家の提案を受けたほうが良いかもしれないぞ!」

「フライベルク家……? あの夜会でコーデリア様が語っていたことが本当だったのか?」

「アイゼンベルク公爵夫人なんて、形だけの存在なのかもしれん。もう待っていられないんだ……」

 ざわざわと騒ぎ出す住民たち。それを制止しようにも、アドリアナは圧倒的に数が少ない。レオンも騎士も合わせて十数名しかいないため、下手に衝突を起こせば暴動になりかねない。
 しかし、黙って見過ごすわけにもいかない。アドリアナは壇へ上がろうとするが、フライベルク家の使者がニヤリと笑って声を高めた。

「おや、この騒ぎを耳にして出てきたか。皆の者、この人こそ“アイゼンベルク公爵夫人”だそうだ。さあ、どれだけ疫病対策をしてくれるのか、ご本人に直接問い詰めてみるといい!」

「本当に私たちを見捨てないんですか?」「公爵様はいつ来るんです?」「私の息子が熱を出していて……」——住民の声が一斉に浴びせられる。
 アドリアナは胸を締めつけられるような痛みを感じながら、必死に答えを探す。王宮やアイゼンベルク家は確かに動いているはずだが、まだ結果が届かない。ここで無責任な発言をしてしまえば、後で裏切りとみなされるかもしれない。
 だが、何も言わなければ、人々の不満と恐怖は増すばかり。アドリアナは一歩前に出て、大きく息を吸った。

4. アドリアナの宣言——“私が必ず救う”

 広場を取り囲む群衆の視線が痛いほど突き刺さる。フライベルク家の使者は腕を組み、嘲笑を浮かべてアドリアナを眺めている。「ほら、何も言えないだろう?」と暗に煽っているようにも見える。
 しかし、アドリアナはその挑発に負けず、思いの丈を声に乗せて叫んだ。

「皆さん、落ち着いてください! 私は……アドリアナ・ローラン……いえ、アイゼンベルク公爵夫人です。ここは私の故郷であり、家族や友人、そして多くの大切な方々が暮らす場所です。見捨てるはずがありません!」

 その言葉に、周囲が息を呑む。決して大きな声量ではないが、震えの奥に強い意志があるのを感じ取ったのだろう。アドリアナは続ける。

「今、フライベルク家の使者が『公爵様は当てにならない』とおっしゃいました。しかし、それは違います。公爵様は王宮で、正式な支援と医療スタッフ、物資を手配しています。
 ……確かに遅れているのは事実。道が荒れ、王宮内の政治駆け引きもあるのでしょう。でも、私たちが努力を続ければ、必ず援軍は届きます。どうか、それまで私に協力してくださらないでしょうか。皆で出来ることを進めませんか?」

「協力……私たちに何ができる?」「公爵夫人は、具体的にどうするつもりなんだ?」

 いくつもの問いが飛ぶ。アドリアナは拳をぎゅっと握り締め、さらに声を張り上げる。

「薬草の知識を持つ方、医療や看護の経験がある方、住民の代表として物資の配分を管理できる方——各々ができる役割を探してほしいんです。私は公爵夫人として、情報を王都に伝える窓口になります。
 アイゼンベルク家が到着したら、すぐに動けるよう受け皿を作りましょう。私自身も、領地の財政が破綻していることは承知しています。でも、だからこそ少しでも立て直す方針をまとめておきたいのです!
 今ここで、フライベルク家の言葉に流されて、何もせず座して死を待つのはあまりにも悔しい……! 私は、皆さんが大切だから……。故郷が好きだから……。だから、もう少しだけ信じてほしいんです! 私たちを……」

 言い終えたとき、アドリアナの頬には涙がこぼれていた。住民たちは唖然としたまま、しんと静まり返る。
 すると、不意に誰かが拍手をした。初めは一人、やがてそれが数人に増え、ついには広場全体が拍手の渦に包まれる。

「……奥方さまがそこまで言うなら……俺、力になりたい!」「私も少しだけ看病の経験がある。家で寝ているよりずっといい!」
「そうだ、待ってるだけじゃ何も変わらない!」「フライベルク家なんて信用できないって、みんな知ってるんだよ!」

 人々が一斉に声を上げ、希望を取り戻し始めたのだ。フライベルク家の使者は「バカな……」と呆れたように唇を歪めるが、もうどうにもならない。
 アドリアナは鼻をすすりつつ、深い感謝を込めてみんなに微笑んだ。

