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第4章 胸に灯る火と、こぼれる愛
しおりを挟む1. 迫りくる影——ローラン家からの知らせ
初夏の朝。アイゼンベルク公爵邸の庭には、鮮やかな緑と花々が広がり、噴水の水面が光を弾いてきらめいている。
それは一見平和な光景だったが、アドリアナの胸中は穏やかではなかった。なぜなら、先ほど執事長サミュエルから「ローラン子爵家の使者が来ている」と知らされたからだ。
アドリアナの実家・ローラン子爵家は、近年の増税や領地経営の失敗で財政が逼迫している。少し前にも父親から「アイゼンベルク家の権威を借りて融資や援助を得られないか」という手紙が届いていた。そして今度は、使者を直接こちらへ寄越すほど切羽詰まっているのだろう。
ヴァレリウスからは「ローラン子爵家の経済問題を安易に支援する気はない。ただし正当な理由があるなら相談には乗る」と告げられていたが、実際に事が動き始めると、アドリアナは嫌な胸騒ぎを覚えずにはいられない。
使者が応接室で待っているという報告を受け、アドリアナは覚悟を決めて足を運んだ。ドアを開けると、そこにいたのはローラン家の従者を名乗る壮年の男で、少しやつれた様子ながら礼儀正しく頭を下げる。
「奥方さま。ローラン子爵の命により参りました。……実は、子爵が深刻な病に伏せっており、できるだけ早く奥方さまのお力添えが欲しいとのことで……」
「父様が病……? そんな……」
思わず動揺が顔に出る。数週間前に届いた手紙では、そこまで体調を崩しているようには感じられなかったが、あるいは急変したのか。
使者は紙を取り出し、アドリアナに差し出した。それは父の手紙というより「援助要請状」に近いものだった。
「アドリアナ。わがローラン家は、もはや自力で財政を立て直すことが困難だ。
領内には疫病が発生しかけており、医療費の捻出もままならぬ。子爵である私が動けない今、どうかお前の力で公爵家に支援を取り付けてほしい。
ローラン家の未来は、お前にかかっている。頼む……」
文面から、領民の生活も危ぶまれるような事態であることがうかがえた。しかも「疫病が発生しかけている」とは聞き捨てならない。
病床の父が多少大げさに書いている可能性はあれど、もし本当に流行り病が広がれば、ローラン子爵領だけでなく周辺地域にも大きな被害が及ぶかもしれない。そうなれば王国全体に波紋が広がりかねない。
アドリアナは使者に向かって、
「わかりました。……その書状、確かにお預かりいたします。公爵様にもお伝えしますので、少しだけお時間を。詳しい状況を整理して、改めて連絡いたします」
と答える。使者は深々と頭を下げて退出していく。
すると、ちょうどそのタイミングでヴァレリウスが応接室のドアを開けて現れた。彼はどうやら、廊下で話の一部始終を立ち聞きしていたのかもしれない。金色の瞳を険しく細め、アドリアナを見やる。
「聞いたぞ。ローラン家がまた援助を求めてきたそうだな。今度は疫病の恐れがある、と」
「はい……。公爵様にお話ししなくてはと思っていたところです。私も、ただの金銭目的なら厳しく対応すべきだと思いますが、疫病となると見過ごせない気がして……」
ヴァレリウスは少し考え込むように視線を落とし、やや苛立ちを含んだ声で答える。
「……疫病が広まれば、王都にまで影響が出るのは間違いない。ローラン家単独では対処しきれないだろう。最悪の場合、貴族院や王宮が動くかもしれんが、時間がかかる。だからこそお前に頼ろうとしているのだろうが……」
「それで、公爵様はどうなさるおつもりですか。ローラン家が窮地にあるのは間違いないですが、もしただの誇張だとしたら……」
「信憑性を確かめる必要がある。……実際に人を送って現地を調べさせる。俺も、余裕があれば直接行くことを検討する」
アドリアナは思わず目を見張る。ヴァレリウスは自分で領地を視察するのを厭わないタイプだが、まさかローラン子爵領へも足を運ぶ気になってくれるとは。
彼はそれを察したのか、そっけなく言い足す。
