『白い結婚から始まったはずなのに、冷徹公爵の溺愛が止まりません!』

しおしお

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第29話 暴かれる裏金と欺瞞——継母アリシアの崩れ始め

第29話 暴かれる裏金と欺瞞——継母アリシアの崩れ始め

王都の早朝。
商人通りの裏路地に、ひっそりと佇む古い小屋があった。

そこは、レイヴン公爵が秘密裏に設けた“情報室”。
今まさに、重大な報告が持ち込まれようとしていた。

情報官エドガー
「公爵様……ついに掴みました。
アリシア夫人の“裏金の流れ”を」

レイヴン
「報告しろ」

エドガーは分厚い封筒を机に置き、
緊張の面持ちでその内容を説明する。

「アリシア夫人は……
・領民からの献金として偽って私財を搾取
・家計から無断で金を流用
・社交界の令嬢たちに金を渡し、噂を操作
・商人と裏取引し、利益を私物化
以上が十年以上続いていました」

レイヴンの指が封筒の上で止まる。

「十年……ずいぶんと長いな」

「彼女は非常に狡猾で、証拠を残さぬよう徹底していました。
しかし、“今回の噂工作”で動きが荒くなったようです」

その言葉に、レイヴンの目が僅かに細まる。

(フィオナへの攻撃で焦ったか……
自ら尻尾を出したというわけだ)

エドガーは畏れを含んだ声で続ける。

「公爵様……この証拠をすべて王家へ提出するおつもりですか?」

レイヴンは静謐な声で答えた。

「当然だ。
この罪、隠蔽する理由はどこにもない」

「しかし……アリシア夫人は伯爵家の夫人であり……
処罰となれば、家ごと崩壊する恐れが」

「構わん。
“罪を犯した者が罰を受ける”――それだけのことだ」

その言葉には、どんな情けも揺らぎもなかった。


---

一方、エステリス伯爵家。

アリシアは鏡の前で優雅に髪を整えながら、
うっとりと自分の姿を眺めていた。

「ふふ……そろそろ王都にも噂が行き渡った頃ね。
あの娘がどんな顔をするか……見ものだわ」

自信満々の余裕に満ちた笑み。
だが――

その扉が勢いよく開かれた。

「アリシア様ッ……!
お、お伝えしたいことが……!」

慌てた侍女の登場に、アリシアは眉をひそめる。

「何よ、そんなに慌てて。
私の姿が美しすぎて驚いたの?」

「ち、違います!
王都が……王都が、大変なことに……!」

「大変なこと……?」

アリシアは少しだけ笑う。

「まさか、フィオナと公爵のことでしょう?
どうせすぐ崩れるわよ、あんな偽物の結婚」

侍女はぶんぶんと首を振った。

「ち、違うんです!
王都では今……
“アリシア様が裏で金を動かしていた”という噂が……!!」

アリシアの手から櫛が落ちた。

「……は?」

侍女
「しかも、公爵様が証拠を集めている、と……」

「な……
なに……っ……?」

アリシアの顔が蒼白になる。

鏡に映る自分を見つめながら、
唇が震える。

「あの男……
あの冷徹な公爵が、本気で……?」

噂の火は、もう彼女自身へ燃え移っていた。


---

その頃、公爵邸では。

フィオナは庭でアフタヌーンティーの準備をしていたが、
リリィが駆け寄ってきた。

「フィオナ様、大変です……!」

「リリィ? どうしたの?」

「……旦那様が、何か“とても大きな動き”をされています!
屋敷の情報官が総出で動いていて……」

フィオナは胸がざわつく。

(レイヴン様……私のために、また――)

どこか不安と、
どこか心が熱くなる感情。

その時、遠くからレイヴンが歩いてくるのが見えた。

彼はフィオナを見ると、
表情を少しだけ柔らかくして言った。

「フィオナ。
今日は外での用事は控えろ。
……何があっても、私から離れるな」

その声は強く、冷徹で――
でも、誰よりも優しい“護る男”の声だった。

フィオナの胸がひときわ強く脈を打つ。

(レイヴン様……
あなたは今、私のために――
誰のことも恐れず、前に立とうとしている)

彼女はそっと言った。

「……分かりました。
レイヴン様のそばにいます」

レイヴンは一瞬だけ目を見開き、
照れ隠しのように視線をそらした。

「当然だ」

暴かれる裏金。
迫る断罪。

継母アリシアの終焉は――
もう、始まってしまっていた。
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