「ありがとうございます……! 絶対に、私も頑張りますから!」

4-1. フライベルク家の使者、撃退

 敗北を悟ったフライベルク家の使者は、憎憎しげにアドリアナを睨むものの、人々の熱気に押され、退散を余儀なくされる。
 わずか数日前までは疑念を抱いていた住民たちが、今はアドリアナの言葉を信じようとしている。もちろん不安は残るが、「動かなければ何も変わらない」と気づき始めたのだ。
 こうして、フライベルク家が再び仕掛けた分断工作は、アドリアナの真っ直ぐな訴えによって未遂に終わった。少しずつではあるが、住民たちの士気が高まり、疫病対策に向けて連携し合う機運が高まる。
 しかし、この成功がアドリアナにとって重荷にもなっていった。人々は彼女に期待を寄せすぎ、「アイゼンベルク公爵が早く来るだろう」「薬や医師が潤沢に届くだろう」と希望を抱くようになり、そのプレッシャーをまともに受け止めるのは相当にきつい。
 さらに、アドリアナ自身の体調が微熱から回復しきらず、看病や事務仕事を強行する中で、夜もほとんど眠れない日々が続いていた。

5. そして“あの人”がやって来る

 それからさらに数日後。
 夜の帳が降りた子爵邸で、アドリアナはデスクに広げた書類をまとめていた。薬師や各町の代表から届いた需用品リストや、簡易医療施設を増やす予定地の候補……すべてヴァレリウスへ報告するため、分かりやすく整理しておかなければならない。
 しかし、肩は凝り、頭はぼうっとする。そんな疲労困憊の中、屋敷の外から大きな歓声が聞こえてきた。

「公爵様の部隊が来たぞ!」「隊商が到着した!」

 はっとして窓を開けると、月明かりの下、複数の馬車と騎士が続々と子爵邸の敷地へ入ってくるのが見えた。
 アドリアナは書類を放り出し、走るように玄関へ向かう。そこには、ヴァレリウス・フォン・アイゼンベルク本人が率いる大規模な隊が整然と並んでいた。医師や薬師らしき人々も数多く見える。
 そして、馬から降り立ったヴァレリウスが、迷わずアドリアナのもとへ歩み寄る。久しぶりに見るその姿は相変わらず黒髪で長身、冷厳なオーラを放っているが、金色の瞳の奥に少し安堵の色が混ざっているのを感じる。
 アドリアナは、心が震えるのを抑えられない。彼が来てくれた——これで救える命がきっと増える。

「公爵様……」

「遅くなった。だが、見てのとおり大部隊を連れてきた。医師も薬も豊富に用意した。……お前が報告してくれたおかげで、どこをどう支援すべきか概ね把握している。ありがとう」

 それは非常に実務的な言葉だが、今のアドリアナにはそれが何よりも嬉しく、心強い。彼がこの地に来てくれただけで、人々の希望は何倍にも膨らむ。
 思わず彼の胸に飛び込みたくなる衝動を抑えて、アドリアナは涙ぐみながら笑う。

「ありがとうございます、本当に……! 私も、皆さんをお待ちしていました。大歓迎だと思います。もう何人も病死して……心が折れそうでした。あ、あの……私ったら、こんな時に……」

「泣くな。いや、もういい。泣け」

 意外な返事が返ってきた。いつもなら“泣くな”と言うだけのヴァレリウスが、今は「もういい」と言ってくれる。その言葉だけで、アドリアナはもう堪えられない。
 次の瞬間、彼の腕がそっとアドリアナを抱き寄せた。視界がじんわり滲む。子爵邸の人々も騎士たちも見ているかもしれないが、もうどうでもいい。アドリアナは声を殺して泣き、そのままヴァレリウスの胸にすがる。
 どれほど苦しかったことか。どれほどこの瞬間を待ちわびたか。すべてが涙となってこぼれ落ちる。
 ヴァレリウスは何も言わずに、彼女の頭をそっと撫でるだけ。けれど、その静かな仕草に“愛”が満ちているとわかる。

