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185 見えたけど、なんか違う
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……たぶんアールカは、ずっと怖がっているんだ。
自分をべつの物体に再構築しても、怖がって、逃げたがっている。俺がこうして捕まえているのも、怖いに違いない。
「ごめん、アールカ!」
俺はビームをよけながら謝罪した。
「きっときみのことをつけ狙う人たちはいっぱいいて、俺も頼りなくて、すごく怖い思いをしていると思う!」
俺は駆けながら、アールカを安心させるために言った。
「俺と一緒に行くのが、アールカは怖くなっていると思う!」
俺に当たらないようラズリ―ズさんの鱗の盾が防御してくれる。それでも矢継ぎ早に、そこらじゅうに放たれる雨のような無差別攻撃の防御に奔走させられている。
「でも、辺境伯領ならきみの存在を受け入れてくれるし、やさしくしてくれる人がいっぱいいる。変な人はいっぱいいるけど……でも悪い人たちじゃない。悪い人が来ても、みんなが守ってくれる」
辺境伯領の領民の皆さんを思い出しながら、俺は続けた。
「俺も騎士団を追い出されて移り住んだ流れものだったけど、みんな嫌な顔一つせずに受け入れてくれた」
俺はチャクロに向けて《炎の杭》を放つも、一部はビームにかき消され、一部は振るわれた尻尾にかき消される。
「だから、逃げるなら、一人で逃げるんじゃなくて、俺と一緒に辺境伯領フーリァンへ逃げよう! みんなアールカのことを受け入れてくれるし、きっと楽しいことがいっぱいある。楽しいことをするには、楽しそうな方向に自分から行かないといけないんだ! きみの意志で自分で動かないといけないんだ!」
そして俺の場合それを導いてくれたのが、メリアとクリムレット卿だった。
「でなきゃ、ずっと怖い思いのままだ。だから、俺と一緒に行ってほしい!」
「…………」
ラズリ―ズさんの盾に守られながら、ぬいぐるみとリンゴと鉱石が分解されていく。やがて、アールカは人間の姿に戻っていた。
「アールカ!」
「私のこと、ちゃんと見ててくれる?」
アールカは俺の目を見上げながら不安そうに聞いた。俺はうなずく。
「ああ、まあ右目は見えないけど、注意はするから、もうさっきみたいに目を離したりはしないよ」
「右目……」
アールカは俺の右目に触れた。
「目……《再構築》した。これで私のこと、ちゃんと見える?」
アールカが言った。視界が開けて、たしかに見える範囲が広がっている。
「いや、見えるけど、これ、なんだ!?」
右目は見えるようになったが、異変があった。
集中すると、チャクロの鎧やラズリーズさんの杖や魔法が、ぼんやりと光って見える。
ビームを放つ前に魔力が尻尾の先に集中するところも、放たれたビームも、ほんのりと光っている。集中しなければ、ほとんど見えない。これは、魔力が視覚化されているのだろうか?
「なんか、違った?」
首をかしげているアールカの背中に、六対の光の羽のようなものが見えている。
ラズリーズさんの言い方だと、《創造と再構築》の力は彼女の知識の範囲でのみ行使される。ということは……アールカは、こんなふうに世界が見えているのか。
「いや、ありがとう。でも、こういう力はもう使わない方がいいかもしれないね」
世界が、人間というものが急激に変わっていってしまう危うさを秘めている。これはそんな力だ。
「アールカ! いったんこっちにおいで!」
ラズリーズさんがこちらに向かって叫んでいる。
「ラズリーズさんのところまでいける?」
「……うん」
アールカが、盾に守られながらラズリーズさんのもとへと到着する。
「さて」
チャクロの攻撃は隙がない。遠距離からビームが放たれ、懐に入れば尻尾でなぎ払われる。
だが、こちとら何度も空から落ちた身である。両手が空いた今、空中戦は望むところだ。
俺は強化された体で跳躍して飛び上がった。
「だめェ!」
ビームが放たれるも、《ブレス》の突風を吹かせて回避する。魔力が見えるようになったことで、攻撃の流れや前兆が可視化された。よけるのは容易だ。たぶん魔法なら、すべて発動の瞬間を見据えることができるだろう。
「これなら、やれる!」
チャクロから離れながら、チャクロの上空を取る。
下方へ放つビームは、方向を変えることで上にも放つことができるだろうが、反動で飛ぶという芸当ができなくなる。上を取った方が、圧倒的に有利だ。
