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第15羽
しおりを挟む昨日、空からの連絡はなかった。 ということは、今日は “大丈夫” 、な筈……。
昨日、海来留に恐ろしい煽りを受けたからね、何度も今返事待ちだと言って宥めたけれど……。
結局寝かせる時、この時間まで断りがなければ大丈夫だろうと思って、「明日、空大丈夫だって」と言ってしまった。 海来留、大喜びしていたな……。
大体あいつもあいつだ、大丈夫なら返事ぐらい………解ってる、あたしだ。 あたしが “無理ならメッセージ送って” 、そう言ったから……。
―――でも……! 普通なんかあるんじゃないの?! マルかバツぐらいスタンプでもなんでも送れるでしょう普通っ?!
……普通に、誘ってないからか。
にしても、段々苛々してきたな、あいつめっ……。
「――っ!?」
な、なに? なんで……?
あたしが空の席に視線を向けた時、空はもうあたしを見ていた。 そして、
「なっ……!」
―――わ、笑うなっ! な、なんなんだあいつは……!
あたしはすぐに顔を背けて、空から逃げた。……嫌いなんだよ、あの笑顔。 なんか、嫌いなんだ………。
と、とにかく、大丈夫そうだな。 ちゃんと伝わっているみたいだし。
◆
今日この後会うことになるっていうのに、空とは一言も話していない。 いつも通りと言えばそうだけど、普通の友達なら不自然なんだろうね。
そんなことを考えながら廊下を歩いていると、前からこの前公園にいたつんつん頭が歩いて来た。 こいつも同じ学校だったのか、空の話し方から同級生だとは思っていたけれど。
妹と遊んでくれたのは感謝しているけれど、別に話しかける間柄じゃないし、このまますれ違おうと思っていると、
「なぁ、みくるのねーちゃん」
「……なに?」
まさか、向こうから話しかけてくるとは思わなかった。……なんの用だろ、こいつも今日空が呼んでいるのかな?
「んー………やっぱなぁ」
な、なんなのこいつ。 ぼーっとした顔して人をジロジロと……。
「似てんだよな、あんた」
「は?」
なに言ってんの? 変なやつだな、あたしが誰に似てるって……
「空のかーちゃんに」
「え……」
「性格、全然似てねーけど」
最後にそう零して、つんつん頭はすれ違って行った。
あたしが、空の “お母さん” に似てる? そんな訳………。
バカバカしい、空のあの顔のどこがあたしに―――ち、父親似……なのかな……あたしと同じで……。
だ、だとしたらどんな偏った遺伝子の取り込み方してんのよあいつは……! あたしみたいな目つきの悪い母親からあんなかわ―――も、もういい……言ってて辛くなってきた。 見たこともない空のお母さんを目つき悪いなんて言うのも悪いし……。
そもそもあたしが空のお母さんに似ているとしても、別になんの関係もないし。
………と、言いつつも、つい教室に戻ったあたしは空の顔を見てしまう。
……やっぱり、あたしとは似ても似つかない。 いくら父親似でも、少しは母親の要素がある筈だし、あのつんつん頭の勘違いだろう。 あいつ、ちょっとズレてそうだしね。
とにかく今日は早く帰って、海来留の所に行かなくちゃ。 こんなこと考えてる場合じゃない。
◆
次々とやって来る新しいライバル?達に負ける訳にはいかない……私も頑張らないと新風達に吹き飛ばされて置いてけぼりにされちゃう……っ!
前回の放課後は海来留ちゃんに取られちゃったけど、今日こそは……。
「空くん、今日はまっすぐ帰るの?」
「ううん、今日は常盤くんに図書室で勉強しようって言われてて」
―――新しい風が………。
す、既に本日も予約済み、ですか……。 常盤くんめ……ライバルが女の子とは限らないのね……。
「そっか……」
私ががっくりと項垂れていると、
「もう行ける? 灰垣くん」
うぅ……たいして会話も出来ずに、早速お迎えが……。
「うん。 あ、そうだ。 良かったら真尋ちゃんも一緒に行かない?」
「えっ……いいの?」
「別にいいよね、常盤くん」
「う、うん、もちろん。 水崎さんが良ければ」
そ、空くん……そんな、思いもしなかったお慈悲を……。
「ありがとう空くん、常盤くんも」
「そんな、お礼を言われるようなことじゃないよ。 真尋ちゃんと一緒だと楽しいしね」
はぁっ―――んぅ………。
ダメ……今、一瞬意識が飛びかけた……。
「うん、水崎さんは周りを明るくするもんね」
「そ、そんなことないよ……」
常盤くん……君はいい人だね。
今日はいい日だ、いい日になった!
「ふぅん、楽しそうだね」
「――っ!」
か、加藤さん、いつの間に………。
「愛里も行きたいなぁ」
―――突風が………!
ダメだよ空くん……台風だよ、ハリケーンだよ、パーフェクトストームだよっ! 私、吹き飛ばされちゃう……。
―――お願い、断って……!
「うん、みんなで行こうか」
「あはっ、空くんやっさしーい」
ですよね。 知ってました。
空くんが加藤さんだけ断るなんて意地悪するわけないもん。
結局、私達は四人で図書室に向かうことになった。 ……加藤さんなんて一緒にいたら、私は霞みに霞んで、最後は消えちゃうんじゃないかな……。
図書室に向かう途中、早くも加藤さん効果による影響が出始める。
廊下はもちろん他の生徒も通ります。 横並びに四人も歩くのはとっても迷惑。 つまり、今の状況を説明しますと、前に空くんと加藤さん、そして、後ろに私と常盤くんが歩いてます。
……なんで……。
―――なんでこうなるのっ?!
いえ、わかってます、わかってますとも……。
これが現実ですよね。 加藤さんみたいな可愛い女の子と私じゃ、隣を歩いて欲しいのはどっちなんて聞くまでもないもん。
空くんだって、そう思ってるよね。
はぁ……ごめんね常盤くん、常盤くんだって加藤さんがよかったよね。
哀れむように常盤くんを見ると、彼と目が合った。 ……常盤くんが私を見上げる形になりますが……これも、ゴメンね……。
「はは、ごめんね水崎さん」
「え、なにが?」
「水崎さんも、灰垣くんと歩きたかったよね」
「そ、そんなことは……」
常盤くん……君のその気持ち、痛い程わかるよ。
「優しいね、水崎さんは」
「本当だよ、別に私は……」
「俺は水崎さんみたいな可愛いコと歩けて嬉しいけどね」
―――常盤くん……。 落ち込んで歩いてる私に気付いて、励ましてくれているんだね……。
「はは、常盤くんも優しいね」
「お、俺のはそんなんじゃないよ……」
いやいや、わかってるよ。
お互い頑張ろうね。
よしっ、元気が出てきたぞ。
負けないぞ、加藤さん。
特に武器も勝算ないけれど、簡単に諦められる程やわな “好き” じゃないの。
こっちは毎日席替えのないクラスをどう作るか考えてる程バカなんだからねっ!
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