5-1. 実務へ復帰

 翌朝、早速ヴァレリウス率いる部隊は各地へ散り、医療支援と物資配給が本格的に行われた。
 人々は公爵の到着を大歓迎し、「本当に来てくれた!」「公爵夫人は嘘をついてなかった!」と喜び、アドリアナを見る目がさらに優しいものへと変わる。
 フライベルク家の使者が散々「アイゼンベルク公爵は来ない」「夫人は口先だけ」などと吹聴していたが、それが偽りだったことが証明されたのだ。まさに“ざまぁ”という言葉を思い出すが、アドリアナはただ安堵するばかり。
 これで父や領民も、本格的な救済の道を歩めるだろう。もちろん、財政難や疫病そのものが一朝一夕に解決するわけではないが、道筋が見えたことが何よりの希望だった。

6. “氷の公爵”の決断

 その日、アドリアナは公爵邸として使われ始めた子爵邸の執務室で、ヴァレリウスと二人きりになっていた。
 地図と書類が広げられ、ローラン家の領地再編や財政の立て直しに向けた計画が練られている。ヴァレリウスは厳しい表情でそれらを睨みつけ、指先でテーブルをトントンと叩く。

「ローラン子爵が回復するまで、当面は俺が領地を管理することになる。……とはいえ、子爵領とは別の自治権があるから、王宮との調整も必要だ。フライベルク家がそこに口を挟む隙を与えないためにも、しっかりとした方策を整える必要がある」

「はい。私も、領民の皆さんと話し合った案をまとめました。主要な村や町に診療所を整備して、そこへ医師や薬師を一定期間駐在させる仕組みを考えています。……公爵様の領地でも、似た制度があると聞きました」

「アイゼンベルク領は気候が厳しいからな。病気の流行は死活問題だ。……同じ仕組みを取り入れれば、子爵領も救われるはずだ」

 淡々と会話を交わす二人だが、そのやり取りはどこか息がぴったり合っている。わずかな目配せや言葉の端々から、相手が欲している情報を感じ取れるほどになっていた。
 そして、ふいにヴァレリウスがちらりとアドリアナを見やる。

「お前がここまでやるとは、正直思ってなかった。……政略結婚の妻として“形”だけで過ごす選択肢もあったはずだ。おとなしくアイゼンベルク公爵邸に留まっても、誰も責めなかっただろうに」

「形だけなんて、もう嫌なんです。私は公爵様の妻として、誇りを持ちたい。……それだけです」

「……そうか。なら、好きなように動け。俺が全力で補佐する。それが俺の“仕事”だからな」

 そこにはもはや、かつての「愛など不要」と言い切った冷徹さはない。きっと、彼自身が“仕事”という言葉の裏に“愛”を宿していることを自覚しているだろう。
 アドリアナはその瞳をじっと見つめ、静かに微笑んだ。

「ありがとうございます。公爵様に出会えたおかげで、私、こんなにも変われました。ローラン家を救うためにも、フライベルク家の策略から身を守るためにも——」

「フライベルク家は、もう終わりだ。王宮の調査で借金の実態が明らかになり、再婚説も破綻。コーデリアは謹慎処分。……二度とお前を虐げることはできない。安心しろ」

 その言葉に、アドリアナはほっと胸を撫で下ろす。あのコーデリアが、今はどうしているだろう。おそらく彼女も自領の立て直しに苦しんでいるかもしれない。
 まさに「ざまぁ」だが、やはり憎しみよりは憐れみが勝る。もしコーデリアがもう少し他者を思いやれる人であったなら、こんな結末を迎えずに済んだかもしれないのに——。

7. ざまぁ、その余韻

 それからさらに数週間が経過し、子爵領の疫病は明らかに沈静化していった。アイゼンベルク公爵の医療支援や、アドリアナが提案した診療所の整備が効いている証拠だ。重症者はまだ少し残るが、死者の数は抑えられており、回復者も増えている。
 領民たちは口々に「公爵様と夫人のおかげだ」と感謝の言葉を送るようになった。ローラン家への不信は薄れ、逆に「ローラン子爵が改心して、今度こそ領地を大事にしてくれるだろう」と期待する声も高まっている。
 その一方でフライベルク家は、王宮の調査により虚偽の“北方開発計画”が発覚し、身の振り方を余儀なくされていた。コーデリアは当然謹慎処分で、都の社交界にも顔を出せなくなり、かつて見下していたアドリアナが耀いている姿を遠くから眺めるしかないという現状だ。
 アドリアナはその報せを聞くたびに、“ああ、あの頃私を貶めた人たちが軒並み転落していくんだな”と不思議な感慨を抱く。ともあれ、ざまぁという言葉が似合いすぎる展開である。