「だがァ!」
接近すると尻尾のなぎ払いが来る。だが――
「これを待っていたんだよ!」
俺は《炎の杭》を召喚し、両手のこぶしに纏わせる。《炎の杭》を取り付けたこぶしで、尻尾に左のカウンターを合わせた。
「なァッ!?」
こぶしの衝撃とともに鎧の尻尾を貫いた《炎の杭》が燃焼し、内部から破壊する。
「私の『強化鎧装』が破壊ィ!? どういうわけ!?」
「『こういうわけ』だ!」
俺は残った右拳とそこに取り付けた《炎の杭》で、チャクロの腹部を殴打し、貫いた。
チャクロは地面に激突して倒れる。
「死んでもいないな……」
遅れて着地した俺は息をついて、治癒ポーションを取り出した。死にかけのチャクロの手足を縛ってから、ポーションを無理矢理飲ませて傷を治す。
チャクロは未だに気を失っている。
それにしても……俺は周りを見渡した。ざわざわとやじ馬が見物に来ていたが、建物はすべて無事だった。
「すごいですね、その魔法。町がぜんぜん壊れてない」
鱗の盾は、小さな攻撃なら単体で防ぎ、大きな攻撃は寄り集まって大きな盾となって防ぐ。数が多く網羅的になんでも守る。鉄壁だった。
「あんたの方もね。しかしなんだいそのポーションの治癒力は。何か違法な薬草を使っているんじゃないのかい?」
「よく言われますが使ってないです」
俺は苦笑した。
「あとは城塞伯軍の人たちに任せてもいいですか?」
「ああ。お手柄だったね」
ラズリーズさんはうなずいた。
「アールカ、大丈夫だった?」
「うん!」
俺が聞くと、アールカはタックルするように俺に抱きついた。怪我などはないようだ。
「ラズリーズさん」
「どうしたんだい?」
「もう少しの間だけ、アールカを頼みます」
「うむ?」
俺はラズリーズさんとアールカに背を向け、一人歩き出した。
「まだ終わっていない――そういうわけです」
「口調移っとるよ」
自分をべつの物体に再構築しても、怖がって、逃げたがっている。俺がこうして捕まえているのも、怖いに違いない。
「ごめん、アールカ!」
俺はビームをよけながら謝罪した。
「きっときみのことをつけ狙う人たちはいっぱいいて、俺も頼りなくて、すごく怖い思いをしていると思う!」
俺は駆けながら、アールカを安心させるために言った。
「俺と一緒に行くのが、アールカは怖くなっていると思う!」
俺に当たらないようラズリ―ズさんの鱗の盾が防御してくれる。それでも矢継ぎ早に、そこらじゅうに放たれる雨のような無差別攻撃の防御に奔走させられている。
「でも、辺境伯領ならきみの存在を受け入れてくれるし、やさしくしてくれる人がいっぱいいる。変な人はいっぱいいるけど……でも悪い人たちじゃない。悪い人が来ても、みんなが守ってくれる」
辺境伯領の領民の皆さんを思い出しながら、俺は続けた。
「俺も騎士団を追い出されて移り住んだ流れものだったけど、みんな嫌な顔一つせずに受け入れてくれた」
俺はチャクロに向けて《炎の杭》を放つも、一部はビームにかき消され、一部は振るわれた尻尾にかき消される。
「だから、逃げるなら、一人で逃げるんじゃなくて、俺と一緒に辺境伯領フーリァンへ逃げよう! みんなアールカのことを受け入れてくれるし、きっと楽しいことがいっぱいある。楽しいことをするには、楽しそうな方向に自分から行かないといけないんだ! きみの意志で自分で動かないといけないんだ!」
そして俺の場合それを導いてくれたのが、メリアとクリムレット卿だった。
「でなきゃ、ずっと怖い思いのままだ。だから、俺と一緒に行ってほしい!」
「…………」
ラズリ―ズさんの盾に守られながら、ぬいぐるみとリンゴと鉱石が分解されていく。やがて、アールカは人間の姿に戻っていた。
「アールカ!」
「私のこと、ちゃんと見ててくれる?」
アールカは俺の目を見上げながら不安そうに聞いた。俺はうなずく。
「ああ、まあ右目は見えないけど、注意はするから、もうさっきみたいに目を離したりはしないよ」
「右目……」
アールカは俺の右目に触れた。
「目……《再構築》した。これで私のこと、ちゃんと見える?」
アールカが言った。視界が開けて、たしかに見える範囲が広がっている。
「いや、見えるけど、これ、なんだ!?」
右目は見えるようになったが、異変があった。
集中すると、チャクロの鎧やラズリーズさんの杖や魔法が、ぼんやりと光って見える。
ビームを放つ前に魔力が尻尾の先に集中するところも、放たれたビームも、ほんのりと光っている。集中しなければ、ほとんど見えない。これは、魔力が視覚化されているのだろうか?