「俺には領民を守る義務がある。国家の安寧を脅かす事態なら、放置できん。それだけだ。……とはいえ、フライベルク家や王宮の動きを見る必要もあるからな。すぐに出発はできない」
「ありがとうございます、公爵様……」
「礼を言うな。お前の実家がどうなろうと、俺が動くのは合理的な理由があるからに過ぎん」
そう言いつつも、アドリアナの胸には一筋の光が差す。どんな形であれ、彼は彼女の“家”を見捨てるつもりはないらしい。政略結婚であっても、最低限の責任感は示してくれる。
アドリアナは深く礼をして、その書状をヴァレリウスに差し出した。こんな混乱の時期に彼と協力して乗り切れるかどうか——そこに、小さくとも希望を見いだせる気がした。
2. フライベルク家の陰謀——思わぬ招待状
ローラン子爵家の件で揺れる中、王宮から一通の招待状が届いた。差出人はフライベルク伯爵家。コーデリアの父、リヒト・フォン・フライベルク伯爵が、“彼の領地で開催する小規模な夜会”への参加を呼びかけてきたのだ。
アドリアナがその招待状を開封すると、驚くべき文面が記されていた。
「拝啓 アイゼンベルク公爵ヴァレリウス閣下、ならびに公爵夫人アドリアナ様
我がフライベルク伯爵家では、来たる晩秋の祝祭に際し、王族や貴族を招いた夜会を開く運びとなりました。
伯爵領の繁栄と文化交流を深める場にしたく、是非ともアイゼンベルク公爵夫妻にご臨席いただきたいと存じます。
コーデリアも、幼馴染たる公爵様との久方ぶりの会話を大いに心待ちにしております。
盛装にてお越しくださいませ。
コーデリアの名がしっかりと盛り込まれているあたり、彼女が主導した夜会であることは明らかだ。しかも“夫婦での参加”を求めているのが、かえって胡散臭い。
王宮の昼餐会で痛い目を見たフライベルク家が、今度は自領に招いて何を企んでいるのか……アドリアナには嫌な予感しかしないが、ヴァレリウスにこの招待状を見せると、彼は意外にも「参加する」と言い放った。
「公爵様……本気ですか? フライベルク家の領地なんて、まさに相手の“庭”ですよ。あちらに有利な状況を作られて、また再婚説のような厄介ごとを仕掛けられるかもしれません」
「逆だ。だからこそ乗る価値がある。連中がどれほど馬鹿げた計画を立てようと、こちらが正面から受け止めてやればいい。万が一、あからさまな陰謀を試みるなら、王宮への報告という手段もある。……むしろこちらが“余裕を見せてやる”ほうが得策だ」
ヴァレリウスの言葉には揺るぎない自信と、相手を試すような冷徹さがうかがえた。アドリアナは内心で不安を拭えないが、彼がそこまで決意しているのなら、もはや止められない。
「……わかりました。私もご一緒します。コーデリア様に負けないように、しっかり心積もりをしておきます」
「フン、いちいち“負ける”などという発想は捨てろ。お前は公爵夫人として堂々としていればいい。それ以上を求めるつもりはないが、頼りなく震えていては相手の思う壺だ」
「……はい」
どこか突き放すようにも聞こえるが、アドリアナには“怯えるな”という叱咤激励に感じられた。
こうして、フライベルク伯爵家の夜会に出席することが決定。ローラン家への対応もさることながら、新たな火種を抱えたまま時間が過ぎていく。
3. 夜会の幕開け——揺れるコーデリアの思惑
フライベルク伯爵領へ向かう道は、アイゼンベルク公爵邸から馬車で半刻ほどの距離にある。コーデリアの父が管理するこの領地は比較的豊かで、王都からも近いことから、昔から社交の場として利用されることが多かった。
当日、アドリアナは深緑のドレスを纏い、髪をゆるくまとめ上げて上品な髪飾りをつけている。派手さを控え、素材の良さや仕立ての丁寧さで“品”を表すように工夫したつもりだ。
馬車で隣に座るヴァレリウスは、いつもの漆黒の礼装で、金糸の刺繍が凛々しさを際立たせていた。表情は相変わらず冷たいが、ドアを開ける際にアドリアナを軽くエスコートしてくれるなど、最低限のマナーはきちんとこなす。
