『白い結婚から始まったはずなのに、冷徹公爵の溺愛が止まりません!』

しおしお

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第18話 “気づかないのは本人だけ”状態ですわ!

第18話 “気づかないのは本人だけ”状態ですわ!

庭の喫茶スペースが完成してから数日。
毎日のように、レイヴンが休憩時間に足を運んでくるのが当たり前になっていた。

今日も、いつものように──

「フィオナ、ここにいたのか」

「はい。今日のハーブティーはペパーミントですわ。お疲れだと思って」

「……助かる」

それだけで、レイヴンの声がわずかに柔らかくなる。

フィオナは嬉しさを隠せず、
焼きたてのレモンケーキを添えてカップを渡した。

レイヴンは静かに座り、
ふとした瞬間にフィオナの指先へ視線を落とす。

(……今日もよく働いた手をしている)

本人に言うと恥ずかしがらせてしまう気がして、
口には出せない。

だが、視線だけは自然と吸い寄せられてしまうのだった。



レイヴンが執務へ戻ったあと──
リリィが勢いよくフィオナの肩をつかんだ。

「フィオナ様ああぁぁぁぁッ!!」

「り、リリィ!? な、なにごとですの!?」

「見ました!? 今日も公爵様、五分に一回はフィオナ様を見てました!!」

「……え?」

リリィは震える指で方向を指した。

「公爵様は、完全に“庭に通う男”です!!
あれはもう……好きな子を見に来る少年のそれです!」

「そ、そんな……!」

フィオナは真っ赤になって、ぱたぱたと手を振る。

「白い結婚ですのよ? 干渉しない条件で……」

「はい、その白い結婚がですね、今、淡い桃色に染まり始めてます!!」

「桃色って何!?」

「恋色です!!」

「こ、恋色!?」

フィオナの手が止まった。
胸の奥が、なぜか急に熱くなる。

(恋……公爵様が……?
そんな……そんなこと……)

しかし、リリィの興奮は止まらない。

「第一! 毎日庭に来る時点でおかしいんです!
休憩を庭で取る必要なんてないのに!!
フィオナ様が居るから来てるんです!!」

「そ、そうかしら……?」

「そうです!!」

リリィは手を握りしめ、涙目で訴える。

「フィオナ様……!
公爵様はもう……氷どころか常温です……!」

「常温……?」

「常温というか……むしろ……」

リリィはぽつりと呟いた。

「……ぬるま湯になってます……」

「ぬ、ぬるま湯!?」

「はい! 沸騰寸前です!!
もはや視線で“溺愛の香り”がします!!」

「そ、そんな……そんなわけ……!」

フィオナは顔を覆ってしまう。
心臓が妙に早く打っている。

(公爵様が……私を……?
そんなはず、ない……)

しかし──
思い返せば、最近のレイヴンは不思議と優しい。

庭へ来るのもそうだし。
わざわざお茶を待ってくれているし。
視線も……以前より柔らかい。

(……でも、どうして?)

問いかけても、答えは出ない。

そのとき、庭の奥にいた庭師がぽつりとつぶやいた。

「いやあ……公爵様、恋してるなぁ……」

「…………」

屋敷のメイドたちまでもヒソヒソ。

「あれは絶対、奥様のこと……」
「いやもう、愛妻家の気配……」
「白い結婚って聞いてたけど……白じゃないよね絶対」
「むしろ限りなくピンク寄りに……」
「はあ……尊い……」

フィオナ
「な、なんでみんなそんなに早く気づくの……?」

リリィ
「フィオナ様以外、全員知ってます!!」

フィオナ
「!?」

庭師
「奥様が気づいてないのが一番びっくりですよ」

フィオナ
(なんで私だけ置いてけぼりなの……!?)

混乱しつつも、
胸の奥にじわっと広がる温かさを否定することができなかった。

(……もし、公爵様が本当に私を……)

ほんの少し──
そこに芽生える期待が、胸の奥で静かにふくらむ。


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