8. 最後の儀式——“本当の夫婦”として

 疫病が下火になり、子爵邸には平穏が戻りつつあった。アドリアナの父もゆっくりではあるが回復し、領地の再建計画に参加できるまでになった。
 そこで、アイゼンベルク公爵を中心に、小さな祝賀会が開かれることになった。ローラン領の住民代表も交え、「疫病が峠を越えたこと」「公爵と夫人の尽力による救済が功を奏したこと」を皆で祝い合う場だ。
 子爵邸の広間には、粗末ながらも温かい料理と音楽が用意され、アドリアナは落ち着いたブルーのドレスに袖を通す。いつもなら遠慮がちにしていた胸元の開きが少しだけ広めで、彼女なりに“夫人”としての華やぎを演出している。

「奥方さま、よくお似合いですよ」

 侍女がそう褒めてくれ、アドリアナは少し照れながら礼を言う。ドレス姿で自分の故郷を再び訪れることはなかったかもしれないが、今はこの場が新しい出発点になるのだ。
 そして、広間に現れたヴァレリウスは言葉もなく、アドリアナをじっと見つめ、眉を少し緩めたように見えた。いつもより優しい光を帯びた金色の瞳が、彼女を“美しい”と認めているのだろう。

8-1. 愛の宣言

 祝賀会では、さまざまな人がアドリアナとヴァレリウスにお礼を述べる。「本当にありがとうございました」「命が救われました」という言葉に、二人は静かに頷き、笑みを返す。
 フライベルク家の名は誰も口にしない。もう過去の亡霊のように扱われているのが現状だ。
 宴の最後、父であるローラン子爵が車椅子のようなものに乗り、皆の前に姿を見せた。まだ声はか細いが、はっきり目を開け、ヴァレリウスとアドリアナを見つめる。

「公爵閣下……そして、私の娘アドリアナ。本当にありがとう……。わしは今まで、家の存続しか考えられず、娘を政略結婚に追いやったが、結局はお前たちにこの領地を救われた。わしは情けない父親だ……」

「お父様、そんなこと……」

「いや、言わせてくれ。これからは、この子爵領が公爵家の助力も得て復興していくのを見届けたい。それがわしの最後の務めだと思っている。どうか……わしが回復するまで、アドリアナをここに滞在させてやってほしい。孝行させてやってもらいたいんだ」

 ローラン子爵の言葉に、ヴァレリウスは少し意外そうな顔をしたが、すぐに淡々と答える。

「好きにさせるといい。アドリアナも望むなら、しばらくここに居てもいいぞ。……ただ、俺もときどき迎えに来るがな」

 その言い方は、まるで「公爵夫人を独占したい」独占欲の発露でもある。微かに照れながらアドリアナは微笑み、父を安心させるように頷いた。
 やがて音楽が再開し、場の空気が和やかに溶けていく。そして一人の住民が、「公爵閣下と夫人のために、ささやかな舞曲を演奏したい」と申し出た。

「そ、それは……わたくし、踊りなどほとんど……」

 アドリアナが戸惑っていると、ヴァレリウスが無言で手を差し伸べる。その手を取ると、ぎこちないステップながら、二人は音楽に合わせて広間をゆっくり回り始めた。
 氷のように冷たいと恐れられた公爵が、公衆の面前で妻と踊る——かつてなら考えもしなかった光景が、ここにある。領民たちは驚きと歓声を上げ、拍手が沸き起こる。

9. 溺愛の証——熱い抱擁

 踊りながらアドリアナは、ふとヴァレリウスの胸に頬を寄せた。彼の腕は想像以上に力強く、けれど優しく支えてくれる。ドレスの裾がふわりと舞い、視線を交わした瞬間、金色の瞳が微かに揺れる。
 これは愛なのだと、今なら確信できる。政略結婚がきっかけだったとしても、ここまで深く相手を思いやり、支え合い、互いの苦しみを乗り越えてきた日々が証明してくれている。
 音楽が終わり、踊りも終わる。だが、ヴァレリウスは手を離さず、アドリアナをそのまま抱き留めた。領民たちが冷やかし半分に歓声を上げる。アドリアナは顔を赤らめながら、微笑むしかない。

