白い結婚は終わりました。――崩れない家を築くまで

しおしお

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第三十九話 崩れないという強さ

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第三十九話 崩れないという強さ

 基金創設案が正式に承認された日、王宮の空気は奇妙な静けさに包まれていました。

 歓声はない。
 祝宴もない。

 だが、否定の声もない。

 反対派の多くが、条件付きで参加を表明したのです。

 午前、財務局にて最終確認。

「第一段階は三領から」

「拠出率は調整済み」

「監査は王家と共同」

 机上に並ぶ書類は整然としている。

 数字は現実的。
 過度な理想はない。

 アレクシスは最後の署名を終えると、小さく息を吐いた。

「ここからが本番だ」

「ええ」

 私は短く答える。

 午後、廊下で耳に入る囁き。

「侯爵家は出世しすぎだ」

「王家に取り入ったのでは」

 嫉妬は消えない。

 だが、それは以前のような敵意ではなく、距離の測り直しに近い。

 会議後、年配の貴族が歩み寄る。

「私は最初、反対だった」

「存じております」

「だが、数字は嘘をつかない」

 彼は静かに頭を下げた。

「誤りを認める」

 それは、小さな勝利だった。

 夜、屋敷へ戻る。

 義母が穏やかに言う。

「王宮でのあなたの評判、変わったわ」

「悪くなったのでは」

「違う。信頼という言葉が増えた」

 義弟も笑う。

「兄上、派手さはないが、崩れない」

 その言葉に、アレクシスは少しだけ目を細めた。

 庭園にて。

「私は、焦らなくなった」

 彼が呟く。

「ええ」

「拡張も、名誉も、称賛も」

「目的ではありません」

「だが、以前は違った」

 彼は続ける。

「私は名で押し切ろうとしていた」

「そして崩れかけた」

「今は、押し切らない」

 灯りが静かに揺れる。

 崩れないという強さ。

 それは、誰も拍手しない強さ。

 だが確実に積み重なる。

 翌日、地方領からの報告が届く。

 基金利用第一号の領で、資金調達が安定。
 短期債依存が減少。

 義弟が驚く。

「本当に機能している」

「仕組みは裏切らない」

 アレクシスの声は落ち着いている。

 ざまあの爽快感は、もうない。

 代わりにあるのは、持続。

 王宮の温度差も、揺り戻しも越えた。

 完全ではない。
 完璧でもない。

 だが、崩れない。

 私は隣に立つ。

 白い結婚は終わり、契約も消えた。

 残ったのは、共有という土台。

 侯爵家は今、名ではなく信頼で立っている。

 崩れないという強さを得た家は、もう簡単には揺らがない。

 そして私は、その強さを共に支えているのです。
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