フライベルク伯爵邸の正門に到着すると、案の定コーデリアが出迎えに出てきた。付き従う使用人たちは整然と並び、まるで“ショー”のように公爵夫妻を迎え入れようとしている。
「まあ、ヴァレリウス。よく来てくれたわね……そして、公爵夫人アドリアナ様も。ようこそ、私の家へ」
コーデリアはきらびやかな金髪を結い上げ、露出度の高い真紅のドレスを着こなしている。彼女らしい艶やかさが際立つ装いだが、どこか“狩り”に挑む猛禽類のような気迫も漂わせる。
ヴァレリウスは飄々とした態度で、
「招待されて来たまでだ。……伯爵殿はいるのか?」
「もちろんよ。父は奥の部屋にいるわ。さっそく二人を案内させるから、先に父へ挨拶してもらってもいい? ……あとでしっかりお話ししましょうね、ヴァレリウス。昔話とか、いろいろとね」
わざわざ「昔話」と強調して、アドリアナを挑発しているようにも見える。しかし、アドリアナは動揺を表に出さず、コーデリアに会釈を返した。
「私たちも楽しみにしていますわ。今日は招いていただき、ありがとうございます」
「ええ、ごゆっくりね」
コーデリアは誘導のために使用人を呼び、伯爵との対面へと促す。ヴァレリウスは躊躇なく廊下を進み、アドリアナもそれに続いた。
フライベルク伯爵は、豪華な客間にて待ち構えていた。中年太りの体型に、油断のない眼光が印象的な男だ。アイゼンベルク家とも旧知の間柄とはいえ、あまり良い評判は聞かない人物でもある。
伯爵はヴァレリウスと軽く挨拶を交わし、
「公爵閣下、そして夫人。遠方よりようこそ。……この夜会は小規模とはいえ、王宮や貴族院に関わりを持つ方々も多数お越しになります。ぜひ閣下のご高見をいただければ幸いです」
と社交辞令を述べる。だが、その笑みの裏には何を考えているかわからない不気味さがあった。
ヴァレリウスは少しも気圧されず、「夜会を楽しませてもらうが、下らぬ干渉は遠慮願いたい」と暗に牽制の言葉を放つ。伯爵は苦笑を浮かべ、
「まさか。公爵閣下が快適に過ごせるよう尽力いたします。どうかお気を楽に、奥方さまもね」
とさらりと受け流した。やはり一筋縄ではいかない相手らしい。
その後、部屋を出て“夜会”の会場となる大広間へ向かう途中、アドリアナは何人かの来客と挨拶を交わした。
フライベルク家の夜会には、王宮関係者や近隣の貴族たちが招かれているようだが、あまり大規模ではなく、“選ばれた人”しか呼ばれていない印象だ。つまり、伯爵家にとって都合のいい人脈ばかりが集まっている可能性がある。
大広間に足を踏み入れると、上質なワインや軽食が用意され、社交好きな貴婦人たちがドレスをひらめかせて笑い合っていた。男性陣は領地経営の話や、騎士団の情報などを語り合う声が聞こえる。
しかし、その華やぎの中に漂う空気には、どこか“探るような視線”が混ざっていた。アイゼンベルク公爵とその夫人をじろじろ観察し、あるいは陰で噂を囁く人々がいるようだ。
ヴァレリウスは相変わらず平然としているが、アドリアナは内心の警戒を緩められない。
4. 囁かれる陰口——浮き彫りになる狙い
夜会が始まってしばらくすると、貴族たちは思い思いに談笑や情報交換を楽しみ、音楽隊の演奏も始まって会場はさらに賑わう。そんな中、コーデリアがそろそろ動き出すだろう——アドリアナはそう感じ取っていた。
その予感はすぐに的中する。コーデリアはわざとらしく複数の貴婦人を引き連れ、ホールの一角からアドリアナを見やりながら、くすくすと笑い声を立てる。
アドリアナが不快に思いつつも視線を外さないでいると、貴婦人の一人が「あら公爵夫人、お話があるのですけど」と近づいてきた。笑顔だが、その目は試すような輝きを帯びている。
「公爵夫人、最近ローラン家のご領地に疫病が広がりつつあるとか……本当なんですって? まぁ大変。王宮にも被害が及ぶかもしれないという噂を耳にしましたわ」
やはり、ローラン子爵領の話がここまで伝わっている。情報の広がりは早いし、貴族社会はスキャンダルや不安定要素を好む傾向がある。
アドリアナは動揺を抑え、落ち着いた声を保つ。
