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第2章 見えない手の中で
セクション3:転機
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セクション3:転機
---
翌朝。
第一営業部の会議室は、普段よりも早くからざわついていた。
いつも冷静な神宮寺が、珍しく資料を抱えて社長室の前に立っている――
その光景に社員たちは目を丸くしていた。
ドアの向こうでは、社長が資料を手に取り、目を細めていた。
「……業務効率改善プロジェクト?」
「はい。社内全体の作業フローを整理し、部門間の連携を強化する取り組みです。」
神宮寺の声は低く、落ち着いている。
だが、その眼差しには確固たる意志があった。
「具体的には?」
「データ管理の重複をなくし、処理の集中化を進めます。
一部、才能のある社員を中心に配置を再検討し、
各部のバランスを再構築したいと考えています。」
「ふむ……」
社長は手元の提案書に目を通す。
ページをめくるたび、数値が正確に整理され、
効率化後の見込み収益が明快に算出されていた。
「……誰の作成だ?」
「私がまとめました。」
「いや、数字の扱い方が違うな。
いつもの君の資料より、妙に“繊細”だ。」
神宮寺はわずかに微笑み、首を横に振る。
「チームの成果です。私一人では到達できませんでした。」
社長は何も言わず、しばらく沈黙した。
やがて軽く笑い、椅子の背に体を預ける。
「いいだろう。君の裁量で進めてみろ。
どうやら、何か面白い仕掛けを考えているようだ。」
神宮寺は深く頭を下げる。
「ありがとうございます。」
---
神宮寺が退室したあと、
社長は提案書を机の上に置き、しばし指先で表紙を叩いていた。
「……妙に整った数字だな。」
独り言のように呟く。
ページの隅には、几帳面な書式設定と緻密な注釈。
どこか、見覚えのある“筆跡”のような感覚があった。
> 「……野呂……どこかで聞いたような……気のせいか。」
社長は首を振り、深く椅子に腰を下ろした。
そのとき、秘書が控えめにノックし、入室する。
「社長、株主総会の出席者名簿がまとまりました。」
「そうか。何名だ?」
「五十名です。」
社長は名簿を受け取り、ざっと目を通す。
「多いな。」
「いえ、例年に比べれば少ないほうかと。」
「総会屋など潜り込んでないだろうな?」
「不審な人物は見受けられませんでした。」
「……そうか。」
ページをめくった瞬間、社長の指が止まった。
一瞬だけ、瞳が鋭くなる。
「……なんだと!」
突然の声に、秘書が驚く。
「ど、どうかされましたか?」
「いや、なんでもない。」
社長は名簿を閉じ、静かに机の上に置いた。
そのまま深く椅子に沈み込み、
何かを思い巡らせるように黙り込む。
秘書は首を傾げたが、問いかけることはしなかった。
ただ、室内には重い静寂が流れ――
社長の視線だけが、名簿の一点に釘付けになっていた。
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翌朝。
第一営業部の会議室は、普段よりも早くからざわついていた。
いつも冷静な神宮寺が、珍しく資料を抱えて社長室の前に立っている――
その光景に社員たちは目を丸くしていた。
ドアの向こうでは、社長が資料を手に取り、目を細めていた。
「……業務効率改善プロジェクト?」
「はい。社内全体の作業フローを整理し、部門間の連携を強化する取り組みです。」
神宮寺の声は低く、落ち着いている。
だが、その眼差しには確固たる意志があった。
「具体的には?」
「データ管理の重複をなくし、処理の集中化を進めます。
一部、才能のある社員を中心に配置を再検討し、
各部のバランスを再構築したいと考えています。」
「ふむ……」
社長は手元の提案書に目を通す。
ページをめくるたび、数値が正確に整理され、
効率化後の見込み収益が明快に算出されていた。
「……誰の作成だ?」
「私がまとめました。」
「いや、数字の扱い方が違うな。
いつもの君の資料より、妙に“繊細”だ。」
神宮寺はわずかに微笑み、首を横に振る。
「チームの成果です。私一人では到達できませんでした。」
社長は何も言わず、しばらく沈黙した。
やがて軽く笑い、椅子の背に体を預ける。
「いいだろう。君の裁量で進めてみろ。
どうやら、何か面白い仕掛けを考えているようだ。」
神宮寺は深く頭を下げる。
「ありがとうございます。」
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神宮寺が退室したあと、
社長は提案書を机の上に置き、しばし指先で表紙を叩いていた。
「……妙に整った数字だな。」
独り言のように呟く。
ページの隅には、几帳面な書式設定と緻密な注釈。
どこか、見覚えのある“筆跡”のような感覚があった。
> 「……野呂……どこかで聞いたような……気のせいか。」
社長は首を振り、深く椅子に腰を下ろした。
そのとき、秘書が控えめにノックし、入室する。
「社長、株主総会の出席者名簿がまとまりました。」
「そうか。何名だ?」
「五十名です。」
社長は名簿を受け取り、ざっと目を通す。
「多いな。」
「いえ、例年に比べれば少ないほうかと。」
「総会屋など潜り込んでないだろうな?」
「不審な人物は見受けられませんでした。」
「……そうか。」
ページをめくった瞬間、社長の指が止まった。
一瞬だけ、瞳が鋭くなる。
「……なんだと!」
突然の声に、秘書が驚く。
「ど、どうかされましたか?」
「いや、なんでもない。」
社長は名簿を閉じ、静かに机の上に置いた。
そのまま深く椅子に沈み込み、
何かを思い巡らせるように黙り込む。
秘書は首を傾げたが、問いかけることはしなかった。
ただ、室内には重い静寂が流れ――
社長の視線だけが、名簿の一点に釘付けになっていた。
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