「……皆、見てますよ……」

「関係ない。お前は、俺の妻だ。」

 それだけ言うと、ヴァレリウスはアドリアナを引き寄せ、軽く額に口づけを落とした。波紋のように湧くどよめきと拍手。子爵は目頭を押さえ、騎士たちは嬉しそうに笑っている。
 こうして、疫病という大きな災難は未だ完全に去ったわけではないが、危機は乗り越えられ、ローラン家は復興へと進む。フライベルク家の悪事は露見し、王宮からも軽蔑される立場となった。
 公爵夫人アドリアナは、まぎれもなくこの領地の“救い”となり、氷の公爵と呼ばれるヴァレリウスは“妻を溺愛する男”として周囲の目に映るようになった——それが、すべてを締めくくる結末。

9-1. コーデリアへの“とどめ”

 エピローグ的な位置付けとして、その後のコーデリアについても触れておこう。彼女は父・フライベルク伯爵の謹慎処分に伴い、自身も領地の一角で縮こまった生活を強いられるようになったという。
 以前のように華やかなドレスに身を包むこともなく、夜会を開催する力も財政もなく、取り巻きも去っていった。彼女を慕っていたはずの貴婦人たちも、「あれだけ大言壮語していたのに」と呆れ顔で距離を置く。
 かつて蔑んだアドリアナが今や公爵夫人として輝き、疫病まで乗り越えた事実を耳にすると、コーデリアは悔しげに歯を食いしばったと伝えられている。これこそ、完全なる“ざまぁ”の行き着く先だろう。
 ——しかし、アドリアナ自身は復讐心を抱くわけでもなく、ただ運命の皮肉として受け止めるのみ。「いつか、コーデリア様も別の形で立ち直れればいいのだけど」と、ほんの少し祈る気持ちもある。

10. 本当の始まり——愛の誓い

 物語は終わりに近づいていた。
 疫病という試練を乗り越え、フライベルク家の陰謀を打ち砕き、ローラン家も一命を取り留めた。そして、何よりアドリアナとヴァレリウスは“夫婦”として真の絆を結んだ。
 ある晴れの日。ローラン子爵が回復したのを受けて、正式にアドリアナを「公爵家の夫人として、これからは心から送り出す」という声明を領民の前で発表した。これにより、子爵領の政治は段階的にローラン子爵自身の手に戻り、公爵家は陰から支援を続けていく形となる。
 アドリアナは改めて城都へ戻ることになった。すなわち、これまで政略上の形ばかりだった結婚生活を、本当の夫婦として再出発させるのだ。
 馬車に乗り込む直前、父はアドリアナの手を握りしめ、目に涙を浮かべて言う。

「……ありがとうな、アドリアナ。わしは、お前がここまで立派になるなんて思っていなかったよ。政略結婚だと押しつけ、挙げ句領地を崩壊寸前まで追い詰めて……情けない父だ。
 だが、お前は見事に立ち向かってくれた。公爵閣下には頭が上がらないが……どうか末永く、お幸せにな。……お前は誇りだよ」

「お父様……。そんな、私も何度も挫けそうでした。公爵様や、領民の皆さんに助けられただけなんです」

「いや、違う。お前自身が、一歩踏み出したからこそ、彼らを繋いだんだ。……ありがとう、そしてすまなかった。今度はわしが領地を守る番だ。もうお前に迷惑はかけぬ」

 そうして親子の間にわだかまりは消え、涙ながらに笑い合う。周囲の住民たちも拍手して見送ってくれる。かつては不信と不安に支配されていた町が、今は温かい祝福に満ちている。
 馬車に乗り込むと、隣にはいつものようにヴァレリウスが座っていた。冷然とした横顔のまま、手を差し伸べてくれる。その手を握った瞬間、アドリアナは胸が熱くなる。これから二人で帰る“家”は、ただの公爵邸ではない。真の夫婦としての日常が広がる場所なのだ。
 馬車が動き始め、窓の外には見送りの人々が小さくなっていく。アドリアナは小さく息を吐き、ヴァレリウスの肩にそっと頭を預けた。彼が一瞬驚いたように身を強張らせるが、すぐに柔らかな表情を取り戻す。

「……アドリアナ、お前は疲れているだろう。少し眠れ」

「はい。公爵様……ありがとう、これからもよろしくお願いします」

「……ああ。よろしく頼む」

 それは、かつて“愛など不要”と言い放った冷酷な公爵とは思えないほど、穏やかな返答だった。
 外で小鳥がさえずり、木々の緑が車窓を流れていく。アドリアナは瞼を閉じ、馬車の揺れに身を委ねながら、幸せの実感を噛みしめる。契約で始まったはずの結婚が、今やもう何の疑いもなく“愛”に満たされている。

