『婚約破棄された公爵令嬢ですが、王国を救ったので新しい王太子に求婚されました

しおしお

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第二十五話 地下牢

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第二十五話 地下牢

王城、地下牢。

石の壁。

湿った空気。

鉄格子の向こうには暗い通路が続いていた。

ヴィオレッタ・アルディスは床に座り込んでいた。

先ほどまでの華やかなドレス。

しかし今は埃で汚れている。

信じられないという顔だった。

「……どうして」

震える声。

牢の前には近衛兵が立っている。

ヴィオレッタは鉄格子にしがみついた。

「ここから出しなさい!」

近衛兵は無表情だった。

「命令です」

ヴィオレッタは叫ぶ。

「私は貴族よ!」

「アルディス伯爵家の娘よ!」

だが兵士は動かない。

その時。

通路の奥から足音が聞こえた。

ゆっくりと近づく。

現れたのは――

エドガルドだった。

ヴィオレッタの目が輝く。

「殿下!」

彼女は鉄格子に駆け寄る。

「助けてください!」

エドガルドは立ち止まった。

その顔は青白い。

「……ヴィオレッタ」

ヴィオレッタは涙を流した。

「私は悪くありません!」

「全部誤解です!」

エドガルドは何も言わない。

ただ彼女を見ている。

ヴィオレッタは続けた。

「ルシエラが……」

「全部あの女のせいです!」

その瞬間。

エドガルドの表情が変わった。

怒り。

ではない。

疲れだった。

「……もうやめろ」

ヴィオレッタが固まる。

「え?」

エドガルドは低く言った。

「証拠は全部出ている」

ヴィオレッタの顔が歪む。

「違います!」

「私は被害者です!」

エドガルドは目を閉じた。

そして言った。

「私は」

「王太子を解任された」

ヴィオレッタの呼吸が止まる。

「……え?」

エドガルドは続ける。

「王位継承権も降格」

ヴィオレッタの顔から血の気が消えた。

「そんな……」

エドガルドは壁を見つめている。

「全部」

「終わった」

ヴィオレッタの手が震える。

「……殿下」

その時。

別の足音が響いた。

近衛兵が一斉に姿勢を正す。

通路の奥から現れたのは――

ルシエラだった。

その隣にはローデリック。

リーゼとグラハムもいる。

ヴィオレッタの目が見開かれる。

「……あなた」

ルシエラは静かに牢を見た。

ヴィオレッタは鉄格子にしがみつく。

「ルシエラ!」

声が歪んでいる。

「あなたがやったのね!」

リーゼが怒る。

「違います!」

ローデリックが手で制した。

ルシエラは静かだった。

「ヴィオレッタ」

その声は落ち着いている。

ヴィオレッタは叫ぶ。

「全部あなたのせいよ!」

「あなたが完璧だから!」

「みんなあなたばかり!」

牢の空気が震える。

ヴィオレッタは泣きながら言った。

「私は」

「ただ」

「あなたが嫌いだった」

沈黙。

ルシエラは彼女を見つめる。

そして静かに言った。

「そうですか」

ヴィオレッタは叫ぶ。

「それだけよ!」

「それだけで何が悪い!」

ローデリックが低く言う。

「王国を揺らした」

ヴィオレッタが睨む。

ルシエラは首を振った。

「違います」

広間が静まる。

ルシエラは言った。

「あなた一人ではありません」

そして。

ゆっくりエドガルドを見た。

「殿下」

エドガルドの肩が震える。

ルシエラは続けた。

「信じるべき人を」

「信じなかった」

沈黙。

エドガルドは何も言えない。

ヴィオレッタの手が震える。

その時。

近衛兵が言った。

「判決は明日です」

地下牢の空気が冷たくなる。

つまり。

明日。

ヴィオレッタの運命が――

決まる。
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