傍若無人の悪役令嬢 ―幸せになりたいなら黙って私に従いなさい―

しおしお

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第11話 遅延の理由、道路が悪いなら直せばいいだけですわ!

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 上下水道工事が驚異的な進行速度を見せ始め、
 街の空気に少しずつ前向きな希望が灯ってきた頃。

「お嬢様――っ、報告がございます!」

 息を切らした側近アルフレッドが、書類を抱えて駆け込んできた。
 ヴァイオレットは紅茶を飲んでいたが、カップを置くことなく応じる。

「慌ただしいですわね。火でも出ましたの?」

「いえ、その……工事の一部区画が予定より大幅に遅れておりまして!」

「理由は?」

「資材の運搬が追いつかないのです……!
 道が悪すぎて荷馬車が進めない、と……!」

「…………」

 ヴァイオレットはカップを静かに置いた。

 そして立ち上がると、窓の外――領地の街並みを眺めた。

「なるほど。あのボロボロの土道……確かに馬車泣かせですわね」

 視察に同行していたミーナも、しょんぼりとうなずいた。

「荷馬車、何回もタイヤ外れてたよ……」

「でしょうね!」

 その瞬間、ヴァイオレットの瞳がキラリと光った。

 

◆◆道路のせいで遅れるなら、全部直せばいいだけ◆◆

「アルフレッド。工事が遅れる原因が“道路”なら――」

「な、なら……?」

「全部舗装しなさい」

「………………はい?」

 時間が止まった。
 風も空気も、アルフレッドの思考も止まった。

「お嬢様、道は領地全体に張り巡らされています!
 一部ではなく“全部”ですか!?」

「もちろん全部ですわ。中途半端は嫌いですから」

「全部……舗装……?
 全部? 本当に全部? 言いましたよね?」

「あら、聞こえなかったの? 全部ですわよ」

(聞こえたけれど理解が追いつかないんだよぉぉぉ!!)

 アルフレッドは心の中で泣き叫んだ。

 

◆◆現場視察 → ヴァイオレット、あまりの酷さにブチ切れる◆◆

 現場を見たヴァイオレットの反応はシンプルだった。

「これはひどいですわね」

 馬車は揺れすぎて荷物が転がり落ち、
 職人たちは資材を背負いながら泥道を歩いている。

「これでは効率が悪すぎますわ。
 工事が遅れる以前に、労働環境として劣悪ですわ!」

 ヴァイオレットは杖を地面にトン!と叩きつけた。

「この領地で“まともに歩ける道が一つもない”なんて異常ですわ!!
 すぐに舗装計画を立てなさい!」

「お嬢様っ、舗装は莫大な資金が――」

「あるでしょう?」

「えっ……!」

「私が無駄遣いをしていないと思って?
 公営住宅のコスト管理をした私が、資金計画をしていないと?」

 そう、すでに彼女は 他領地が羨むほどの予算最適化 を始めていた。

「道路は領地の血管ですわ。
 交通が良くなれば物流が伸び、税収も増える。
 やらない理由がありませんこと!」

 ミーナがキラキラした目で言った。

「わたし、道の幅とか傾斜とかも計算できるよ!」

「最高ですわ、ミーナ。あなたは今日から“道路計算補佐官”です!」

「また補佐官ふえたーーー!!」

 アルフレッドの悲鳴が空に消えた。

 

◆◆職人たち、絶句 → しかし……燃える◆◆

「お嬢様……本気で領地全体を舗装するんですか……?」

「ええ。反対する理由は?」

「いや……反対っていうか……
 あの、普通は十年単位の計画でして……」

「私は“今やって”と言いましたわ」

「今……?」

「“今”ですわ」

(出たぁぁぁ!!! この人は本当に実行してしまう人だぁぁぁ!!)

 だが――

「おい……やってみるか……?」

「上下水道だってもう奇跡みたいに順調だしな……」

「ヴァイオレット様の改革、面白ぇじゃねぇか!」

 職人たちの目が輝き始めた。

 

◆◆こうして、領地全体を巻き込む“道路革命”が始まる◆◆

 その日のうちに測量が始まり、ミーナは職人たちに囲まれながら計算を次々と叩き出した。

「ここの勾配は“3.5パーセント”が最適だよ!」

「ミーナちゃんすげぇぇぇ!!」

 ヴァイオレットは満足げに腕を組む。

(いいですわ。この勢いで一気に改革を進める……!
 止まったら負けですもの)

 そして――

 道路舗装が領地を激変させるのは、もうすぐだった。


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