エピローグ——愛とざまぁの果てに

 都に戻った二人は、さまざまな雑務や政務に追われながらも、隠さず互いを“溺愛”する生活を送るようになる。
 ——朝食の席では必ず顔を合わせ、少し照れくさそうに言葉を交わす。
 ——執務室では必要最低限の会話に見えて、実はアドリアナがコーヒーを淹れて、ヴァレリウスがその手を軽く握る。
 ——夜になれば、二人が同じ部屋で過ごすことすらも日常となり、どこから見ても“新婚”同然の甘い空気が漂う。

 王宮では、その噂が貴婦人たちの間で広まり、「かつての氷の公爵がまさか……」「あの夫人が公爵をあそこまで変えたなんて……」と驚嘆の声が上がった。
 フライベルク家が落ちぶれ、コーデリアが一切社交界に顔を出せなくなった事実を知る人々は、「まさかあのコーデリアを負かすなんて」「公爵夫人って意外と怖いわね……」などと噂しながらも、アドリアナを密かに敬うようになる。

「ええ、あの方はまさに“公爵夫人”だったわ。フライベルク家の悪意をひっくり返し、疫病まで止めてしまったもの。誰も逆らえないわよ」

 誰もがそう評価せざるを得ない。ローラン家を救うと同時に、公爵家の名誉を守り、フライベルク家の陰謀を砕いたのだから。
 アドリアナ自身は、そんな評価をあまり意識していない。ただ、ヴァレリウスとともに日々を重ね、支え合い、領地や国のために働くことが充実感の源なのだ。

エピローグ・後日譚

 ある静かな午後。王都の外れにある公爵邸の庭で、アドリアナは春の訪れを感じながら小さな苗木を植えていた。領地から取り寄せた花の種を育て、いつか皆が楽しめるようにしたい、というささやかな願いだ。
 そこへヴァレリウスが足音もなく現れ、「お前、土いじりなんて慣れてるのか」とやや呆れたように声をかける。アドリアナは笑顔で振り返り、

「ええ、子爵領で育った頃を思い出します。……それから、公爵様。少し前に届いた手紙ですが、ローラン家の畑が今年は豊作の兆しだとか。お父様も元気にしていて……」

「それは良かった。……子爵が動けるなら、財政再建も進むだろう。俺としては面倒が減る」

 そう言いつつ、彼は心底安心した様子を隠せない。かつての冷酷な雰囲気はすっかり影を潜め、今は穏やかな空気をまとっているように見える。アドリアナは手を洗い、彼のそばに歩み寄る。

「面倒が減るって言い方……もうちょっと素直に喜んでくれてもいいのに」

「……俺は常に合理的なだけだ。お前の家族が回復するなら、それは当然嬉しいことだが、言葉にするのは苦手なんだ」

「ふふ、それでも前に比べればだいぶマシになりましたよ、氷の公爵様」

「氷の公爵……。お前がそう呼ぶな。もうその呼び名は要らんだろう」

「そうですね。……わかりました。なら、もう少し愛のこもった呼び方を考えましょうか?」

 アドリアナが冗談めかして言うと、ヴァレリウスは目を逸らしながらわずかに顔を赤らめる。その仕草さえ愛おしいと感じるくらい、二人の仲は深まっている。
 長い回り道を経て、ようやくたどり着いたこの穏やかな日々。かつては“政略結婚”と呼ばれ、愛などないと言われていた夫婦が、今では誰よりも固い絆と深い情で結ばれている。

終幕

 かくして、アドリアナ・ローラン(アイゼンベルク公爵夫人)と、“氷の公爵”ヴァレリウス・フォン・アイゼンベルクの物語は、ここに幕を下ろす。
 政略結婚という名の冷たい契約は、幾多の陰謀と苦難を乗り越え、いつしか熱い溺愛へと変わった。
 嘲笑われた出自も、苦しめられたローラン家の危機も、すべて二人の行動力と愛が救い上げる形となり、フライベルク家は完全に失脚。コーデリアは自ら招いた“ざまぁ”に苛まれながら暮らすほかなくなった。
 周囲が驚くほどの幸せを手にした公爵夫妻は、愛を知らなかった青年公爵と、愛を渇望しながら故郷を守ろうとした令嬢が、互いの心を満たす運命の相手になったのだ。

——そして、彼らはいつまでも寄り添い合いながら、国と領地を支え合い、愛し合い、幸せな未来を共に築いていく。

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