「はい、私も最近知ったばかりですが、詳しい実態はまだ調査中です。もし本当に疫病が拡大しかけているのなら、私たちも早急に対策を講じる必要があるでしょうね」
「まぁ……それはたいへんですわね。アイゼンベルク公爵家がお助けになるんですの?」
含みのある問いかけ。そこにコーデリアの声がかぶさる。
「やだ、奥さまったら急に核心を突くんだから。でも、私も興味あるわ。だって、ローラン子爵家は経済的に苦しく、疫病への対応など到底無理でしょう? ……そんな家に嫁いだ公爵夫人って、今どんなお気持ちなのかしらね?」
コーデリアがわざとらしく“困っている子爵家”を持ち出し、「そんな家から来た公爵夫人は何の役にも立たないのでは?」と揶揄しているわけだ。
アドリアナは胸の奥に怒りを覚えながらも、それを飲み込み、丁寧に言い返す。
「お気持ち……。そうですね。確かにローラン家は厳しい状況にありますが、公爵様と私で協力し、できる範囲の支援や調査を行うつもりです。貴族として当然の責務かと」
「へぇ……“公爵様と私”で? それは心強いわね。でも、私には信じられないのよね。ヴァレリウスがそこまで手間をかけるなんて。単にあなたが無理を言ってるだけじゃないかしら」
コーデリアが挑発を繰り返すのを聞いていた近くの貴婦人たちが、くすくすと笑い声を立てる。
確かに、ヴァレリウスは冷徹と呼ばれる公爵で、他者に慈悲を垂れるタイプではないというイメージが強い。この場では、それが嘲笑のネタになっているのだ。
アドリアナはそれでも表情を変えず、強い口調で応じる。
「公爵様は義務を放棄するような方ではありません。彼が必要と判断すれば、必ず動いてくださいます。私の“無理”などではなく、合理性に基づく決断です」
「合理性ね……そう、ヴァレリウスの行動はいつも合理性に基づく。愛や情など一切関係ないわ。でしょ、アドリアナ公爵夫人?」
そこで、コーデリアの瞳が細まり、いやらしい笑みを浮かべる。彼女は周囲にわざと聞こえる声で続けた。
「つまり、あなたたちの結婚も“合理的な契約”に過ぎない。ローラン家が危機に瀕しているなら、それは“契約”上なんとか手を貸してあげるかもしれない。でも、そこに“愛”なんて存在するのかしら? ……私には到底そうは思えないのだけど」
痛いところを突かれた。アドリアナ自身、ヴァレリウスの内心を完全には掴めていない。彼がなぜここまで行動してくれるのか、それが愛情によるものかどうか確信を持てない。
コーデリアの言葉はまさしく核心をえぐるものだ。周りの貴婦人たちが「確かに……」「愛があるようには見えないわね」などと囁き合う。
アドリアナはどう切り返すべきか迷ったが、そこへ割って入る声があった。
「愛など、他人が口を挟むことではないだろう。主観的すぎる価値観を押しつけるな、コーデリア」
低く冷たい響き。ヴァレリウスが、いつの間にかアドリアナの背後に立っていた。彼が周囲に睨みを利かせると、貴婦人たちは一斉に気圧されるように黙り込む。
コーデリアも目を丸くしつつ、すぐに口角をつり上げた。
「あら、ヴァレリウス。私と夫人との会話、盗み聞きするのがお好きなの? ——でも、あなた自身が合理的な男だってこと、皆わかってると思うわ」
「合理的であることと、“妻を守ること”は両立する。お前の言葉に翻弄されるような俺ではないぞ」
そう言い放つヴァレリウスの声には、確かな威圧が宿っている。周囲の貴族たちは彼の迫力に圧倒され、ヒソヒソと後ずさるようにして離れていく。
アドリアナの胸は大きく波打つ。彼の言葉は「妻を守るのが自分の義務だ」と言っているに過ぎないかもしれないが、今はそれでも十分に力強い。
一触即発の雰囲気のまま、ヴァレリウスはきびすを返し、
「……アドリアナ、来い。こんな連中の相手をする必要はない」
と促す。アドリアナは「はい」とだけ答え、彼の腕に軽く手を添えてその場を離れた。
コーデリアは忌々しそうに唇を噛んでいるようだったが、追ってくることはなかった。周囲の目もあり、あからさまにヴァレリウスと対立すればフライベルク家の面目を潰しかねないためだろう。
