傍若無人の悪役令嬢 ―幸せになりたいなら黙って私に従いなさい―

しおしお

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第25話 領地、黄金時代へ――すべての歯車が動き出す

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朝の陽光が街を照らす。
かつて汚水が流れ、悪臭が漂っていた通りには、
清らかな水が走る上水道の音が心地よく響いていた。

舗装された黒い石畳の道路を、荷馬車が滑るように走る。

「速い!昨日より速いぞ!」
「荷が軽く感じる……道路ってすげぇ……!」

近隣領地の商人たちが驚きの声を上げていた。

街の中心部――。
かつてスラムがあった場所には、一直線に並ぶ公営住宅群。
広場には子どもたちの笑い声が響く。

その景色を見下ろせる庁舎で、
執務室の扉がノックされた。

「お嬢様、とんでもない数字が……!」
ミーナが書類を抱えて駆け込んでくる。

「また儲かりましたの?」
ヴァイオレットは紅茶を飲みながら優雅に問いかけた。

「“また”どころじゃありません!」
ミーナが机に書類を広げる。


---

◆驚愕のレポート

・物流効率:2.5倍
・人口流入:3倍
・犯罪発生率:1/10に激減
・商店収益:過去最高
・住民満足度:爆増

エマ監察官まで目を見開く。

「……これは……領地どころか、国レベルの改善では?」

ヴァイオレットは扇子で口元を隠し、微笑む。

「そうでしょうね。
合理的に整備すれば、結果は自然とついてきますわ。」

ミーナが続ける。

「それに……住民からの手紙が、今日だけで二百通届きました!」

「ふむ?苦情かしら?」

「いえ……全部、感謝の手紙です!」

「……感謝?」
ヴァイオレットの眉がわずかに跳ねた。

ミーナが読み上げる。

「『寒さに震えず眠れるようになりました』
『子どもが病気になりにくくなりました』
『働く場所が増えました』
『この街に誇りが持てます』」

エマも口を開く。

「住民たちは……本気で感謝しています。
お嬢様を“救いの女帝”と呼ぶ者までいます。」

すると、扉の向こうから住民代表が押し寄せた。

「お嬢様!
あなたを支持する署名を集めました!!
この領地の歴史で最高の領主です!」

紙束が机に山のように積み上げられる。

ヴァイオレットは、ぱちんと扇子を閉じた。

「……はぁ。
私、八つ当たりでやっていたつもりでしたのに……」

エマ「その八つ当たりが国を救ってるんです。」

ミーナ「お嬢様、最高です!!」

すると背後の窓枠に、いつのまにかセドリックが座っていた。

「……アンタ、本当に規格外だな。」

「褒め言葉として受け取りますわ。」

セドリックは肩をすくめた。

「褒めてねぇよ。
ただ――領民が幸せそうなのは、悪くねぇ。」

ヴァイオレットは、ふっと満足そうに微笑む。


---

◆領地はついに黄金時代へ突入した

ヴァイオレットの苛烈な命令と、
天才ミーナ、冷徹エマ、そして嫌味なほど有能な第二王子。

すべてが噛み合った結果、
領地は前代未聞の『完全稼働』を迎えた。

そして――。

これは国全体の未来を揺るがす、
大改革の序章にすぎなかった。

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