傍若無人の悪役令嬢 ―幸せになりたいなら黙って私に従いなさい―

しおしお

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第8話 不正摘発と、支配ではなく“信頼”による掌握

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 新市街の入居が始まって数日後。
 公営住宅の前には、番号札を持つ住民たちが整然と列を作り、
 役人たちが配布書類と鍵を忙しなく手渡していた。

「24番の方、こちらへどうぞー!」
「次、25番ー!」

 混乱もなく、むしろ“整備された社会の始まり”を感じさせる光景。しかし――。

「お嬢様!!また不正者が!!」

 役人が血相を変えて駆け込んできた。

「今度は何ですの?」

「住居を二軒所有している裕福層が……
 “番号札を失くした”と偽り、再発行を求めています!」

 私はため息をつき、扇子を開いた。

「また“失くした”のですの?
 あの人たち、番号札だけは草原に落とした羊のように失くしますわね」

 側近アルフレッドが苦笑を浮かべ、住民たちはクスクスと笑った。

 

◆悪役令嬢の“即断・即罰”

「で、その不正者は今どこに?」

「ここに……」

 引きずられてきたのは、上等な服に身を包んだ男。
 本人は気丈に振る舞っているが、目は泳いでいる。

「ヴァイオレット様、どうか……今回だけは……!」

「入居不可。それと、所有住宅の税務調査を即日で」

「ぎゃっ!?!?」

 男はその場で崩れ落ちた。

 周囲の住民がざわめく。

「すげぇ……容赦ない」
「いや、むしろ公平だ」
「これが本来の“領主の姿”なんだな……」

 そう。
 “怖いけれど正しい”――それこそがヴァイオレット。

 

◆さらに悪質な“また貸し”勢への制裁

「お嬢様……こちらも……」
 別の役人が震えながら書類を差し出す。

「また貸しを企んでいる者が……」

「貸し出しは許可しますわ」

「えっ!?」

 住民の空気が一変する。

(え……許可するの……?)

「ただし――」

 私は微笑んだ。冷たく、しかし美しく。

「本人の元の自宅はすべて没収します」

「ぎゃああああああ!!」
「ま、待ってくださいヴァイオレット様ーーー!!」

 金と財産に目がくらんだ者たちが悲鳴を上げる。
 その一方で――。

「……公平だ」
「悪いことしなければ、何も怖くない……」
「これが、私たちの新しい領主様……」

 正直者の住民からは、静かな感嘆が漏れ始めた。

 

◆ミーナ一家の“本当の涙”

 その時、ミーナが母親を連れて駆け寄ってきた。

「ヴァイオレット様!ほんとうに……ほんとうに……
 こんな家に住めるなんて……!」

 母親は震えながら深く頭を下げた。

「スラムの頃は……
 泥水を飲み、雨の日は寝る場所を失い……
 子どもを守れませんでした……」

「もう大丈夫ですわ。
 あなた方は、ここで人としての生活を取り戻せます」

 ミーナの母は涙を流し、その涙は、過去の絶望を洗い流すようだった。

 周りの住民まで泣いている。

「ありがとう……ありがとうヴァイオレット様……!」

「……怖いけど……優しい人なんだな……」

 

◆評価、完全逆転

「お嬢様……住民たちの声が……」

 側近アルフレッドが感極まった声を出す。

「“怖いが信用できる”
 “あの方が領主のほうが安心だ”
 “悪いことをしなければ守ってくれる”
 ……そんな声ばかりです……!」

「まあ。ようやくまともな判断のできる方々が増えてきたようですわね」

 私は可憐に扇子を閉じる。

「壊したなら作る。
 与えたなら守る。
 裏切ったら即座に断つ。
 それが私の流儀ですもの」

 住民の目に、畏怖と信頼が宿る。

 それは“支配”ではなく――
ヴァイオレットがもたらした“改革の正しさ”への信頼だった。

 

こうして、元スラム街の住民たちは彼女を
“暴虐令嬢”から
“私たちの女帝様”
と呼ぶようになる。

そして、それは新たな騒動――
セドリック第二王子との出会い
へとつながっていくのだった。


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