5. 夜会の暗部——思わぬ客との対面
ヴァレリウスとアドリアナが別の部屋へ移動し、少し落ち着こうとした矢先、使用人が慌てた様子で報告に駆けつけた。
「こ、これはアイゼンベルク公爵様……! フライベルク伯爵様がお呼びです。奥の小間で“特別なお客様”との面会の場を設けておりますので、ぜひ公爵夫妻もお越しくださるように、と」
「特別なお客様……? 誰だ」
「それが、ローラン子爵……様の名を聞きましたが……詳細は……」
ローラン子爵、つまりアドリアナの父が、このフライベルク家の夜会に来ているというのか。だが、父は重い病と聞いていたはず。まさか、フライベルク家と結託して何かを企んでいるのでは……。
アドリアナは胸がざわつく。ヴァレリウスも目を細め、
「行ってみるしかないな。……お前も来い」
「はい……」
そして二人は使用人に案内され、奥まった部屋へ足を踏み入れる。そこは夜会の喧騒から離れた静かな空間で、昼間なら執務室として使われるのか、簡素な机と椅子が置かれていた。
奥にいたのは、フライベルク伯爵とコーデリア、そしてもう一人……薄暗い照明のもと、椅子に深く腰掛けている初老の男性。
アドリアナがそっと顔を覗き込むと、その男は確かにローラン子爵その人だった。だが、以前よりずっと痩せ、頬がこけ、顔色が悪い。服はそれなりに着飾っているが、まるで死者が起き上がったような病的な姿だ。
ローラン子爵は、アドリアナに目を留めると、やや虚ろな声でつぶやく。
「……アドリアナ……やっと……やっと会えた……」
「父様……本当に来られていたの? こんなところで何を……」
「フン」
フライベルク伯爵が鼻を鳴らしながら口を開く。
「ローラン子爵は重病ながら、王宮からの助けを得るためにも、一時的に外出を強行されたのですよ。そうでしょう、子爵?」
「あ、ああ……。わ、わしは、すでに先が長くない……。それなのに、疫病まで出ているなんて、領地が危ない……。……アドリアナよ、どうか、どうか公爵様に頼んで……もっと……金を……」
子爵の口から出るのは、ひたすら「金を……」という乞いの言葉ばかり。よほど追い詰められているのだろうが、その様があまりに痛々しく、アドリアナは思わず目をそらしたくなる。
一方、フライベルク伯爵やコーデリアは、その姿を憐れむ風もなく、どこか冷ややかに見つめている。まるで、わざわざこの場に呼び出して“ローラン家の惨状”をアイゼンベルク公爵夫妻に見せつけるための狂言のようにも思える。
ヴァレリウスは、そんな薄暗い雰囲気の中、まったく表情を変えずに言い放つ。
「ローラン家の現状を、こんな形で俺に見せつけるとは……。フライベルク伯爵、貴様の狙いはなんだ?」
「おや、狙いだなんて……。ただ、ローラン子爵が“公爵様に直に会ってお願いしたい”と仰るので、私どもは場所をお貸ししただけです。……それとも、公爵様のほうが善後策をお考えくださるのでは?」
伯爵の眼光は鋭く、決してただの協力者というわけではないことがありありと伝わってくる。
まるで「ローラン家を助けるかどうか、ここで選べ。どちらにせよ、お前たちの弱みを握った」とでも言いたげだ。
アドリアナは腹立たしさと悲しみで言葉を失う。そこへ、ヴァレリウスが静かに息を吐き、ローラン子爵のやつれた姿を見据えて言う。
「ローラン子爵。まずは体を治すのが先だ。帰って安静にしろ。疫病対策の件は俺が調査させている。いずれ正式に対応を決める。……金が欲しいなら、それなりの条件を提示しろ。タダではやらん」
子爵は目を泳がせながら、
「た、ただでくれと言っているわけでは……ない……。返せるあてもないが、わしだって……ローラン家を守りたい……。アドリアナ、頼む……」
アドリアナはどう返すべきか戸惑う。こんな場所で父がすがるように頼まれても、コーデリアと伯爵が高みの見物をしている状況では、何を言っても利用されるかもしれない。
「……父様、とにかくお体が一番大事です。ここで無理をする必要はありません。公爵様も調べてくださると言っていますから……」
「……ああ……わかった……。すまない、すまない……」
