ディスティニーブレイカー~最強の白魔法使いを兄に持つ黒魔法使いの俺。使える魔法は四つのみだが実はその内の二つがチート級!?〜

夏蜜柑

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魔法学院〜入学編〜

魔法対抗試合一回戦、炎の化身、ゼルディア・フォン・デゥーイの力②

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 一日目の試合が全て終わり、俺達は作戦会議室に集合した。
 皆が椅子に腰を掛ける中、ゼルは床に正座だ。隣ではルルがその姿勢を崩さぬよう目を光らせている。

「確かにちょっと突っ走っちまったけどさぁ、これはひどくない?」
「あら、反省してないのなら膝の上に石でも置こうかしら」
「……持って、来る?」
「すみませんでしたっ!!」

 そんなやり取りに苦笑いをしつつ、セシルが話を始めた。

「それじゃあ今日の反省会と、観戦した違う組の戦いについて、それと明日の試合に向けた作戦会議といこうか」
「俺はこのまま?」
「うん、反省が必要なのはゼルだけだからね」

 にっこりと笑ってそう言い放ったセシルに、今度はクラスメイト達が苦笑いを浮かべた。
 皆思ったのだろう。『怖い――』と。

「だいたいね、部隊長が他の隊員を置いてけぼりにして一人で突っ込むなんてナンセンスでしょ」
「いや、それは副隊長のジョンが悪いぜ。他の奴らを率いて付いてきてると思ったのによー」
「えぇ?! 僕、副隊長だったの? 言っといてよっ!」

 ――ツッコむところ、そこなのか?

「とにかく、勝てば良しって考えもあるけどそれはダメ。リスクが高過ぎるからね。分かった?」
「え~、俺だってリスク管理ぐらい――」
「……分かった? ゼル」

 にっこりと笑った顔に影を落とし、セシルの声が一段階低くなった。

 ――怖……

 ゼルはすかさず返事を返し、正座の姿勢を正して背筋を伸ばした。

「皆も第二試合を見て分かったと思うけど、戦い方や作戦はクラスによって様々だ。一試合終わる毎に相手の分析も進んでいく。今回、良かったのはこっちの手の内がゼルの魔法と戦法しか見られなかった事だ」
「唯一って……」
「あら、セシルの言う通りじゃない。貴方以外は誰も経験が積めず、戦場は敵味方問わず大混乱。相手に水魔法の使い手がいなかったからすんなり決着がついただけで、対処されていたら前衛は壊滅状態だったわよ」
「うっ……」
「そうですわね。わたくしも、言われるままに魔法を使ってしまって後悔してましたの。あの破壊光線を反射でもされていたら、大半の部隊は退場になっていたと思いますわ」
「いや~、レミーラちゃんだったら大丈夫で――」
「……部隊は四人、やられたら負け。一人残っても、意味ない」
「そうでした……」

 今度こそしっかりと反省したのか、ゼルがガックシと肩を落とした。言われたい放題になっているが、俺の見解ではゼルの魔法を弾き返せる奴などそういない。それくらい、ゼルの炎獄砲ブレイズキャノンは威力が凄まじかった。
 だが、いない訳じゃない。対処される可能性がある以上、一撃で戦況をひっくり返す様な大技は使う側にも危険リスクが伴う。勝利の立役者だが、今回はゼルに言い訳の余地はないだろう。

 思いのほか落ち込んだ様子のゼルに対し、セシルは励ます様に話を続けた。

「でも派手にやってくれたお陰で次の対戦相手はゼルの魔法を意識せざるを得なくなった。C組は明日が初戦で、こっちはデータがない。これは作戦として使えるよ」

 その言葉に同意の声が上がる。いち早く発言をしたのはリファだった。

「私もそう思います! 対戦相手が一番懸念するのはセシル様だと思いますが、ゼルディア君が目立ってくれたお陰で次の戦いはその懸念が分散するでしょう。懸念材料に入ってない私の部隊はかなり動きやすくなると思います」

 俺もリファの意見に賛成だ。セシルは元より、初戦の戦いでゼルへの注目度は飛躍的に増したはずである。ルルとレミーラも名が知られている事から、ある程度の懸念は織り込み済みのはずだ。俺も判定決闘ジャッジメントバトルの結果が噂で広まっているため、少なからず要注意人物とされているだろう。そうなると完全にノーマークなのはリファの部隊だけという事になる。

「ゼルを囮に、リファの部隊を送り込むのもいいかもな。俺達はサポートに回って」

 そう呟くと、皆の視線が話題の主達へと集まった。リファを始め、部隊に属する他の四人もみるみる顔を青ざめさせていく。その様子を見ていたルルが、クスッと笑って口を開いた。

「いいじゃない。私は賛成」
「ル、ルルル……ルルさん⁉」
「あらリファ。どうしたの?」
「どうしたもこうしたもっ! 私達だけで敵の本陣に乗り込むなんて無謀です‼」

 リファの言葉に、同じ部隊の四人が激しく首を上下させる。

「自信ないな。さっきは自分の部隊が動きやすくなるってやる気満々だったじゃないか」
「そう取るの⁉ 敵をかき回す事ぐらいなら出来るかもと思っただけだよ!」
「じゃあ最前線でかき回してこい。大丈夫、お前なら出来る」
「それはクロス君の方が得意じゃないー」

 半ベソをかきながらリファが訴えるような目をセシルへ向けた。どんな意見も、最終決定権はリーダーのセシルにある。そのセシルが優しい目をリファ達に向け、そしてにっこりと微笑んだ。

「僕も、賛成です」
「「「セシル様ーーー⁉」」」

 驚愕の表情で一斉にリファ達が立ち上がった。それをセシルが宥めつつ、今回の作戦を話し始める。

「次の戦いはクロスが言ってくれた通り、ゼルの部隊を囮に攻め込もうと思う。ゼルの魔法は派手で威力も高い。そこに注意を引き付け、その隙に敵の懐へ潜り込もうって作戦だ。それにはダークホースでノーマークの、リファの部隊が打って付けなんだよ」
「で、ですが私達は全員庶民の集まりで……」
「あら、で、主張なさるの? それを言い訳になさるなんて、がっかりですわね」
「あ……」

 レミーラの言葉に、リファが気まずそうに視線を落とした。
 そこに空気を読まない(読めない)奴の明るい声が響く。

「アッハッハッ! 何でそんな深刻になってんだよ、俺が敵を引き付けるんだぜ? 本陣に敵なんかほとんど残らないって! だから安心していいぜ、リファちゃん☆」

 バチンッとウィンク付きで、ゼルが親指を立てて見せる。

 一瞬重くなった空気がすぐさま和やかなものへと変わり、作戦は詰めの話し合いへと入ったのだった。

 こういう時のゼルは実に頼もしい。心底、そう思った。
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