「なんか、違った?」
首をかしげているアールカの背中に、六対の光の羽のようなものが見えている。
ラズリーズさんの言い方だと、《創造と再構築》の力は彼女の知識の範囲でのみ行使される。ということは……アールカは、こんなふうに世界が見えているのか。
「いや、ありがとう。でも、こういう力はもう使わない方がいいかもしれないね」
世界が、人間というものが急激に変わっていってしまう危うさを秘めている。これはそんな力だ。
「アールカ! いったんこっちにおいで!」
ラズリーズさんがこちらに向かって叫んでいる。
「ラズリーズさんのところまでいける?」
「……うん」
アールカが、盾に守られながらラズリーズさんのもとへと到着する。
「さて」
チャクロの攻撃は隙がない。遠距離からビームが放たれ、懐に入れば尻尾でなぎ払われる。
だが、こちとら何度も空から落ちた身である。両手が空いた今、空中戦は望むところだ。
俺は強化された体で跳躍して飛び上がった。
「だめェ!」
ビームが放たれるも、《ブレス》の突風を吹かせて回避する。魔力が見えるようになったことで、攻撃の流れや前兆が可視化された。よけるのは容易だ。たぶん魔法なら、すべて発動の瞬間を見据えることができるだろう。
「これなら、やれる!」
チャクロから離れながら、チャクロの上空を取る。
下方へ放つビームは、方向を変えることで上にも放つことができるだろうが、反動で飛ぶという芸当ができなくなる。上を取った方が、圧倒的に有利だ。
「だがァ!」
接近すると尻尾のなぎ払いが来る。だが――
「これを待っていたんだよ!」
俺は《炎の杭》を召喚し、両手のこぶしに纏わせる。《炎の杭》を取り付けたこぶしで、尻尾に左のカウンターを合わせた。
「なァッ!?」
こぶしの衝撃とともに鎧の尻尾を貫いた《炎の杭》が燃焼し、内部から破壊する。
「私の『強化鎧装』が破壊ィ!? どういうわけ!?」
「『こういうわけ』だ!」
俺は残った右拳とそこに取り付けた《炎の杭》で、チャクロの腹部を殴打し、貫いた。
チャクロは地面に激突して倒れる。
「死んでもいないな……」
遅れて着地した俺は息をついて、治癒ポーションを取り出した。死にかけのチャクロの手足を縛ってから、ポーションを無理矢理飲ませて傷を治す。
チャクロは未だに気を失っている。
それにしても……俺は周りを見渡した。ざわざわとやじ馬が見物に来ていたが、建物はすべて無事だった。
「すごいですね、その魔法。町がぜんぜん壊れてない」
鱗の盾は、小さな攻撃なら単体で防ぎ、大きな攻撃は寄り集まって大きな盾となって防ぐ。数が多く網羅的になんでも守る。鉄壁だった。
「あんたの方もね。しかしなんだいそのポーションの治癒力は。何か違法な薬草を使っているんじゃないのかい?」
「よく言われますが使ってないです」
俺は苦笑した。
「あとは城塞伯軍の人たちに任せてもいいですか?」
「ああ。お手柄だったね」
ラズリーズさんはうなずいた。
「アールカ、大丈夫だった?」
「うん!」
俺が聞くと、アールカはタックルするように俺に抱きついた。怪我などはないようだ。
「ラズリーズさん」
「どうしたんだい?」
「もう少しの間だけ、アールカを頼みます」
「うむ?」
俺はラズリーズさんとアールカに背を向け、一人歩き出した。
「まだ終わっていない――そういうわけです」
「口調移っとるよ」
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