子爵は力なくうなだれ、再び椅子に沈み込む。
その様子を眺めていたコーデリアが、わざとらしく扇子を広げ、口元を隠すように笑う。
「これでわかったでしょ、アドリアナ・ローラン……じゃなかったわ。アドリアナ・アイゼンベルク。“あなたの出自”がどれほど問題を抱えているか。公爵夫人とは名ばかりで、実家が崩壊しそうなんですもの。周囲が見れば、誰だって『あんな子爵家の娘、見捨ててしまえばいいのに』って思うわ」
「コーデリア……!」
堪えきれない怒りが沸き上がる。だが、ここで取り乱しては相手の思う壺だ。アドリアナは唇を震わせながらも必死に耐える。
すると、ヴァレリウスがコーデリアに冷たい視線を投げ、一言だけ唸るように言った。
「——下衆が」
「……なっ」
コーデリアの目が一瞬見開かれる。伯爵も「さすがに言い過ぎだ」と言わんばかりに「公爵閣下、それは……」と焦った声を漏らす。だが、ヴァレリウスはさらにきっぱりと言い放つ。
「コーデリア、そしてフライベルク伯爵。ローラン子爵をこんな形で引きずり出し、俺たちに晒すような真似……お前たちの品位が疑われるぞ。自ら醜さを露呈しているとも気づかずに、恥を知らないのか」
その言葉は、大広間での“品のある夜会”とは無縁の苛立ちに満ちていた。アドリアナは初めて見る、ヴァレリウスの怒りの形を感じる。
コーデリアは明らかに動揺しつつも、強がるように「私たちは善意で……」と口走るが、伯爵がそれを制し、「これ以上ここで口論しても仕方がない」と割り込む。
「公爵閣下……今日は夜会の場ですし、これ以上は無粋でしょう。ローラン子爵は私どもが手配して宿へお連れします。どうかご安心を。……後日改めて、お話をさせていただければ幸いです」
「……勝手にしろ」
ヴァレリウスはそう言い捨てると、アドリアナの手を取り、部屋を出る。
廊下に出た瞬間、アドリアナは怒りと悔しさで目が潤んだ。父のあの姿をわざわざ呼び出し、自分の前に晒したフライベルク家の意図があまりに悪辣で腹立たしい。
けれど、ヴァレリウスはそれを見越したように低く呟く。
「泣くな。あんな連中に隙を見せるな」
「……っ……はい」
何とか感情を抑えてうなずく。ここで涙を流してしまえば、コーデリアたちを喜ばせるだけだ。
そのままヴァレリウスは足早に大広間を通り抜け、帰り支度をしようとする。夜会は途中だが、もはやいる必要はないという判断なのだろう。
アドリアナも同意見だった。何の得もなく、むしろ嫌な思いばかりが増えるだけだ。
6. 氷の公爵の抱擁——深まる絆
フライベルク伯爵邸を後にするや否や、ヴァレリウスは馬車の中でも一言も喋らず、険しい表情を保っていた。アドリアナも無言のまま、ただ俯いている。二人とも、夜会で見せつけられた嫌な光景が頭を離れないのだ。
やがて公爵邸に到着し、玄関で降りる際、ヴァレリウスはアドリアナの手を支えたまま軽く息をつく。
「……悪かったな。あんな場にお前を連れていって」
「いえ。私こそ、余計に取り乱してしまって……」
「……俺がもっと早くコーデリアたちの腹を探れていれば、こんな形にはならなかったかもしれん。それに、ローラン子爵の病状があそこまで深刻だとは思わなかった」
普段は傲慢なまでの自信を漲らせるヴァレリウスが、今は少しだけ自分を責めるような口調だ。
アドリアナは「そんなことありません」と首を振る。
「公爵様が悪いわけではありません。フライベルク家のやり方が卑劣だったんです。……ただ、ローラン家のことは私もどうすべきか……」
そのとき、彼が突然アドリアナの手首をぐいっと引き寄せる。バランスを崩しそうになった瞬間、ヴァレリウスの腕がアドリアナの腰をしっかり抱いて支えた。
あまりに急な接近に、アドリアナは思わず息を呑む。彼の体温と香りを、これほど近くに感じるのは初めてかもしれない。
「……な……公爵様……?」
「黙れ。……少しだけ、こうさせろ」
低い声には、どこか切羽詰まったような色が滲む。いつもは冷たい氷の公爵が、こんな形でアドリアナの体を引き寄せるなど、まるで別人のようだ。
アドリアナは動揺しながらも、その胸の奥にわき上がる鼓動を抑えきれない。拒絶する理由はない。むしろ、この腕の中にいると、不思議な安心感すら覚える。
「……あんな連中の思惑など、いずれ明らかにしてやる。ローラン家のことも、全部な。俺はお前を放り出すつもりはない。コーデリアにも言っただろう。お前は俺の妻だ」
それは冷酷なまでの決意表明でもあったが、同時にアドリアナにとっては痛いほど嬉しい言葉だった。“俺はお前を放り出さない”——それは契約や合理性を超えた、一種の誓いにも聞こえる。
頬が熱くなるのを感じながら、アドリアナは小さく頷く。
「はい……私も、公爵様と一緒にこの事態を乗り越えたいです。ローラン家のことも、フライベルク家のことも……」
「そうか。なら、まずは休め。……お前も疲れただろう。俺も今夜は執務を打ち切る。……馬鹿げた夜会だったが、あれで連中の本性が一層明らかになったのは収穫だ」
言い捨てると、ヴァレリウスはスッとアドリアナの体から腕を離す。その短い抱擁は、アドリアナの心を大きく揺さぶるには十分すぎる時間だった。
公爵邸の使用人が遠巻きに見ていたかもしれないが、どうでもいいと思えた。何より、ヴァレリウスが自分を抱き寄せてくれた——その事実が、愛のない政略結婚という最初の認識を少しずつ覆していく。
7. ざまぁの序章——フライベルク家への対抗策
翌日、ヴァレリウスは早朝から執務室に籠もり、フライベルク家やローラン家の問題に関する資料を取り寄せ、侍従や家令と打ち合わせを重ねていた。
アドリアナも呼び出され、机上に並んだ書類を覗き込む。そこには、王宮の内情に詳しい人物から得た情報や、フライベルク伯爵の資金繰り、領地の実態についての報告が並んでいた。
驚いたことに、フライベルク家もまた表面的には豊かに見えるが、裏ではかなり無理をしているらしい。コーデリアが常に豪華なドレスを纏い、夜会を開くなどしているのも、“伯爵家の威厳”を必死に保つための虚勢とも言われている。
加えて、王宮内でフライベルク伯爵が推し進めている“あるプロジェクト”——それは“北方領の開発”を名目にした利権獲得の計画らしく、そのためにアイゼンベルク公爵家の領地との繋がりを利用しようとしている節がある。
つまり、コーデリアとの再婚説まで流したのも、アイゼンベルク家を取り込むための工作だった可能性が高い。
ヴァレリウスは資料をバサリと置き、低く呟く。
「フライベルク家も瀬戸際にあるのは間違いない。ローラン家を利用することで、俺たちを引きずり込もうとしたのかもしれん。……実際にローラン子爵をあの夜会に呼び出し、強引に“どうするか”突きつけようとしたのだろう」
「そんな……。そこまでして……」
「だが、やり方が悪辣すぎる。王宮がもし知れば、フライベルク家は不正な手段で地位を守ろうとしたとみなされかねない。……俺はそこを突くつもりだ」
アドリアナは目を見開く。つまり、ヴァレリウスはフライベルク家の“弱み”を探り出し、王宮に告発する可能性も示唆しているのだ。
コーデリアがローラン子爵を利用してアドリアナを揺さぶったのと同じように、今度は逆にアイゼンベルク公爵家がフライベルク家を“追い詰める”番になりつつある——“ざまぁ”の気配が見え始める。
もっとも、彼があからさまに“ざまぁ”を狙うタイプではない。あくまで状況を見極め、適切なタイミングでフライベルク家の暴走を食い止めるための一手だろう。
その後、ヴァレリウスは苦渋の表情でアドリアナに視線を向ける。
「しかし、そのためには“ローラン子爵領の疫病”が実際にどれほど危険なのか、早急に確かめねばならない。もし大規模な拡大が始まれば、フライベルク家との争いどころではないからな」
「はい……私も一度戻ってみようかと思っています。父様があのような状態では心配ですし、疫病対策の現場を知ることで、公爵様のお手伝いができるかもしれません」
ヴァレリウスは少しの沈黙のあと、意外にもあっさりと首を縦に振る。
「……いいだろう。だが、お前一人では危険だ。領内の事情がわからない以上、俺の部下を数名つける。万が一、感染症リスクが高まっていれば、すぐに退避しろ」
「ありがとうございます。公爵様……でも、公爵様ご自身は……」
「俺も向かうつもりだが、王宮との調整がある。フライベルク家の動向も見定めなければならない。……先にお前たちが現地を確認し、報告を寄越せ。俺はそのあとで大人数を率いて行く」
そこには確固たる指揮官の意志があった。アドリアナは覚悟を決め、「はい」と強く頷く。これがローラン家の危機を救うための第一歩になるかもしれない。
8. そして、来るべき嵐へ
こうして、アドリアナは数日のうちにローラン子爵領へ向けて出発する準備を進めた。実家の危機をこの目で確かめ、疫病や財政難にどう対処すればよいのか考える。
一方で、フライベルク家への“ざまぁ”展開が近づいている予感がある。ヴァレリウスはフライベルク伯爵の不正や裏工作を王宮に示すため、根回しを密かに進めているようだ。もしうまくいけば、コーデリアや伯爵が今までアドリアナやローラン家を嘲弄してきたツケを払うことになるだろう。
だが、その前に越えなければならない大きな壁が“ローラン子爵領の疫病問題”だ。もしこれを乗り切れなければ、アイゼンベルク家もフライベルク家も関係なく国中が混乱する可能性がある。さらに、アドリアナにとっては父の命がかかっている深刻な状況でもある。
出発前夜、アドリアナは自室で荷造りを確認していると、ノックの音が聞こえた。ドアを開けると、そこにはヴァレリウスが立っている。
彼は相変わらず無表情ながら、淡い光に照らされた金色の瞳が、どこか不安げにも見えた。
「……明日、行くんだな」
「はい。危険かもしれないのは重々承知しています。でも、見過ごすわけにはいきません」
「……そうか。……気をつけろ。部下に無理を言うな。何かあればすぐに撤退しろ」
それだけ言うと、彼は踵を返そうとしたが、途中で立ち止まる。後ろ姿のまま、少し低い声で言葉を継いだ。
「俺は……お前を守らねばならない。これ以上、不幸な目に遭わせたくない」
「公爵様……」
「だが、全てを同時にこなすのは難しい。王宮にも行かねばならん。お前をそばに置いておくのが最善だが、今はお前の意思を尊重する。……お前を信用しているからな」
アドリアナは、その言葉に胸が熱くなる。あの冷たい公爵が、自分を“信用している”などと口にする日が来るとは思っていなかった。
「ありがとうございます……。私も、公爵様のことを心から信頼しています。必ず戻ってきますから」
「……ああ。待っている」
そうして、短い会話を終えたヴァレリウスは去っていく。
アドリアナは静かにドアを閉め、胸に手を当てて深呼吸する。これから迎える危機と波乱を乗り越えれば、きっと何かが変わる。政略結婚だった二人の間に、もう言い訳できないほどの感情が芽生えようとしているのを感じるから。
そして彼女は決意する。フライベルク家やコーデリアへの“ざまぁ”だけではない。自分の実家ローラン家も救い出し、さらに公爵夫人としてヴァレリウスの役に立ちたい——それが、彼への感謝と愛に報いる唯一の方法だと信じて。
エピローグ——さらなる激動へ
こうして、アドリアナは領地へ向けて出発し、ヴァレリウスは王宮での政治工作に臨むことになる。
フライベルク家は“北方領の開発利権”を手に入れようと暗躍し、コーデリアは再びアドリアナを陥れる画策を続けている。
ローラン子爵は重病の身でありながら、最悪の場合は領地の崩壊にも繋がる病疫のリスクを抱えている。
幾重にも絡み合う問題を乗り越えた先に、愛のないはずの契約夫婦が“溺愛”へと至る道筋と、“ざまぁ”の痛快な逆転劇が待っている。
はたしてアドリアナが実家を救い、フライベルク家を逆に追い詰める日は来るのか。そして、“氷の公爵”ヴァレリウスがアドリアナに向ける真の想いは、どのように示されるのか——。
——次なる幕は、彼らの運命を大きく揺さぶる嵐を伴って開かれるだろう。
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